うねる曲線、氷の微笑!難解で近寄りがたいドSな美術スタイル『マニエリスム』

ルネサンス・マニエリスム

こんばんは!ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。

本日は、明るいオープンエロのルネサンスとがっつりこってり熱苦しいバロックの間に位置するマニエリスムについてどこよりも簡単に分かりやすくをモットーに解説します。

あまり聴き慣れないマニエリスムとはどんな時代だったのか?

美術に馴染みのない方にも分かりやすく、美術スタイルを擬人化してみました。

12〜15世紀ガチガチのお堅い優等生タイプのゴシック
14〜16世紀明るくエロを叫ぶオープンエロのルネサンス
16世紀私に近づくことは許さない!ドS女王様のマニエリスム
16〜18世紀過剰な愛情であなたを繋ぎ止めたいメンヘラバロック
18世紀楽しければいい♪盛り盛りギャルのロココ
18〜19世紀上下関係にやたらと厳しいモラハラ女子の新古典主義
19〜20世紀いつもで流行の最先端、意識高い系女子の印象派
19世紀いつもなにもないところを凝視している不思議女子の象徴派
20世紀個性的にしか生きられない!藝大系女子の20世紀芸術

マニエリスムは難解で近づきがたいドS女王様。この冷たい美しさゆえ拒否られても近づきたくなってしまう不思議な魅力もあるんです。

よかったら、最後までお付き合いください。

 

マニエリスムとはなにか

マニエリスムは16世期のイタリアで流行した美術スタイルです。

マニエリスムの語源は「様式」とか「手法」といって意味の「(maniera)アニエラ」に由来します。

マニエラはマンネリと同じ語源。

後期ルネサンスとも呼ばれていて、ルネサンス期の巨匠ミケランジェロやラファエロなどを「完璧」って思ってた時代だから、後に続く画家たちは彼らの技法を模倣するのが “よし” とされ、求められてもいたんです。

だけど、模倣するだけで飽きたらなくてなって、個性を出したいと思うようになるのが世の常、美術家の習性。

捻れる人体

ミケランジェロ『聖家族』1506年

ミケランジェロが確立した人間の躍動感を表現する肢体が捻れるような螺旋状の形態(セルペンティナータ)は・・・

パルミジャニーノ『長い首の聖母』1534年〜1539年

マニエリスムだと、ねじれがエスカレートし体がゴムのように伸びちゃいます。

このエスカレートした人体の捻れがマニエリスムの一つの特徴です。

ちなみに次のバロック時代になると

カラヴァッジオ作 「ロザリオの聖母」1606-1607年

人体はリアルに戻りますが、構図が捻れ始めます。

 

ビー玉
ビー玉

どうしても捻れたいのねw

 

マニエリスムの代表的な画家であるパルミジャニーノは古典的な様式を模倣するだけでなく、お手本を誇張することで独特の優美な世界観を生み出しました。

イエスの体は幼児にしては大きかったりグニャグニャだったりで気持ち悪いし、死体のように見えなくもない。聖母の穏やかな表情がなかったら我が子の死を悼むピエタのようです。

ミケランジェロ『ピエタ』(1498 – 1499年)

雑誌アート

マニエリスムは謎だらけ

 

実際に、画面右側の天使たち(たぶん)が持つツボには十字架が描かれれてので、イエスキリストの死を暗示しているとも読めます。

じゃぁ・・この小さい人ななに?誰?

なんでこんなに柱が並んでいるの?

背後霊?(((;꒪ꈊ꒪;))):

人体のねじれが気になるものの、一見すると普通の聖母子像。

だけど、よくよくみると「不思議」がたくさん隠れているのです。

何が描いてあるのか分からない!とても難解というのがマニエリスムのもう一つの特徴です。

この頃の絵の依頼主って教会の他には王侯貴族や富豪たち。

教養豊かな彼らは、自分たちのインテリジェンスをひけらかしたいわけですよ。

なので、誰が観ても分かるような絵画ではなく難解で知的ゲームのような絵画が好まれるようになります。

まぁ要するに現代の「クイズブーム」みたいなもので、絵に込められた寓意を読み解ける人がカッコいいっなんて言われて、この難解な絵画パズルを解くことに知識人たちは熱狂したんです。

正直いうと、私にはなんのことだかさっぱりわからないんですけどね(゚∇゚ ; )

