大人の美術館へようこそ。ナビゲータのビー玉です。
本日のテーマは「色」です。
西洋絵画はいろんな約束ごとがあるんですが、色にもいろんな意味がるのです。
ちなみにその約束ごとはアトリビュート といいまして、描かれているものが何がわかるヒント(象徴)のようなものです。
まぁ、わかりやすくいえば桃太郎における犬、猿、キジ、桃のようなものです。
そして、何かを象徴するのに色を使うこともあります。
季節はずれですけどねwww
赤い服を着た髭面の老人・・・
この髭面の老人が、いったい誰で何をしているのかは、みなさんわかりますよね?
クリスマスに子どもたちにプレゼントを配るというサンタクロースなんですけどね。
煙突から家に進入しよとしてても誰も泥棒だとは思わないわけです。
悪用にご注意ください
これがアトリビュート です。
色の場合はアトリビュート (持ち物)ではなくて “象徴” になりますが・・
今宵は絵画における色にまつわるお話(雑談)です。
よろしければ最後までお付き合いください。
白は純白?
ウェディングドレスのイメージが強い白ですが、結婚式に白を着る習慣はそれほど昔からあるものではありません。19世紀のヴィクトリア女王が結婚式の時に白いドレスを着用したのが始まりだと言われています。
17世期ごろまでは、どちらかといえば死装束など、喪と哀悼(あいとう)のイメージが強かったのです。
フランソワ・クーリエ『スコットランド女王のメアリー・スチュアートの肖像』1560-61年
白いベールをかぶるメアリースチュアート。こちらはウェディングドレスではなく「喪服」ですね。
19世紀ごろまで絵具の「白」をつくる主な材料は鉛白と呼ばれる「鉛」の一種でした。
画家たちは白色をつくるために鉛を砕き、体に害がある鉛の粉を吸い続けていたんです。そのことで鉛中毒になる画家がとても多かったんですが、そのことも白が哀悼を意味する色というのに何か関係があるのかな?なんて思ったりします。
やっぱり白は純潔!
あと白にはイメージ通り「純潔」の意味もあり、由来は古代ギリシャに遡ります。
古代で花のユリはパートナーへの忠誠心の象徴として、結婚のときに花嫁が頭に飾っていたんです。それが巡り巡って聖母マリアを象徴する花になりました。
キリスト教は土着的な宗教を「異端」として嫌っていましたが、その多くを取り込んでいたりします。
クリスマスも元々は他宗教の太陽神のお祭りだったのをキリストの誕生を祝う日としたんです。そのほうがキリスト教を広めるにあたって受け入れやすかったからです。
なので古代の習慣が聖書のお話に変化したというのはよくあることなのです。
フィリッポ・リッピ『受胎告知』1443年
また童貞(信仰?)を守り抜いた聖人の衣装や復活の場面のイエス・キリストの衣装も白が多いです。個人的には純潔を守るっていうのも、それで死ぬっていうのも、もったいない話だとな思っちゃうんですけどね(;//́Д/̀/)カーッ
大きなお世話ですよ!
黒は悪魔の色?
純潔の白とは反対の黒はどんな色なのでしょうか?
光を全く通さず、光を吸収してしまうような黒は古代より不吉な色として罪や悪魔、冥府の象徴とされてきました。
モロー作『ユピテル(ゼウス)とセメレ』
ゼウスが人間の娘であるセメレに恋をして人間に姿をかえて口説きます。
そんなセメレに「本当の姿が見たい」と請われ、真実の姿を現した途端!!
