愛妻家ボナールの描く「浴女」シリーズは画家の人生を知ると180°違う絵にみえてくる!

印象派

こんばんは!ナビゲーターのビー玉です。

今宵は、【大人の美術館】へようこそ・・・

本日は執拗に妻の入浴シーンを描き続けた画家ピエール・ボナールの人生をのぞいてみましょう。

ボナールは好きな画家ではあるんですが、代表作である横たわる浴女シリーズを描き続けた真意が分からず、ながらくどうやったら寄り添えるかを考えつづけている画家でもあるんです。

よかったら私と一緒に考えてもらえると嬉しいです。

想像することは絵画を鑑賞する楽しみのひとつでもありますから・・

最後までお付き合いいただけたら幸いです

 

ピエール・ボナールとは

ボナールは1867年、パリ近郊のフォントネオ=ローズにて、国家公務員を務める父を持つ典型的なブルジョワ階級の家庭の次男として生まれました。

成績優秀だったボナールは法律を学ぶ傍、国立の美術大学の夜間部にも通います。

その美術学校でまず最初の運命の出会いをします。

モーリス・ドニ、ポール・ランソン、ポール・セリュジエら、のちに「ナビ派」を結成する画家仲間たちです。

ナビ派とは、「預言者」という意味です。未来を予測する者という意味ではなく、から啓示を受けて、人々を導く者という意味です。

カーナビなどの「ナビゲーションシステム」のナビゲーションの語源はへブライ語の「ナビィ(預言者)」なんですよ♪

ちなみにナビ派の「」とされたのはポール・ゴーガンです。

ナビ派はポール・ゴーガンと日本美術に強い影響を強く受け、いかにリアルに写実的なものを描けるかというよりも、より装飾的な絵画表現を好み19世紀と20世紀の芸術の橋渡し的な役割を果たしたと言われています。

ボナールは国家公務員の試験に失敗しますが、ボスターの公募展で優勝し、いきなり売れっ子グラフィックデザイナーとして活躍します!以降、絵画の仕事でお金に困ることがなかったというんですから、画家として稀な存在です。

デビュー作にして話題となったフランス=シャンパー二社のポスター!

シャンパンの泡が葛飾北斎の波の表現を参考にしたと言われており、女性の体も平面的で、柔らかくゆがみ日本の浮世絵の影響を強くうけているのがわかります。当時の人々の目にはさぞ鮮烈に写ったんしょうね。

ボナール描くポスターかっこいいですよね!ものすごくセンスがいい♪

ロートレックのポスターに、どことなく似てるなって思います?

いいえ、ロートレックが似てるんです。ボナールのポスターはロートレックにも大きな影響をあたえ、ロートレックに印刷の仕事を紹介したのもボナールです。

運命のミューズ「マルト」との出会い

そして、ボナール26歳の時に2つ目の運命の出会いを果たします!

自称16歳のマルト・ド・メリニーと名乗る少女との出会いです。

実際はマルトは16歳ではなく24歳で、名前もマルト・ド・メリニーではなくマリア・ブールサンだとボナールが知るのは二人が正式に結婚する32年後です!

32年間8歳もサバを読んでもバレずにいたマルトはある意味すごいですけどね(; ・`д・´)

 

館長
館長

ミステリアスな女性ですね

ピエール・ボナール作「洗面室にて」1907年

ボナールにとって完璧なスタイル持つマルトは、出会った直後からボナール生涯のミューズとなり、マルトの死後もボナールが亡くなる直前まで、400点近くもの作品に描かれ続けました。

 

その多くは浴室でくつろぐマルト。

ピエール・ボナール作 「逆光の裸婦(オー・デ・コロン)」 1908年

マルトは精神的に不安定なところがあり、人付き合いを嫌い、病気(肺の病気とも皮膚の病気ともいわれる)もあってか、1日の大半を浴室にこもっているような女性でした。

そんな彼女を尊重してボナールは人目をさけるように田舎に居を構え、当時は高価だった浴槽をマルトの為に購入し、その浴槽に身を沈めるマルトを描き続け、マルトだけを見つめ、マルトやその日常だけを描いて静かに生涯をとじました。