私だけでなく、今となっては正解は誰にもわかない、永遠に解けないパズルです。

まぁその分妄想はし放題なので、いろいろ思いを巡らせたらいいと私は思います。

舞台の小道具である人形を抱きながら空気椅子のパントマイムを披露する聖母マリア演じる舞台女優と、その後ろでは大道具さんが舞台を作ってる最中なんじゃないかってね。

 

ビー玉
ビー玉

65%くらい本気で思ってますw

館長
館長

それもまた真実

では、そんな優美で謎がいっぱいのアリエリスムを彩った画家たちを紹介しましょう

パルミジャニーノ (1503 - 1540年)

『凸面鏡の自画像』(1523年 - 1524年)

先ほどの『長い首の聖母』を描いた画家です。

子どものころから「美貌の天使」だと噂されるほどの美男子で、20歳のころに当時の教皇に献上したのが『凸面鏡の自画像』

教皇に自画像を贈るという心臓の強さもすごいけど、凸レンズの歪みをうまく表現しつつ、顔はまったく歪まま美しく描くナルシストぶり・・・いや、この斬新な構図と性格に描写する超絶技巧が本当スゴい!!

ちょっと安達祐実ちゃんに似てるのも可愛い♪

この自画像が大絶賛されて人気画家となりますが、精神不安に襲われ錬金術に傾倒してからは髭を伸ばし放題で「天使」と称された美貌も見る影もなかったとか

流行病だった赤痢にかかり37歳という若さでこの世を去りました。

ブロンズィーノ(1503〜1572年)


ブロンズィーノ作「愛のアレゴリー」1540-45年頃

16世紀半ばのフィレンツェで活躍した画家です。名前を知ってる人は少ないかもですが、謎多き代表作『愛のアレゴリー』は有名です。

もうね・・余白恐怖症かっ!ってツッコミ入れたくなくなるほどの謎のオンパレードで、専門家でもなにが描かれているのが読み解くのは不可能だって言われている絵です。

右上の砂時計を背負った老人は「時」を表し、羽が生えていることで「時の速さ」を表しているんじゃないかって言われています。

その向かいには「時」と対になる時の娘「真理」。この真理は仮面を被っているので「偽りの真理」ということになるのかもしれない・・時が真実カーテン(?)をめくって偽りの真実を暴いてるのかな?

ヴィーナスとクピドは本来親子だけど、親子にしたら艶かしいし、クピドの体だけ大人というのも不自然。当時宮廷で流行っていた人妻と小姓の秘密の戯れなのかもしれませんね。

クピドの奥には嫉妬に苦しむ人。今現在苦しんでいるのかもしれないし、これから苦しむ暗示なのかもしれないし・・。

なにが不思議って幼児の後ろの少女。

蜂の巣とサソリを両手に持ってて、下半身は蛇!

邪悪の化身が「甘さ」と「危険」を手にしてて、よく見るとその両手は左右逆さま。左右はいつでも入れ替わりそう。

まぁだいたいこの幼児は誰よって感じだし(^▽^;)

個人的には『恋愛』という甘美な感情が隠し持つ真の姿。ヴィーナス(愛欲)の本質を描いているのかと思ってるんですけどね。

甘美な感情は全てを包み隠そうとするけど、時間がたつにつれてドロドロとした部分も明るみに出てしまう・・みたいな(*´д`*)アハァ

この手のパズルは読み解けないと面白くないので、きっと画家はクライアントが読み解ける範囲で謎解きを仕掛けていたと思うんですよ。

なので、当時の知識人たちには読み解けたんだろうけど、現在ではその答えは失われていて専門家でも見解は別れるところ。

なのでどんな解釈も間違ってると言える人はない!妄想は自由なのです。

あなたはどんなふうに読みますか?

エル・グレコ(1541年〜1614年)

エル・グレコ『無原罪の御宿り』1608-13年

世界三大名画の1枚に数えれる「オルガス伯の埋葬」を描いた画家ですが、レンブラントやベラスケス に比べると日本では知名度は低い。エル・グレコの絵はほぼほぼ宗教画なので、苦手意識のある方も多いかもしれませんね。

エル・グレコの描く人物は全員10頭身の美形ぞろい!!

