こんばんは、ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。
16世紀末からイタリアで起こったがっつりこってり熱苦しい美術スタイル「バロック」
本日はバロックの魅力をどこよりも分かりやすくをモットーに解説します。
12〜15世紀 | ガチガチのお堅い優等生タイプのゴシック |
14〜16世紀 | 芸術に人々の萌えを取り戻したのオープンエロのルネサンス |
16世紀 | 私に近づくことは許さない!ドS女王様のマニエリスム |
16〜18世紀 | 過剰な愛情であなたを繋ぎ止めたいメンヘラバロック |
18世紀 | 楽しければいい♪盛り盛りギャルのロココ |
18〜19世紀 | 上下関係にやたらと厳しいモラハラ女子の新古典主義 |
19〜20世紀 | いつもで流行の最先端、意識高い系女子の印象派 |
19世紀 | いつもなにもないところを凝視している不思議女子の象徴派 |
20世紀 | 個性的にしか生きられない!藝大系女子の20世紀芸術 |
美術スタイルを擬人化すると、まさに愛情表現がやたら激しいメンヘラ女子なバロック。
日本人にとっては胸焼け必須のバロックですが、慣れてしまうと他の美術スタイルは物足りなくなるという麻薬的な魅了があります。
そんなバロックの世界にナビゲートします。
よろしければ、最後までお付き合いください。
バロックとは何か
16世紀末〜17世紀にヨーロッパでブームとなったのがバロック時代(🇮🇹 barocco)です。
語源はラテン語のバロッコ。バロックパールのこと。
バロックパールは、真丸ではなく歪な形をしたパールのことです。
バロック時代の何が歪んでいたのかといえば・・
嘘、大袈裟、紛らわしい・・というJARO(日本広告審査機構)のキャッチコピーじゃないですけど、実際よりも “大袈裟” で “分かりやすい” 捻れるような構図の劇的な表現を好んだ美術スタイルなのです。
宗教革命がバロックを産んだ
カトリック率いる十字軍の失敗より、中世には絶対的だった教会の勢力は徐々に失墜していき、資金が集まりにくくなっていったんです。
そこで考えられたのが「免罪符」
お金を出して免罪符を購入すれば全ての罪が許されるという、どう考えても怪しげなもの(^▽^;)
さすがに免罪符システムはアカンやろってことで、カトリックに対抗するプロテスタントが誕生し、キリスト教の信者を2分します。
離れた信者の奪還と新たな信者獲得のため、偶像崇拝禁止の垣根を飛び越えてカトリックが打ち出したのが絵を使ったわかりやすい布教活動。
「分かりやすく」「ドラマティック」「とにかくかっこいい」のバロック芸術です。
え?そんなことでって思うかもですが、識字率が低かった当時、小難しい聖書を理解しろっていうのに、視覚から感情に訴える「劇場型絵画」はとても効果的だったんですよ!
「マンガで読む世界史」って感じのものですか?
感覚としてはマンガよりも映画に違いと思います
法悦表現
ジョット『聖フランチェスコの法悦』1297〜1300年
法悦っていうのは、神様と一体化した時に得られる宙を舞うほどの喜びのことなんですけどね・・
誰もが感じられるものではないので、一般の人が理解するのは難しいんですよ。
そこでバロック芸術を使うと・・
カラヴァッジョ『聖フランチェスコの法悦』1595年
えっと・・・分かりにくにでしょうか(^▽^;)
画家のカラヴァッジョは美少年好きだったんです。
いわゆるボーイズラブ(BL)ですね
美少年天使に抱き抱えてうっとりするフランチェスコという表現になります。
バロックでは、法悦の気持ち良さを分かりやすく性的な気持ちよさに変換したんです!
ちなみに法悦は英語でエクスタシー。
エクスタシー = オルガスムス(性的快感)という表現になったわけですねw
その後、法悦を描いた絵画や彫刻はもれなくエロくなります。
カラヴァッジョ作「法悦のマグダラのマリア」1606年
ベルニーニ『聖テレジアの法悦』1647〜1652年
この上なく気持ちいいんだろうなってことは、一般人にも伝わりますよね。ね?
それでいいのかカトリック
それでいいのかバロック!
