罰か癒しか?謎多きボスの『快楽の園』にはいったい何か隠されているのか

ルネサンス・マニエリスム

こんばんは!大人の美術館、ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。

本日は西洋絵画史きっての奇才、卓越した想像力とオリジナリティ、ヒエロニムス・ボスの代表作『快楽の園』について掘り下げてみたいと思います。

いったいそこには何が描かれているのか?

専門家がこぞっとって研究しても、真実の姿はいまだわからないままの奇妙な絵。

誰がみても変態絵、ボスの『快楽の園』へナビゲートします。

よろしければ、最後までお付き合いくださいm(_ _)m

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ヒエロニムス・ボスってどんな人

Hieronymus-Bosch-self-portrait

ヒエロニムス・ボスとされる肖像画 1560年頃

Hieronymus Boschはドイツ語ではボシュ、オランダ語ではボスと発音され、日本ではボス、ボッシュなどと記載されます。ここではボスと統一します。

ボスは本名はヒエロニムス・ファン・アーケン。

ボスは通称で、絵のサインとして使われていたのが生まれ故郷の町ヘルトゲイボッシュに由来したBosch(ボス)だったんです。

ボスは1450年頃のネーデルランド(現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルク地域)で画家の息子として生まれ、裕福な家の年上の奥さんがいたという以外は、ほとんどなにもわかってはいません。

手紙や日記も残っておらず、地元の教会にごくごく簡単な記録が残っているだけです。

描いた絵も謎なら本人も謎多きい画家なんです。

奥さんの実家が裕福だったので、それほど教会などに媚びずに好きな絵を描いていたのかもしれません。

ボスの絵はどの派にも当てはめることができないくらい独創的なんですよ。

とにかく絵を見てもらいましょう。

謎だらけの『快楽の園』

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasuresヒエロニムス・ボス 三連祭壇画「快楽の園」(1490年 - 1510年頃)
マドリッド・プラド美術館所蔵

代表作の「快楽の園」です。
この画像ではわかりにくいですが、とにかく奇妙な絵です。

部分的にアップにしながら見ていきますね。

袋とじ的三連祭壇画

この絵は三連祭壇画と言いまして、3つのパネルがくっつけられていて、普段は左右のパネルが折り畳まれた状態で中の絵は見られません。

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-close

『快楽の園』の絵が綴じられた状態はこれ!

人間が生まれる前の天地創造の場面です。

三連祭壇画はほとんどは教会に飾られる祭壇画として描かれていて、アトラクション感覚で特別な日や時間にご開帳して信者たちに見せていたんだと思うんですよ。

場合によってはお金(お布施)の代償にしていた教会もあるでしょう。

 

Jan-van-Eyck-The-Haight-Altarpiece

ヤン・ファン・エイク『ヘイトの祭壇画』15世紀

普段隠されている絵を開くと、息を飲んでひれ伏したくなるような「観られてよかった」「ありがたい」と思える絵が現れてってのが一般的なんですが・・・

 

 

衝撃のご開帳!!!!!

 

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-part

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-part-2

(『快楽の園』 中央パネル一部)

 

ボスの『快楽の園』に関してはコレですから(^▽^;)

ふざけてるんじゃないんですよ。

220 cm × 389 cmとデカい絵なんです(`・ω・´)キリッ

この時代は大きな絵は、教会から依頼があって教会に飾るための本気の絵だと思ってOKです。

 

館長
館長

祭壇画というよりは怪しげな雑誌の袋とじ的な絵ですよね

ビー玉
ビー玉

まさにっ

 

とにかく意味がわからない!!

イカれた現代アートに見えますが、描かれたのは16世紀前半、今から500年以上前のルネサンス期のネーデルランド(現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルグ付近)。

今よりもずっと風紀に厳しかった時代。

幸せそうじゃない楽園

「人間の罪悪を描いた風刺」という隠れ蓑を与えられていたとしても、この絵の立ち位置って非常に特殊だったんではなかろうか?と初めて観た時から思っていました!「祭壇画にするにはエロ過ぎるんちゃう?」と・・・

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-right-panel『快楽の園』右パネル

西洋絵画の場合は左から右に時間軸が動きます。

右パネルはアダムの肋骨から生まれたイヴを神様が手を引いてアダムに引き合わす場面。

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-Paradise

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-Paradise-2

のちにイヴを誘惑して禁じられた知恵の実を食べさせる蛇も描かれています。

幸せなはずの場面なんだけど、どことなく不穏な感じがするのは、動物たちが異形で不気味だからかも。

 

性的比喩のオンパレード中央パネル

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-central-panel

問題は中央に描かれるのが現世と言われるパネルです。

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-this-world

現世???

15世紀のネーデルラントはみんなが裸でお尻に花を刺したり、お尻から苺を生やしていたりと怪しげなことをしていたのか?ってツッコミを入れたくなりますが、もちろんそんな訳はございません。

夢なのか現実なのかもわからない奇妙な現世。

専門家でも研究し続けても正解に辿り着けてない謎大き中央パネル。

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-left-panel

左パネルの楽園から追い出された人類が中央の現世で快楽の限りを尽くし、果ては右翼の地獄に落ちるっていう絵なんだというのが一般的な『快楽の園」に関する説明。

だけど・・だけど・・・

「どこをどう見たってド変態やんっ」

必要以上に性的な比喩に溢れてます。

Hieronymus Bosch-Garden-of-Pleasures-Central-panel-section-2

 

貝なんて古今東西で性的比喩ですよ!

