ラファエル前派の女性たち!画家とモデルの愛憎劇が名画を産んだ!

ラファエロ前派

こんばんは!ナビゲーターのビー玉です。

大阪「あべのハルカス美術館」で開催中のラファエル前派の軌跡展。

すごく楽しい展覧会なので、お近くの方はぜひ来展していただきたいのですが・・人間関係が頭に入っていないと華麗なだけな絵になっちゃうので、もう一度おさらいしておこうと思います。

ラファエル前派はドロドロの人間関係、濃厚なモデルと画家の物語を頭に入れておくとより楽しめます。

では、そんな昼ドラめいたラファエル前派の世界へあなたをナビゲートします。

よろしければ、最後までお付き合いください。

ラファエル前派とは

ラファエルってなに?って感じですよね?

絵画好きな方なら「あの聖母の絵で有名なラファエロ」と字面が似てるけど・・

って思うかもしれません。

はい!そのラファエロです。

ラファエロが活躍したイタリアではRaffaelloと綴り、発音はラファエッロ、日本ではラファエロと記載されることが多いです。

Raffaelloの英語の綴りはRaphaelで日本語だとエファエルという発音に近いのです。

なので、イギリスで発生したラファエル前派の「ラファエル」は、ルネサンスの巨匠ラファエロのことなんです。

ただ・・ラファエロとラファエル前派では活躍した時代は随分違います。

ラファエロが活躍したのは15〜16世紀のイタリア、

ラファエル前派が活躍したのは19世紀のイギリスです。

300年以上の時を経てはいますが、ルネサンスの巨匠ラファエロの影響ははかり知れず、当時のイギリス画壇はぐるっと回ってラファエロ回帰、「ラファエロ」を模範として、ラファエロ風以外の表現を認めないという固執したものになっていたんです。

ラファエロの影響恐るべし∑( ̄□ ̄;)!!

そんな状況に自己顕示欲の強い画家の卵たちが反発して結成されたのがラファエル前派です。

正式名称は「ラファエル前派兄弟団」

・・・・少年探偵団ですか(; ̄Д ̄)?って感じの奇妙な名前ですよねw

日本誤訳のセンスを疑うわ・・って思うんですが、本土イギリスでも「珍妙な名前」と思われていたみたいです。

最大の理解者であり支援者でもあった美術評論家のラスキンも「いささか滑稽な名前」と控えめにデスってます(゚∇゚ ; )

ラファエル前派の中心人物の、自画像と写真を並べてみました!

雑誌アート

ジョン・エヴァレット・ミレー(1829〜1896年)

11歳の時にロイアル・アカデミー(国立美術学校)に入学を許された天才。とんでもなく絵が上手い人です。とにかく精密で正確!

のちのちラファエル前派を裏切り、アカデミーの正会員になります。

ウィリアム・ホルマン・ハント(1827〜1896年)

お髭のない若い頃の写真を見つけられなかったんですが・・

17歳のころの自画像

お髭の写真もなかなかの男前ですし、17歳のこのかわいらしい自画像があながち盛りすぎってこともないのではないかと思います(((uдu*)ゥンゥン

自然に忠実(写実)であれという「ラファエル前派」の理念を最後まで貫いたのは、このハントだけです。

 

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ

Dante-Gabriel-Rossetti

悪意のある写真載っけちゃいました(^▽^;)

若い頃の写真は見つけられなかったんですが、写実主義のハントが描いたポートレートが残っています。

目がクリっと可愛らしくはありますが、何かしらの闇を抱えてる感じはしますね。

自画像は盛りすぎだよという気持ちは押さえ切れません(^▽^;)

「自然に忠実(写実)」にというグループの理念はロセッティの自画像を見ると、すでに怪しいwww

絵は少々下手くそでしたが、幻想的な画風でカリスマ的な人気のある画家でした。

この個性が全くちがう3人が中心となって「ラファエロって形式的で大袈裟じゃない?」ってことで、始めたのがラファエル前派です。

ラファエロ作 「キリストの変容」

ちなみにラファエロが形式的なわけではなくて、後に続くイギリスの美術界がラファエロの影響を受けすぎて、テンプレート化してしまったというだけです。ラファエロはなにも悪くありません(^▽^;)

