こんばんは!大人の美術館ナビゲーターのビー玉です。
本日は絵画に関する、ちょっとロマンチックなお話です。
処女が大好きで、美しい外見からは考えられないほど獰猛。
もともと聖書の誤訳から生まれた想像上の生き物
その名もユニコーン!!
そんなユニコーンのとびきり素敵なアートを紹介いたしましょう。
貴婦人と一角獣
ユニコーンを描いた(織り込んだ)タペストリーは、美しすぎるがゆえに絵画だけでなく、文学、音楽、あらゆる芸術に影響を与えました。
ちなみに「タペストリー」とは、壁掛けのことです。
しかも壁一面を覆うような大きさの織物なんですが、絨毯のように床に敷いたりしてはいけません。
絵画のように飾るものです。中世のお城で装飾以外にも防寒を兼ねて壁に飾られていたようです。
フランス・パリにある国立クリュニー中世美術館の至宝「貴婦人と一角獣」のタペストリーは、全部で6枚。
それぞれ「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」を表現しており、特に最後の「我が唯一の望み」は多くの謎を含んでおり人々を惹きつけます。
とりあえず順番に見ていきましょう。
どこま艶かしい『触覚』
「貴婦人と一角獣(触感)」15世紀
貴婦人が一角獣の角に触れていることから、「触覚」とされています。
この時代、結うのが当たり前だと言われていた女性の髪が結われていません(今の感覚でいうところのセミヌードです)。
一角獣の角は男性の・・・と、解釈されていたりもするので、ちょっと艶めかしい感じがしちゃいますけどね(*ノД`*)タハッ
犬や猿など、鳥類やウサギ以外の特定の動物には首輪が嵌められ、支配(抑制)されているように見えます。
女性の貞操に関する寓話が込められているのかもしれません。
裕福の象徴?『味覚』
「貴婦人と一角獣(味覚)」15世紀
「味覚」は6面の中で、最も大きな作品です。
鳥が貴婦人から食べ物を与えられていたり、猿が何かを食べるような仕草に見えることから、「味覚」とされています。
動物達は狩猟に関係する生き物が多く、とても興味深いです。
15世紀といえば、「狩り」という行為が「食べるための猟」から「上流階級の嗜み」へと移り変わっていった時代。
特にタペストリーの上部に描かれている鷹やハヤブサは、高貴な(つまり高価な)鳥とされていたため、ハヤブサや鷹を使った狩り=裕福な貴族を表していると解釈できます。
依頼主の富を象徴しているのかもしれません。
愛の象徴?『嗅覚』
「貴婦人と一角獣(嗅覚)」15世紀
貴婦人の猿が花の匂いを嗅いでいることから、「嗅覚」とされています。
貴婦人の編む輪の花は、カーネーション(なでしこ)。
中世北ヨーロッパでのカーネーションは、新婦が身に付けるもので、愛と結婚の象徴だったそうです。
この貴婦人は自分の、あるいは誰かの結婚式のために花冠を編んでいるのかもしれません。
『聴覚』
「貴婦人と一角獣(聴覚)」15世紀
ポルタティーフ(持ち運べるオルガン、オルガネットともいう)を弾く貴婦人。音楽に聴き入る動物達の様子から、「聴覚」とされています。
ちなみに、このポルタティーフ・・・どんな音を奏でると思いますか?動画を見つけたので、貼っておきますね。
中世の素朴な音に動物たちが耳を傾けていますね。
鏡を使った『視覚』
「貴婦人と一角獣(視覚)」15世紀
一角獣が鏡に映る自分を見て、うっとりとしています。
獅子はこちらを見つめ、他にも見つめ合う動物が多数描かれているので、「視覚」とされています。
これら「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」で5感を描いていると言われています。
では、なぜ五感だったのか?
貴婦人を讃えるための五感
今では考えられないんですが、中世ヨーロッパでは五感は人間以外の動物と共通した次元の低い感覚とされていたんです。
触れ合って気持ちが良い。
暴飲暴食。
香りに酔いしれる。
音楽を聴き惚ける。
見惚れる。
などといった行為は、人間として見っともない行為だったのです。
それを踏まえて五感のタペストリーを見てみると・・・
触られているのは一角獣
味じわっているのは鳥と猿
匂いを嗅いでいるのは猿
音を聞いているのは動物達
見ているのは動物達
貴婦人は五感に支配されていません。
諸説ありますが、個人的には貴婦人を讃えるための5枚のタペストリーなのではないかなって思っています。
「我が唯一の望み」は理想の女性像?
そして、最も美しく謎多き最後の1枚。
「貴婦人と一角獣(我が唯一の望み)」15世紀
こちらのタペストリーが、『貴婦人と一角獣』の中で最大の謎とされています。
解釈は諸説ありますが、私の感想としては 「五感のタペストリー」で身に着けていた装飾品を箱に封印する* ことで、五感からもたらされる快楽享楽を抑え込む強い意志を表しているのではないかと思っています。
*「宝石を箱に仕舞う」「宝石を箱から出す」どちらの説もあり
理性の勝利を象徴しているように感じます。
要するに、タペストリーを通して女性の理想像を表しているのかな?と。
おそらく、結婚の記念に夫となる男性から妻となる女性へ、貴婦人としての慎み的な寓意を込めてプレゼントされたものではないかと想像しちゃうんですけどねぇ。
「僕はこんな女性が好きだからヨロシクね」ってか?
現代の感覚だったら、ちょっとイラっとするかもですが、これだけ圧倒的に美しいモノを貰ったら、わかりました!!って、なるかもですね。
貴婦人と一角獣は究極の愛の表現だった
な〜んて、ロマンチックの欠片もない嫌味な想像をしてたんですけどね。
この「貴婦人と一角獣」に関する講習を聞きに行った時、ロマンチックとは程遠い一見むさくるしいタイプの男性講師がですね。
失礼ですよっっ
えっと、乙女とはほど遠い感じの男性講師の方がですねw
「一角獣はタペストリーの送り主である男性を意味しており、一角獣を手懐ける貴婦人の図というのは、自分が愛する女性の支配下にあるということを女性にアピールしている」
「つまり騎士が姫君に忠誠を誓っているかのような、愛のタペストリーなんです」
と、うっとりしながら話しているのを聞いて、女子力での負けを感じました。
テントの模様は炎とも水滴とも言われていましたが、最新の研究では「涙」と判明しているそうです。
中世での「涙」は、偽りのない気持ちを象徴するものだったので、これは恋愛ごとに疎い私でも、ロマンチックな解釈をするしかなくなりますねぇ・・・
「偽りのない愛で恋するあなたを守りたい」って感じでしょうか?
きゃ〜ロマンチック((ノд`*)っ))
見れば見るほど想像の世界に入り込んでいくような不思議な魅力に溢れた美しいタペストリー
あなたなりの美しい解釈を見つけてくださいねぇ♪
本日は以上です。お読みいただき、ありがとうございます。
またのご来館をお待ちしておりますm(_ _)m
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