こんばんは、ナビゲーターのビー玉です。
ギリシャ神話のオイディプス(エディプス)をご存知でしょうか?
スフィンクスの謎解きを見事に解き明かした人といえば知ってる方も多いでしょう。
見事に謎を解き明かす華々しいエピソードとは裏腹に、実は彼の人生はギリシャ神話の三大悲劇と呼ばれるほど悲惨極まりないんです。
それはもう、ドン引きレベル( ꒪⌓꒪)
あまりにも悲惨すぎて、美術だけなく文芸や演劇などオイディプスの影響を受けた作品が今な生まれ続けています。
本日はそんなオイディプスのどん底と言うか、自らどん底にさらに穴を掘るほうな人生にあなたをナビゲートします。
よろしければ最後までお付き合いください。
起(悲劇の始まり)
テーバイの王ライオスは「のちに自分の息子に殺されるから子供はつくらないように」という神からの神託を受けたにもかかわらず、酔っ払った勢いで妻と子を成してしまう。
生まれた子供はもちろん予言通りの男の子
神託を恐れたライオス王は生まれた子供を殺すように従者に命令します。
従者は生まれたばかりの子を不憫に思い殺しきれず、通りかかった羊飼いに「できるだけ遠くに連れ去ってほしい」と託し、羊飼いは子供ができずに困っていたコリントスの王に子供を渡します。
どんなコネがあったら羊飼いが国王に子供を斡旋できるのか
そういう “お約束” なんですよっ
テーバイからコリントスまでの日本でいうなら東京ー神奈川間くらい。
微妙に近いんだわ!!
もうちょっと遠くへ連れ去って欲しいところだけど、王の子供なんて好条件は他にはないですもんね、仕方ありません。
オイディプスと名付けられた子供はコリントスの王子として何不自由なく育てられて、頭の良い青年へと成長します。
だけど、「王の実の子ではない」という噂があとを立たず、オイディプスは真実を確かめるべくアポロンの神殿で神託を受けることにするんです。
そこで降った神託というが・・・
「お前は実の父を殺し、母と交わるだろう」
何それ怖い(((( ;゚д゚)))アワワワワってことで、父王を殺したくない一心のオイディプスは故郷を後にして放浪の旅にでるのでした。
承(動き出す運命)
自暴自棄となり故郷をあとにしたオイディプスは逃避行の途中、横柄な態度をとってきた老人を怒りにまかせて撲殺。
結論からいえば、これが実の父、ライオス王なんですけどね。
道を譲れと言ってきたライオス王に腹をたてて、その従者共々皆殺しにしちゃったんですよ。
今の感覚だととんだ乱暴者なんですが、多勢に1人で立ち向かい、倒してしまったというのは古代ギリシャ的には英雄譚になるっぽい(゚∇゚ ; )
そして、本当の故郷だとは知らずにテーバイに戻ってきてしまうオイディプスは、テーバイの人々が怪物スフィンクスに苦しめられていることを知ります。
スフィンクスは顔と胸部は女性、体はライオン、ワシの翼を持ち尻尾は蛇という異形の怪物。
通りかかる人々に謎かけをしては、解けない者の命を奪われ食べてしまうスフィンクスに国中が恐怖していたんです。
オイディプスはスフィンクス興味を持ち果敢にも挑みます!
スフィンクスから出題された謎は
「朝は4本足、昼は2本足、夜になると3本足になるものな〜んだ」
まぁめちゃくちゃ有名な話なので答えはご存知でしょう。
生まれたときは4つんばい、成長すると2本の足で立ち、老人になると杖が必要になる。
答えは「人間」です。
オイディプスは見事にこの謎を解き明かし、謎を解かれたスフィンクスは自ら命を断ちます。
この部分だけがなぜか有名ですよね。絵画でもよく登場します。
ドミニク・アングル『スフィンクスの謎を解くオイディプス』1808年 (ルーヴル美術館所蔵)
アングルのスフィンクスとオイディプスは緊張感がすごい!