もちろん “ミスター大袈裟” のルーベンスの絵なども完全にバカにしてました(^▽^;)

 

 

若者たちの挑戦

そんな彼らはアカデミーにタチの悪い挑戦を仕掛けます。

ミレイ作「イザベラ」1848-1949年

ミレイとハントは反発しているはずのアカデミーに、ロセッティは絵があまり上手くなかったので別の展覧会にそれぞれ作品を出品します。

ミレイの「イザベラ」は初出品、初入賞の事実上のデビュー作です!

だけど、ちょっと違和感がありませんか?

実はミレイはわざと下手に描いたいのです。

ラファエロ以前に絵を真似て中世の絵のように少し古臭くなるように描きました。

ミレイ作「マリアナ」1851年

本来のミレイの絵はこれですからね(; ・`д・´)

「イザベラ」はアカデミーの推奨するラファエロよりも以前の形式化する前の美術に立ち戻ろうという意思表示でした。

そして、彼らの作品にはラファエル前派兄弟団(Pre-Raphaelite Brotherhood)の頭文字をとったPRBという暗号を忍ばせていたんです!

どこかわかりますでしょうか?

向かって右下の椅子の足です。

館長
館長

反逆の狼煙ですね!

実は、美術史において、主流(アカデミー)の流れを変えようと革命を仕掛けたのはラファエル前派が最初だったのですが、のちに現れるフランスの印象派のようにアカデミーと明確な対立関係ではなく、活動が秘密裏だったために、若者の悪ふざけとしか思われず、非難をうけて作品も酷評されるようになっちゃうんですよねぇ(^▽^;)

カトリック的

ロセッティ作 「見よ、我は主のはしためなり(受胎告知)」1849〜1850年

のちに「受胎告知」というタイトルに変更されましたが、当初のタイトルは「見よ、我は主のはしためなり(Ecce Ancilla Domini)」という古臭い言い回しで・・・明らかにカトリック的

宗教にリベラルである日本だとピンときませんが・・・

プロテスタント を国教としていたイギリスでは、この若者たちは国家転覆を狙っているのは?って感じで政治犯にされかれないほどの大ごとに発展!

カトリックとプロテスタントは、それぞれキリスト教の宗派のひとつです。

そんな世論にビビってロセッティは引きこもり(^▽^;)

ミレイ とハントは作品を発表するも批判の嵐で、ワラをも掴む気持ちで資産家で美術評論家のラスキンを頼ります。

ラスキンは彼らの作品に才能を感じて擁護・・・

ラスキンの擁護もあり、世論の批判も徐々に鎮静化し始めるのですが・・

ラファエロ前派はわずか数年で解散します。

原因はこちら!

雑誌アート

こじれにこじれた人間関係

複雑な人間関係!!女性たちは誰かの妻であったり恋人なのですが、仲間内で絵のモデルを務めるうちにややこしいことになっていったんです(^▽^;)

まぁ・・決定的なのは擁護してくれていた支援者のラスキンの嫁を寝とったミレイですけどね(゚∇゚ ;

あとは・・ロセッティの節操のなさです(^▽^;)

ミレイとラスキンの妻についてはこちらの記事をご参照ください。

 

あべのハルカス美術館「ラファエル前派の軌跡展」レビュー&感想
2019年10月5日から12月15日まで、大阪阿倍野のあべのハルカス美術館で開催されている「ラファエル前派の軌跡展」へ行ってきました!美術展のレビューはもちろん、謎に包まれた「リアル謎解きゲーム」とは?格安チケット入手方法や穴場の駐車場情報まで、「ラファエル前派の軌跡展」をくまなくナビゲートします!