雷鳴が轟き、セメレは雷に打たれて絶命。その閃光に照らされ、普段光が射さない暗黒の冥府までもが露になる・・・という壮大な絵画はモローの『ユピテルとセメレ』。
闇をも照らし出すゼウスの力が表されています。
黒色が主役ではないですけど、黒を描かないことでドラマ性を高めた絵なんです。
染色技術の向上で黒のイメージが大きく変わる
人々の恐怖の象徴だった「黒」ですが、染色技術が向上し始めた16世紀になると重厚さが尊重されるようになり、プロテスタント の司祭服や喪服として定着していきました。
19世紀には「黒」のもつ高級感から上流階級では黒の衣服が人気になります。男性の着用するタキシードや礼服が黒に変わるのもこの頃です。
エドゥアール・マネ『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』1872年
不吉とされる色から高級感を演出する色まで、どんな色にも染まらないイメージの黒ですが、時代によって大きく変わった色であります。強い色ほど変化するっていうのも面白いですね。
青は聖母の色
ラファエロ・サンティ『大公の聖母』1505-1506年
青は聖母マリアの色です。
時代によって絶対ではないんですけど、聖母マリアが青いマントを羽織っているというのは西洋絵画においては重要なお約束(アトリビュート) です。
なぜ青なのかと言うと、カトリック教会では聖母マリアを讃えて「海の星(マリア・ステラ)」と呼んでおり、そのイメージは生命を育んだ母なる海の青に由来します。
聖母マリア信仰が盛になってきた12世紀ごろ、もっとも貴重で美しい顔料が宝石ラピスラズリを砕いてつくる「ウルトラマリン」という青でした。
この高価で美しい色で聖母マリアを彩りたいと思ったのが始まりなんじゃないかった思うんですけどね。
聖母マリアの色ってことで、青には「純潔」や「貞節」の意味があります。
フェルメールブルー
ラピスラズリを使った青と聞くと、フェルメールを思い浮かべる方も多いと思いますが、
ヨハネス・フェルメール『真珠の耳飾りの少女』1665年
フェルメールだけがラピスラズリを使っていたわけではありません。
だけど、ラピスラズリはとても高価だったので、教会や王族が依頼した絵ではなく、庶民が手にするタイプの小作品に使われることはめずらしいです。とくにラピスラズリを椅子とか壁などの小道具にも使っていたのはフェルメールくらいかも!
裕福な奥さんの婿養子だったフェルメールはお金のために絵画を描いていなかったからこそのフェルメールブルー(* ̄∇ ̄*)
ちなみにフェルメールは黄色も多用していますが、フェルメールの黄色はマンゴーの葉だけを食べさせた牛の尿を乾燥させたものを使っています(^▽^;)
ちょっと不潔な感じもしなくはないですが、これまた高価な原料でございます。西洋絵画界のマスオさんおそるべし!
では次はそんな黄色にまつわるお話を・・
黄色は裏切りの色?
東洋では黄色といえば「金運」の色として縁起がよい印象が強いですが、西洋においては「良い意味」と「悪い意味」の両方を持つ色です。
もともと太陽や黄金の代わりの色として人気があったんですけど
いつしか「悪い意味」が一人歩きするようになり、「裏切り」や「異端」「欲望」「嫉妬」を象徴するようになっていきました。
ジョット『ユダ の接吻』1300年ごろ
イエスの弟子でありながら、イエスを捉えようとするローマ兵に銀貨30枚でイエスを売ったユダ 。
ジョットの『ユダの接吻』では追っ手に誰がイエスが知れせるためにイエスにキスをしている場面です。
そのことからユダ はキリスト教を信じる人にとって裏切りの象徴。
そんなユダは、絵画では黄色い服を着ていることが多いでのです。
黄色がなぜネガティブな色になったかというのは諸説ありまして、黄色が単に金色の変わりにすぎかったからだとか、黄土色という意味のfauve(フォーヴ)が「裏切り」という意味を含んでいたからだなど言われていいます。
私は黄色は黄金(富)を連想させる色だからじゃないかな?なんて思っています。