オイディプスが答えた直後なんでしょう。
挑むように刺すようなオイディプスの視線と、ゆっくり目をそらすスフィンクスの表情から、どちらの負けが確定したかがわかります。
まぁ、通常はこのように敵対した2人のやりとりを緊張感を持って描くべき場面なんですよ(((uдu*)ゥンゥン
その “通常” を変えてしまったのがギュスターブ・モローです。
ギュスターヴ・モロー『オイディプスとスフィンクス』1864年(メトロポリタン美術館所蔵)
美しい女性をみんなファム・ファタール(魔性の女)に変えてしまう、こじらせ男のモローは怪物すら魔性の女に変換。
このスフィンクスの表情、敵対する者を見るというよりは、愛するものから裏切りを受けた時の女性の表情って感じ。
スフィンクスにとって「食べる」というのは究極の愛の行為だったのかもと思わせるスフィンクス。
ヤンデレというヤツですね
拒絶された者の絶望感をモローのスフィンクスからは感じます。
その後、このような謎めいたスフィンクスというのは量産されるわけですが、モローのスフィンクスがあったから、この場面だけがやたらと有名になったんじゃないかなと思ったりします。
なんだかんだで皆さん、魔性の女って好きですもんね。私も好きです(((uдu*)ゥンゥン
オイディプスは槍とともに勝利を象徴する月桂樹の葉をにぎりしめていますが!
じつは本当に意味でオイディプスはこの勝負に勝てていません。
近づくと相手を破滅まで陥れるファム・ファタール(スフィンクス)は、自ら命を絶つことで確実にオイディプスを手中に収めることになるんです。
オイディプスはスフィンクスを倒すことで、街の英雄としてテーバイの王に祭り上げられます。
長く行方不明になってる前王ライオスの妻イオカステと結婚することで名実ともにテーバイの王になったんです。
本当の父ライオスを殺し、実の母と交わるという御神託がここに実現してしまいました。
転(真実)
オイディプスとイオカステは真実を知ることなく、4人の子供をもうけ、優秀な王と王妃として国を統治していました。
しばらく平穏だったテーバイに疫病と飢饉が起こったために、再び神託を仰ぐオイディプス。
「原因は前王ライオスを殺した人物が国内に居座っているからだ」と告げられ犯人探しが始まります。
徐々に明らかになる真実。
薄々真実に気付きはじめ、真実をうやむやにしようとするイオカステに対して、頑なに真実を追求しようとするオイディプス。
演劇などでは手に汗握るシーンです。
個人的には野村萬斎さんと麻美れいさんのオイディプス王が一番好きです。
結(悲劇)
ヘンリー・ピューズリ『オイディプスの死』1783-84年 (リバプール国立美術館 )
結果、オイディプスは父を殺し母と交わったとこが白日の下に晒されることとなり、イオカステは絶望し寝室で首をくくって自死。
寝室ってのが意味深ですよね。2人の罪の場所ですからね!
変わり果てた妻を見つけたオイディプスは妻のブローチの針で自らの目を刺し盲目となるんです。
「もう真実はみたくない」ということなんでしょう。
何もかも遅すぎます。
オイディプスは息子から国外追放を言い渡され、娘2人を連れて放浪の末に救われることなく死を迎える。
オイディプスはこんな救いようのないお話。
オイディプスの物語は起承転結を持った最初の物語とも言われています。
ハイライトだと思われたスフィンクスとのやりとりが起承転結の前半『承』にしかすぎないというね。
人生最後まで何があるかわかりません。
こういう悲劇的な神託って信じて行動しなければ成就しないのにね。
信じるものは全く救われてなーい(;´д`)トホホ…
なんだかんだで見どころは、やっぱりスフィンクス
異性の親に恋心を抱き、同性の親に嫉妬の気持ちを向けてしまうことを心理学用語でエディプス(オイディプス)症候群といいますが、もちろんオイディプスの神話が由来です。
話題の『新世紀エヴァンゲリオン』もこのエディプス症候群が大きなテーマとなっており、オイディプスのお話は古代から現代まで幅広く影響を与えています。
フェルナン・クノップフ『愛撫(スフィンクス)』1896年 ベルギー王立美術館
クノップフの描くスフィンクスは「=母」という解釈ができて面白い。
オイディプスにとっては母こそが真のファム・ファムファタール。
「朝はは4本足、昼は2本足、夜になると3本足になるものな〜んだ」
このスフィンクスの問いかけの本当の答えは、晩年に娘と3人で彷徨うことになるオイディプスを予言していたのかもしれません。
ギュスターヴ・モロー『スフィンクス』1876年 メトロポリタン美術館
勝負に勝っても負けても相手を破滅させるファム・ファタール(スフィンクス)。
自分だけは彼女たちを御することができると思っていても気がつけば・・・。
いやぁ怖いけど色っぽい(*´д`*)アハァ
【参考にした本】
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▼ブログとは関係ないけど、大好きな本▼
本日は以上です。お読みいただき、ありがとうございます。
またの来館をお待ちしております。
コメント
オイディプスは何も悪いことしてないのに、予言通りの運命を辿ってしまう。そこが一番の悲劇だなぁ。
((゚д゚; 三 ;゚Д゚))ヒィィィン 悲劇。 でも、魔性って良い響きだよね。