 

ジェットコースターのようなミレイの人生

ラファエル前派の中で最も絵がうまかったミレイの代表作はなんと言っても幻想的で美しい狂気をはらんだ「オフィーリア」でしょう!

John_Everett_Millais_Ophelia

ミレイ『オフィーリア』1851ー1852年

悪批評まみれだたラファエロ前派の評判を一転させたのが、このオフィーリアです。

この絵を目にしたことがあるとういう方は多いのではないでしょうか?

完璧な構図。緻密すぎる描写。生死を彷徨うオフィーリアの美しさが神がかっています!

植物は6か月もかけて写生し描き上げたといわれており、リアルさを追求するあまり、モデルを長時間風呂に浮かべながら描きました。

この過酷な状況にモデルが肺炎になりかけたというのは有名な話。

オフィーリアのモデルは通称リジー。
ひたすら冷たい水に耐え続けた従順すぎる性格でロセッティの婚約者です。

この作品の圧倒的な美しさを前にアカデミーも民衆も評価せざるを得なかったんでしょうね。

これを期にラファエロ前派の快進撃が始まるかと思われた時に、ラスキンの妻エフィとミレイの道ならぬ恋が世間に知られることとなり、再び大炎上!

ミレイ作 「エフィー・グレイの肖像」(1853年)

エフィとラスキンは泥沼裁判のはて離婚。

そして略奪愛を成就させて、8人の子どもに恵まれますが、世間の風当たりは強い・・

そんな逆風の中、子どもや妻を養わないといけません。

そうなるとお金にならないような好きな絵を時間をかけて描くわけにはいかなくなり、お金のためのに民衆に受け入れれるような絵を徹底して描くようになります。

それはラファエル前派の理念とはかけ離れており、ミレイとラファエル前派は懐を分かちます!

【結成当初の理念】
1、表現すべき本物のアイディアをもつこと
2、このアイディアの表現の仕方を学ぶために、自然を注意深く観察すること
3、慣習、自己顕示、決まりきったやり方でみにつけた型を拒絶するために、過去の芸術のなかの率直で、真剣で、誠実なものに共感を寄せること
4、最良の優れた絵や彫刻を制作すること

出典:Wikipedia

ミレイ作「初めての説教」1863年

その後、ミレイがどうなったかといえば、自分の子どもをモデルにして描いた「初めての説教」でアカデミーに再評価され、正会員になります。

ちょうどイギリスで起こった少女画ブームもありミレイは名声を完全に取り戻し、アカデミーの会長に選出されるまでになります。

大出世です(; ・`д・´) 巻き返し力がすごい!

ミレイは、エフィとの禁断の恋によって名声を失い、エフィとの結婚生活によって名声を取り戻したことになります。人生なにが幸いするかわかりません(((uдu*)ゥンゥン

雑誌アート

親友の婚約者と・・

ウィリアム・ホルマン・ハント作「良心の目覚め」

家具や調度品が新しい・・新婚家庭かと思いきや、女性の指には結婚指輪はありません。床で獲物を弄ぶ猫、片方だけ落とされた手袋など、この女性が弄ばれて捨てられる運命を暗示しています。

この場面は、訪ねてきた愛人(パトロン)と戯れ中に突如良心に目覚めたハッとなる女性というキリスト教らしい教訓を描いた絵です。

この絵のモデルはハンスの婚約者であったアニー・ミラー。

ハンスは「無教養な女性を再教育し嫁にする」という現代の感覚からはお節介この上ない恋愛思想の持ち主。

まだ少女だったアニー・ミラーを貧民街から拾い上げ、光源氏よろしく、結婚前提で自分に見合うレディに仕立てます。

その後、アニーはよりによってハンスの友人であった女たらしロセッティと恋仲になり、生真面目なハンスは大激怒!

このことが原因で、ロセッティとハントは決別!