お金を稼ぐことに罪悪感を植え付けるためだったのではないかと・・。
キリスト教には富=罪深い、清貧こそが美しいという考え方がありましたから(((uдu*)ゥンゥン
中世で娼婦や罪人に黄色の服を着せて蔑んだり(さげすんだり)、ナチスがユダヤ人に黄色い星のマークをつけさせたりと黄色のネガティブなイメージは長く定着しました。
黄色を使ったもっとも美しい国旗
絵画ではないんですが、私が世界で最も美しいなと思っている国旗には黄色が効果的につかわれています。
ウクライナの国旗です。日丸に勝るとも劣らない単純でシンプルなデザインなんですが、下の黄色は実る小麦畑を、青は空を意味しています。
ウクライナは小麦の生産量が世界で8位となっていて、ウクライナの人にとって、黄色い小麦畑と蒼空って国民共通の原風景なんですね。
このことを踏まえて国旗をみるとなかなか感動的です。平和の象徴のような気がして美しいなぁって思うのです。
赤はイエス・キリストの血の色
青=聖母マリア
黄色=裏切りのユダ
そして赤もキリスト教においては重要な色です。
なぜなら!イエス・キリストの流した血の色だからです。
ルーベンス 『いばらの冠を被るキリスト』1612年
ちなみにクリスマスカラーの緑と赤ですが、緑は棘(とげ)のあるヒイラギの葉。イエスが最後にかぶせられたいばらの冠をイメージして、赤い実はそれによって流されたイエスの血の色を表しています。
じつはとても痛々しい由来なのです(^▽^;)
それを知るとヒイラギのリースとか、ちょっとしたホラーですよね!!
↑これまた季節外れですけどねwww
ローマカトリックの枢機卿や法王が着用する礼服の赤もイエス・キリストや信仰のために死んでいった殉教者たちの血の色を象徴しています。
赤は他にも「権力」とか「権威」の象徴でもあるんですが、どれだけ多くの血を流したかで権力が大くなっていくように思えてちょっと考えさせられます。そう思うとレットカーペットとかも意味深じゃありませんか?(((( ;゚д゚)))アワワワワ
権力者たちが歩んできた道(レッドカーペット)にはどれほどの血が流れてきたんでしょうね・・・
本日は以上です。お読みいただきありがとうございます。
また来週お会いいたしましょう SeeYou(*ˊᵕˋ*)੭
コメント
興味深いお話をありがとうございます。
白は何色にも染まる、黒は何色にも染まらないイメージがあったけど
黒って色々な色の混ざったものなのよね。
ウクライナの国旗はそういう意味があったんだね。
個人的には日本の白飯に梅干しのイメージとはかけ離れてるわ( ´艸`)
マドンナさんが最初の結婚をした時のウエディングドレスはクリーム色だったそうです(^▽^;)
不勉強でお恥ずかしいのですが、血の色と言われる赤を国旗に使っている日本は、どのような意味合いがあって、あの色になったのでしょう?オレンジでいいのでは…?
「裏切り」や「異端」「欲望」「嫉妬」に黄色のイメージがなかったので、驚きました!
私の中では「紫」っていう感じなんですけど、そういえば紫の絵ってそんなに見ない…とか。
色の原料を天然の物で作っていたならなおさらかな、と思いました^^
お金を稼ぐことに罪悪感を植え付けるためだったのではないかと・・。
キリスト教には富=罪深い、清貧こそが美しいという考え方がありましたから(((uдu*)ゥンゥン
↑これはビー玉さんならではのキリスト教知識と感性ですね☆
わたしは青が苦手なんだけど・・・なるほど、そういうことなのか(((uдu*)ゥンゥン
って納得しちゃいけない気がする。
色の話がとても面白かったが…。ウクライナの風景にもっとそそられたり。( ゚д゚)ウム
ましゅー。のブラザー同じく(*´ω`*)
単純と思えるデザインも奥深いものがありますな(*´ω`*)
今回も楽しかった~。そうか、そんな意味があったのか、ふむふむと頷きながら読ませてもらったよ。
ウクライナの旗、すてき。日本は梅干し弁当から来てる? まさか。日出る国から来てるのかな?
それにしても、ゼウスの力はすごすぎる。