その貝の中に男女と思わしき2人がくんずほぐれつ(;//́Д/̀/)

チェリーを頭に乗っかた女性もシュールだし、後ろには苺に凌辱される男性とか・・

Hieronymus Bosch-Garden-of-Pleasures-Central-panel-section-3

苺は女性の肉体の比喩だったり、いちじくは多産や受難の象徴

Hieronymus Bosch-Garden-of-Pleasures-Central-panel-section-4

これなんて池に入ってる女性の周りを角のある動物に跨った男性がグルグル回ってます。

 

館長
館長

ヤバすぎますよねっ

なぜか楽しげな地獄

 

この乱痴気騒ぎの現世を過ごした人が行く地獄がどこか楽しいそうというねw

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-left panel-part

通称「樹幹人間」の中では居酒屋が営業中です。

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-left panel-part-2

通称「地獄の王子」と呼ばれる堕天使ルシファーに飲み込まれた人間は噛み砕かれることもなく、消化されることもなく穴へ落とされていきます。

これ、ただのアトラクションですよねᐠ( ᐛ )ᐟᐠ( ᐖ )ᐟきゃー

後ろではお尻で笛を吹いてる大道芸みたいな人もいるし、左パネルの楽園よりもあきらかに楽しげです。

元祖ヌーディストのアダム派説

ドイツの美術史家ヴィルヘルム・フレンガーによると、これはキリスト教の異端のキリスト教の一派「アダム派」のための絵だったんだとか。

Adams-Faction

アダム派はアダムとイヴが追放される前の世界を体現するために裸で過ごし、聖書の「産めよ、地に満ちよ」を実践するためにミサでは性的儀式をしていたようです。

なんとなく『快楽の園』の説明にぴったりのような気がします。

でもまぁ、ボスはカトリック信者だったことと、ゴリゴリのカトリック国スペインの王様フェリペ2世のコレクションだったこともあり、否定する人も多い説です。

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人は何を思ってこの絵を観るのか?

フェリペ2世はボスの大ファンとして知られていて、ボス以外にも奇妙な絵をたくさんコレクションしていました。

このフェリペ2世の「変な絵コレクション」を保管していたのがエル・エスコリア教会。

El-Escorial-Church

(画像出典:エル・エスコリア教会wiki

王専属の司祭がこの教会のコレクションのことを、「けっして怪しいものではない、王に変な趣味はない」と力説した書物が残っています(「エル・エスコリアス修道院の創設」)。

こういのは、聞かれてもないのに力説するのは怪しいと相場が決まってます。

要するに大ぴらには公開できない絵画だった可能性が高いということです

異端を虐殺しまくったフェリペ2世が異端の絵をこっそり秘密の場所で眺めていたと思うと、闇が深くて興味が湧きます(ΦωΦ)フフフ…

この時代、お尻に関してはかなりデリケートでして、キリスト教では禁じられている同性愛を連想されると言われていました。

『快楽の園』にはお尻もたくさん描かれていますし、もしかしたらフェリペ2世には男色の趣味があったのかもしれませんね。

教会が眉をひそめるような趣味を持っている人は、この絵を見ると癒されたんじゃないかって思うんですよね。

自分は罪深いと思っている人ほど『快楽の園』に惹かれる気がします。

自分が行くかもしれないと密かに恐れている地獄がどことなく楽しげですもんね。

フェリペ2世も異端者を虐殺することに罪の意識を抱えていたのか、神が禁じていた愛に苦しんでいたのかはわかりませんが、

罪悪感を抱えならが1人密かにボスの絵を眺めていたんだと思うと、歴史上の人物も身近に感じます。

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結論、私は「快楽の園」が好きです!

絵画知識が多少あってもなくても、隠し切れないエロティシズムが漂う『快楽の園』

意味が分からずとも、見ているとなんとなく恥ずかしい気分になってきます。

好き嫌いが別れる絵ではありますね。

が!ワタクシ、人間性を疑われるのを覚悟して言うと・・・・この変態な絵がかなり好きなんです(*ノωノ)キャッ

特に右側の地獄が・・・見ればみるほど興味深くて・・・何時間でも観ていられます。

Hieronymus-Bosch-Garden-of-Pleasures-left panel-part-3

地獄の王子とか、よくみるとカワイイですもん( *゚д゚))

じつは、そんな風に思ってる人は私だけではく、世界に少なからずいらっしゃるようで、グッズもたくさん販売されています。

名古屋市美術館のオンラインショップがボス推しなんですよね

たしか名古屋市美術館のコレクションにボスはなかったと思うんですが、学芸員さんがお好きなのかな♪(お持ちでしたらすいません)

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画像出典:名古屋美術館 ミュージアムショップ

Nagoya-Art-Museum-Shop-2Nagoya-Art-Museum-Shop-3Nagoya-Art-Museum-Shop-4

 

興味がある方は覗いてみてはいかがでしょうか?

いいお値段しますけどね(^▽^;)

【参考にした本】

王室の大いなる遺産 ボッス、ティツィアーノ、ルーベンス (NHK プラド美術館)

本日は以上です。お読みいただき、ありがとうございます。

またのご来館をお待ちしております

コメント

  1. ヨウコの川歩き より:

    なんか、凄いですね。恐いものみたさかなぁ、でも、ここまで描ききる技術と情熱は素晴らしいわ(^0^;)

  2. ( ゚д゚)ウム ラりってたんやな、書く時。(笑)

  3. Nick Ollie より:

    いや~ん、この世界、嫌いじゃないかも。お尻の花も好き。

    ちょっと倒錯してるけど、なんか楽しそうなのよね。地獄が特に。

  4. marimo より:

    ほんと、以前だったら「何、この絵?」ってなっていたのに、興味津々な自分がいるのはビー玉さんの影響♪ あ、絵を鑑賞する力ってことですよ(笑)
    こんな地獄なら^^なんて。確かに落ちてるから間違いではないけど、ほんと楽しい☆

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