ちなみにアニーはロセッティとは別のお金持ちと結婚します。知性という武器を得たアニーが目覚めたのは、果たして良心だったのか(ΦωΦ)フフフ… エフィといいアニーといい、女性は強いなぁ(^▽^;)

数年でバラバラになった初期のラファエル前派ではありますが、1人残って絵を描いていたロセッティのもとにエドワード・バーン=ジョーンズとウィリアム・モリスが加わりラファエロ前派後期(2世代)と呼ばれるようになります。

私が画家のゲス番付3位に推しているロセッティは、取り残された自分を慕ってきてくれた後輩ウィリアム・モリスの妻ジェーンとも深い関係になるんですけどね・・

ロセッティ作 「プロセルピナ(一部)」(1874年) モデル:ジェーン・モリス

もうここまで徹底してゲスになると、呆れるを通り越して感心します。

ラファエロ前派の絵にはこのようにややこしい関係になった女性をモデルにつかっているので、どんな思いで描かれた絵なのかと妄想しながら鑑賞すると、より楽しめるのです。

そういう私もゲスですけどねwww

\\ ✨ 動く大人の美術館です ✨ //


本日は以上です。お読みいただき、ありがとうございます。

当「大人の美術館」は土曜か日曜の深夜に更新します。

また来週御来館をおまちしております。

参考資料:

【書籍】

 

コメント

  1. 人間関係がムツカシイ…。(;^_^A

    あと、ゲス番付が全部知りたい。(笑)

    • ビー玉 より:

      ましゅーさん、コメントありがとうです♪
      質問ありがとうです。ツイッターのネタにさせていただきました٩(●˙▿˙●)۶

  2. Nick Ollie より:

    ミレイの絵はオフィーリアとか大好きなので、ゲスなのか残念すぎる、、、そして、わざと下手に描いているのが面白い。確かにあんなに美しい絵を描けるミレイとは思えない絵だもんねぇ。しかも画面を横切る白いタイツの足が、ちょっとエッチっぽいよね。

    そして、ロセッティですらゲス番付3位ってことは上位のゲス度合いってものすごいってこと?? ゲス番付、ぜーんぶ知りたい!

    • ビー玉 より:

      Nickちゃん、コメントありがとうです♪
      ミレイはラファエル前派の中ではまだゲス度は低い気がする(((uдu*)ゥンゥン
      白タイツ気づいちゃった?鋭いなぁ∑( ̄□ ̄;)ナント!! 実は男性の〇〇を象徴しているそうです。何かは言えな〜い(ノ∀`)タハー
      ゲス番付はツイッターのネタにさせてもらいました(ΦωΦ)フフフ…

  3. ヨウコの川歩き より:

    恥ずかしながら、私がラファエル前派のことを理解したのは、今年の3月に三菱1号館美術館へ「ラファエル前派の軌跡展」を観に行った時でした。
     ロセッティの女神像やジョーン・バーンズの見事なギリシャ神話にまつわる絵、ウィリアム・モリスなど印象的でした。例のミレイの『オフィーリア』は数年前に渋谷で観たんですが、素晴らしかったのでラファエル前派に興味はあったのですが、結構バラバラな作風なんだな…って思ったし、ロセッティに至っては『女好き』が絵を描いてる感が否めませんでした。仲間の奧さんなは手を出しまくる…ゼウスの真似?って思いましたし(笑)ビー玉さんによって更に深くその辺を知ることになって、面白かったです

    • ビー玉 より:

      ヨウコさん、コメントありがとうです♪
      私は数年前に森アーツだったかなぁ・・・ラファエロ前派展を観に行った時に知りまして、私の絵の師匠みたいな人がラファエロ前派の専門家なので、色々と話を聞いて興味を持ちました(((uдu*)ゥンゥン
      大阪ってラファエロ前派の展覧会はほとんど来なくて・・・今回初めての巡回じゃないかと思います(((uдu*)ゥンゥン
      ゼウスのマネ!その発想おもしろいですね∑( ̄□ ̄;)ナント!! おお♪すごい気付きをありがとうです!!!

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