一生妻を愛し続け、絵に描き続けた画家・・・

マルトをモデルに描いた横たわる浴女シーリーズはボナールの代表作となり、後世に名を残します。

妻を愛し続け、生涯描き続けた画家「愛妻家ボナール」

ボナールについてそんなイメージを持ってる方も多いと思うんですが、実は少し違います。

マルト以外の女性

マルト中心の狭い世界で生きていたのは間違いないですが、実はマルト以外にも恋人は何人かいたようです。

その中でも特に、ボナールに影響を与えたのが、マルトの友人であり、親子ほど歳の離れたルネー・モンシャンティです。

ピエール・ボナール作 「青いジレを着たブロンドの女」 1922年

ボナールが年若いルネーと懇意にしていた頃、ボナールは50代になっており、マルトと出会ってすでに30年以上がたっていました。

ボナールとルネーの関係は何年も続き、一緒にローマに旅行するような仲ではありましが、結局のところボナールは若いルネーではなく、長年連れ添ったマルトを選び、正式に結婚します。

そして、その結婚の1ヶ月後にルネーは浴室で自殺してしまうんです!

浴槽で亡くなっているルネーを最初に見つけたのはボナールだと言われています。

そして、その2年後 “マルト” をモデルに横たわる浴女シリーズを描き始めるのです。

横たわる浴女シリーズ

『浴室の裸婦と子犬』1941-1946年

 

『浴室の裸体』1925年

『洋室の裸婦』1936年

浴女の顔はハッキリ描かれていません。

どうでしょう・・・ここに描かれているのは本当にマルトなんでしょうか?

愛する妻を描いたとされる美しい日常のひと場面だと思っていたものが、なにやら恐ろしく感じませんか?

もし、ルネーを描いたものだとしたら、なぜこんなに光溢れる姿で描いたんだろう・・鎮魂?

妻を描いたものだとしても謎です。亡くなった恋人を彷彿とさせるであろう、浴槽に横たわる姿でマルトを描いたのは何故なんだろう?

病的なほど浴槽に浸かるマルトに美を見出したように、浴槽で亡くなっているルネーを見たときにも美を見出してしまったのかもしれません。

John_Everett_Millais_Ophelia

 

ジョン・エヴァレット・ミレー作「オフィーリア」1852年

死出の旅へ向かうミレーのオフィーリアに通じるものがある気がします。

ながらく考え続けてますが、ボナールの真意が未だ分かりません。

ピエール・ボナール作「庭の若い女たち」

ボナールがずっと大切に所有していた絵です。この絵を見つけてマルトは激怒したそうですが、真ん中にはルネー、右端にはマルトらしき女性が描かれています。ルネーを描きつつ、心の片隅にはいつもマルトがいたんです。

本当に愛していたのはマルトだと思います。それはもう膨大な数のマルトを・・ペットと妻の日常をそれはもう愛情込めて描いてますから・・・

ただ、愛妻家だと言われている画家には、死をもって強烈な印象を植えつけた女性も実はいたということでです。

ルネーが浴槽で亡くなったのは、自分を裏切ったボナールに命をかけた呪いをかけたのかもしれません。

浴槽のマルトを描く時には必ず自分を思い出すように・・

 

本日は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

「大人の美術館」は動画でもお楽しみにいただけます

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当「大人の美術館」は毎週土曜日か日曜日の深夜に開館するweb上の仮想美術館です。

また来週、ご来館をお待ちしておりますm(_ _)m

コメント

  1. いや~・・・画家の数だけ本気で描く対象があるってのがよくわかります(*´ω`*)
    たいがいの女性は嫌がるシチュエーションやと思うんですが、奥さんは何か通づるものがあったんでしょうな~(*´ω`*)

    まぁ・・・アレっすよ、動物好きな人に悪いやつはいない(`・ω・´)

    • ビー玉 より:

      えたさん、コメントありがとうです♪
      返信が遅くなりすいませんっっ!!
      私だったら、絶対にいやですが、芸術家と一緒にいようとおもうと、普通の感覚ではダメなんでしょうねぇ(; ・`д・´)
      まぁ・・・動物好きに悪い人はいないは真理です(((uдu*)ゥンゥン ただし責任もってお世話できる人に限りますが( ✧Д✧) カッ!!