バロック的聖母子
もうちょっと分かりやすいところをいっときましょう(^▽^;)
マリアもイエスも人間らしさを消し去り、イエスに関しては子どもらしく描いてもいけなかったのが中世。
ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ作 1283〜1284年
イエスの頭はわかりやく成熟してますが💦
それがバロックでどう変わったかと言えば!
カラヴァッジオ作 「ロザリオの聖母」1606-1607年
どこに注目すればいいのが一眼でわかる明暗表現と捻れるような視線誘導こそがバロックの特徴です。
聖人たちが、まさに今動き出しそうな臨場感!
この大袈裟な演出は、さながら映画のような感覚で庶民に刺さっていきました。
バロックの画家たち
では、そんな時代に活躍したキャラも濃い目のバロックの画家たちの紹介です♪
ならず者か天才か カラバッジョ
カラヴァッジョ『聖マタイの召喚』1600年ごろ
カラバッジョ は筆を持っているか剣を持ってるかと言われるほどのならず者で、喧嘩の果てに人を殺めてしまったガチ悪オヤジです。
だけど、ドラマチックな絵を描かせたら右に出るものはおらず、彼が牽引したバロック芸術は「劇場型芸術」と呼ばれます。
殺人の罪でイタリア全土を逃げ回り、立ち寄り先で絵を残したことでイタリア全土にその名前が響き渡り、カラヴァッジョの影響を受けたカラヴァジェスキと呼ばれる熱狂的な信奉者たちがバロックを盛りあげました。
カラヴァッジョの代表作『聖マタイの召喚』はイエスがのちに弟子となるマタイを召喚する場面。
この絵は光による効果的な演出を使った最初の絵画だと言われています。
イエスに指差され、マタイが顔をあげると光が顔に当たり天命を聞くことになるんだろうなぁ・・と思わせる演出がされています。
この絵の観客たちはその一連の流れを動かない絵に想像するのです。
この作品は公開されるやいやな大評判となり見物人が殺到しました。
ちなみにカラヴァッジョは紙にデッサンを一切せずに直接キャンバスに描いていたらしく、デッサンは1枚も残されていません。
構図がしっかり頭の中に浮かんでいたんでしょうね。
デブ専の超インテリ画家 ルーベンス
ルーベンス『マリー・ド・メディシスの生涯 マルセイユ 上陸』1622-1625年
「王の画家にして、画家の王」だと言われた王族お抱えの画家ルーベンス。
ルーベンスのパトロンはスペインのフェリペ3世、フランスのマリー・ド・メディシス、イギリスのチャールズ1世などなど錚々たるメンバー。
王のための絵なので、物理的な絵の大きさも相当なもので・・
当時は今よりもずっとふくよかな女性がモテる時代ではあったんですが、ルーベンスのぽっちゃりはそれを考慮してもぽっちゃりすぎ(^▽^;)
それが、大きなキャンパスに描かれるものだから肉肉しくて迫力満点。
このルーベンスの絵は西洋絵画慣れしていないと胸焼け必須なので、このイメージが強すぎて「西洋絵画苦手」っていう人も多いんじゃないかと思ってます(゚∇゚ ; )
代表作『マリー・ド・メディシスの生涯』シリーズは21枚の連作。
これが21枚ならぶ迫力たるや!