だた、その人体はマニエリスムも過渡期、極端なデフォルメがあまりにも斬新すぎて「乱視だったんじゃいか」と揶揄されて死後忘れられた画家となっていました。

20世紀間近にピカソやセザンヌが再発見し、手本としたことで再評価された画家です。

この『無原罪の御宿り(むげんざいのおんやどり)』は構図もうねりまくっていて明暗効果などマニエリスムとバロックを繋ぐような1枚になっております。

バロック時代はメンヘラ!人々の注意を引くために演出過剰になった芸術スタイル
こんばんは、ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。 16世紀末からイタリアで起こったがっつりこってり熱苦しい美術スタイル「バロック」 本日はバロックの魅力をどこよりも分かりやすくをモットーに解説します。 ...

無原罪の御宿りは天から降りてきている場面

『無原罪の御宿り』はキリスト教に縁のない方には難解なテーマだと思います。

聖母マリアが懐妊もしくは天に登っていくシーンだと思ってる人も多いと思うんですけど・・

実は、天から降りてきてます。

聖母マリアが処女でイエスを産んだというのも奇想天外な話しなんですが、どうしても聖母マリアと性的なこと(原罪)を分離したい人がいるらしく(^▽^;)

聖母マリア自身も性行為ではなく神から宿されたという考えが非公式ながらあるんです。

『無原罪の御宿り』は聖母マリアの魂が天からおりてきて、これからマリアの母であるアンナの体内に宿ろうとする場面です。

PCやスマホの画面でみると、極端に長い体は不自然に見えると思うですが、この絵が飾られていた祭壇は目線より高い位置にあって、実際のこの絵を下から見上げると、すごい立体感で大迫力なんです。

特に天使の羽は飛び出して見えるほど!

まぁ試しに下から覗き込んでみてください。

 

ビー玉
ビー玉

今、何人かの方がスマホを掲げたりPCを下から覗き込んでると思うと和むわぁwww

いや、嘘じゃないので、ぜひ下から覗き込んでみてくださいね。

まとめ

 

【マニエリスムの特徴】
・うねるS字曲線(ミケランジェロからの捻れる人体表現)
・体温の感じない美貌(ラファエロからの優美さの最終形態)
・難解(知識層向けの芸術)

どうだったでしょう・・近寄りがたいほど優美で、理解することを拒むよなドSなマニエ様は・・

マニエリスムはとっつきにくいですけどね、意味は分からずとも美しいお姿に見入ってしまいます(;//́Д/̀/)'`ァ'`ァ

時代に反動があるように美術史にも反動がございます。

小難しいドSのマニエさまの後には、愛情のごりおしメンヘラバロックちゃんです。

マニエリスムを鑑賞した後だと、バロックのわかりやすさが理解できると思います

よかったら次のバロック時代の解説もお楽しみください♪

バロック時代はメンヘラ!人々の注意を引くために演出過剰になった芸術スタイル
こんばんは、ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。 16世紀末からイタリアで起こったがっつりこってり熱苦しい美術スタイル「バロック」 本日はバロックの魅力をどこよりも分かりやすくをモットーに解説します。 ...
ドS女王様のマニエリスム(ルネサンス)

わかる人だけわかればいい。
教養のない者は触れることも叶わない。

本日は以上です。またの御来館おまちしております♪

コメント

  1. ねぇやん より:

    蜂の巣とサソリを両手に持ってる少女の前の幼児が気になります。
    邪悪なほほえみで何を手に持ってるのかしら…(・・?
    グレコの絵は、CLUMPも真っ青の見事な十等身ですね(^^;)

  2. Nick Ollie より:

    おー、ドSのマリエリスム、よく分かりました。クイズブームに乗って難解にしたという例えが分かりやすかった。

    エル・グレコがここに入るとは知りませんでした。そして下から覗いてしまいました。ほんものが見たい!

    サソリの少女は身体がなんだか分解されてる人形みたいで怖いね
    ((( ;゚Д゚)))

  3. aiai より:

    【美術スタイルの擬人化】最高ヾ(≧▽≦)ノ
    コピーして手帳に貼っておこうかな。
    『無原罪の御宿り』←まんまと首をかしげてPCのナナメ下から見上げたわよ!!(/ω\)ハズカシイ

  4. 凄いなぁ…( ゚д゚)ウム 分かると面白いんだろうなぁ…。

タイトルとURLをコピーしました