  2. Nick Ollie より:

    浴槽の女性か全部ルネーに見えてにた。マルタを描きながらも、やっぱりルネーじゃないかと。でもマルタなのか?? 複雑。

    ロートレックが似てるんだ。ロートレックに、じゃなくて。いずれにせよ、こういうポスター大好きです。

    • ビー玉 より:

      Nickちゃん、コメントありがとうです♪
      返事が遅くなってすいません(>人<;)
      実はロートレックが影響を受けていたんです。今ではロートレックのほうがはるかに有名ですけどね(^▽^;)
      でもボナールが田舎に引きこもらなければどうなっていただろう?って思います。
      私にもルネーに見えます。たぶんルネーとマルトのダブルイメージなのかなぁ(´-ω-`)

  3. めるも より:

    気の多いフランス男そのもの。
    「・・いや彼女とのことは、彼女との間にある何かこう、ウンタラでカンタラdeladelade・・」
    ウザくて長い言い訳まで聞こえてきそうですわ。(実体験からくる考察でなくてよ。)

    • ビー玉 より:

      めるもさん、コメントありがとうです♪
      フランスの男性って気が多いんだ(^▽^;)
      スマートに女性を誘ってるイメージ・・・あ!気が多いってことだわwww
      実体験からくる考察ではない”φ(・ェ・o)~メモメモ

  4. 贖罪の想いもあったんだろうか? でも、贖罪のモデルにされたマルト(マルタ?)の想いは…。(-ω-;)ウーン     (-ω-;)ウーン

    • ビー玉 より:

      ましゅーさん、コメントありがとうです♪
      いろんな思いがつまっていそうで、ただ美しい絵ではないなという感じがします。すいませんマルトともマルタとも言われます混在しておりました。マルトに統一しました(>人<;)

  5. ヨウコの川歩き より:

    1日の大半を浴室にこもっているような女性でした…って凄い。そんな女性を愛し続けることが出来るなんて、やっぱり芸術家って分からない(@_@)
    愛人の死のエピソードが怖すぎますよね。ボナールはあの逆光の光溢れる色の世界が好きですが、そんな壮絶な背景があったなんて…ボナール展行けば良かったな(^0^;)

    • ビー玉 より:

      ヨウコさん、コメントありがとうです♪
      芸術家の利害と妻の利害が一致したんでしょうねぇ・・・ルネーが亡くなってからのボナールの絵は神々しいほどに美しくて・・・ちょっと怖いくらいでございます(´-ω-`)
      やっぱり画家は人生いろいろあったほうが良い絵がかけるんだなと(゚∇゚ ; )

  6. ash より:

    ロートレックに似てる❗と思いながら見てましたが、ボナールの方が先だったとは❗

    それにしても浴槽に横たわる女性、どちらだろう?
    見る人にわからないようにわざとぼかして描いているのかも‥。
    でもマルタはわかっていそう、自分じゃあないことを。
    それでも「妻」であることに変わりはなく穏やかな生活が守れるならば‥、と許してそう、勝手な私の解釈ですが‥

    • ビー玉 より:

      ashさん、コメントありがとうです♪
      ルネーが亡くなってから描かれた浴槽の絵は顔がぼかされているんです・・・おそらくマルトとルネーのダブルイメージなんだと思います。ボナールの絵は若い頃から売れていたので、やっぱり「妻」という安定には変えがたいものがあったのかもしれませんねぇ・・・そうなるとマルトもしなやかで強いっっ!!

  7. aiai より:

    で、結局・・・マルタとマルトは同一人物?(;´Д`)
    (変なところでつまづくなって?w)

    • ビー玉 より:

      aiaiちゃん、コメントありがとうです♪
      すいませ〜〜ん同一人物です(>人<;)
      どちらも間違いではないんだけど、混在しちゃってました〜〜〜〜〜(; ・`д・´)
      マルトに統一いたしましたっっ!!!

  8. Lunta より:

    初めまして。
    今までぽわんとしてあまり興味のなかったボナールですが、この記事のおかげでがぜん興味がわきました。
    ロートレックに先駆けるポスターが素敵。
    そして不思議な女性関係。
    ミステリアスで身勝手なマルトに魅入られながら、疲れちゃうと他の女性に癒しを求めていたんじゃないでしょうかね。
    そして癒しだけを求められる女性の方もたまったもんじゃないと。
    またお邪魔します。

    • ビー玉 より:

      Luntaさん、コメントありがとうございます!!
      返信が遅くなり申し訳ございませんっっ(>人<;)
      ボナールの絵は見た目は美しいだけの絵に見えなくもないですもんね!!興味のなかった絵を面白く思ってもらえるのは何よりも嬉しいことでございます♪ありがたいっっ!!
      なるほど!男性は完璧な女性を求める方がおおいですもんね・・・一人では足りない場合は二人三人と(((uдu*)ゥンゥン
      いつでも遊びにきてくださいっ!!自分の勉強のためにリクエストも受け付けております♪

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