タイトルになっているメディシスというのはメディチのフランス語読み。
マリーはイタリアの大富豪メディチ家のお嬢様ではありますが、王侯貴族でもないマリーの嫁入りをこれでもかと盛り上げるために神話を交えつつ大袈裟に描かれたのがルーベンスの生涯シリーズなんです。
とくに「マルセイユ 上陸」は豪華絢爛。
マリーは画面中央でキリっと前を向いている女性です。
その下には海の神ポセイドン 、ポセイドン の息子トリトン、長い白髪のひげはポセイドン の従者プロテウス、そしてぽちゃぽちゃの海の精たち。
これは海の神々が総出でマリーの乗る船を守り先導して来たってことです。
そしてマリーを大歓迎の様相で出迎えている2人。
青いマントの男性はフランス王朝の百合の紋章をつけたフランスの擬人。
黄色いドレスを着て建物の冠をつけているのがこれから上陸するマルセイユ の擬人です。
マリーの後ろに控えているのはカトリック教会のマルタ騎士団。カトリックの擬人。
そしてその上部に輝くメディチ家の紋章。
これ以上ないほどの大袈裟なマリーの上陸シーンな訳ですよ。
でも、これを庶民が見ても「豪華な絵だな」くらいにしか思わないんです。
当時の一般庶民は神話なんて知りませんからね。
教養ある人がみるとマリーがどれほどすごい人物として描かれているかがわかるです!これがルーベンスの真骨頂。
当時の知識人たちの虚栄心を絶妙にくすぐりつつ、王侯貴族ではないマリーとの結婚がいかにフランスにとって有益で正当性のあるものだったのかを印象付けることになります。
ルーベンス本人もただのポチャロリ好きのオジさんではなく、王侯貴族に負けないほどの知識人だったんです。
王の画家かっこよし( *• ̀ω•́ )b グッ
構図の天才 ベラスケス
ベラスケス 『ラスメニーナス』1656年
スペイン王家の宮廷画家で、「画家の中の画家」と呼ばれたのがベラスケスです。
スペイン国王 フェリペ4世の肖像一部
悲しいかな・・あまり美しいとは言えない国王一家を描き続けないといけないという、画家としは嬉しいんだか嬉しくないんだかという状況がベラスケス に凝りに凝った構図を生ませたような気がしないでもありません(゚∇゚ ; )
構図に凝るしかないですもんね
ラス・メニーナスは一見すると可愛らしい王女マルゲリータの肖像を描いているように見えますが、実はちがうんですよ。
鏡に写っているのは国王夫妻。
この絵は、国王夫妻の肖像画を描いている時に入ってきた王女さまご一行の様子を国王夫妻からみた図なのです。
フェリペ4世は、二人目の妻を迎える前に長年連れ添った愛する妻と息子を相次いで亡くしています。
傷心の王はベラスケス に「家族の絵が欲しい」と注文しのがラス・メニーナスです。
これは国王一家の日常を切り取った一場面なんですね。
マルゲリータ王女は13歳でオーストリアに嫁ぎます。
フェリペ4世はこの絵をみて他国に嫁に行った愛する娘を懐かしんでいたんじゃないかなって思うのです。
ベラスケスは王の想像を超える絵を王に提供しました。
この家族の肖像を描いたことで、ベラスケスとフェリペ4世は画家と国王という垣根を超えて信頼関係で結ばれ、フェリペ4世は当時最高の栄誉とされた「サンチアゴ騎士団」の称号をベラスケス に送りました。
光と闇の画家 レンブラント
レンブラン「ダナエ」(1636年)
レンブラントは「闇と光の画家」と呼ばれオランダ活躍したバロックの画家です。
レンブラントと言えば、世界三大名画の1枚に数えられる『夜警』が有名ですが、ここはあえてダナエ を紹介したい!
ダナエとはギリシャ神話に登場し、父王に塔の上に監禁されていた絶世の美女。
そんなダナエを見初めたゼウスは金色の雨となって塔に侵入して思いを遂げるというお話です。
金色の雨と交わる美女いう美しい情景を画家たちはこぞって描いたのですが、レンブランは金色の雨をあえて描かずに「光」として表現しています。
ダナエの肢体を照らす光がなんとも色っぽい♪
バロックらしい光の演出です。
レンブランドの描くダナエは自らゼウスを誘っているように見えます。
頭の上の手を縛られて苦しむ表情の天使がダナエの心情を物語っていて、幽閉されていたダナエはゼウスに救いを求めたんです。
この絵は1985年に「ダナエに誘惑された」という青年がダナエの股間を切り付けて硫酸をかけました。青年曰く「ダナエと交わる代わりにキズつけた」と・・・
レンブランドの活躍したオランダはカトリック教会から離れてプロテストの国だったので、他の熱すぎるバロックの画家に比べたら少しあっさりした感じがしますが、350年という時を超えて私たちの心を揺り動かすダナエの救いを求める魅惑の眼差しは、まさに「劇場型絵画」と呼べるでしょう。
そしてそんなレンブランドよりもさらにあっさりしている光の画家がいます。
フェルメール
フェルメール『牛乳を注ぐ女』1657年ごろ
カラバッジョ 、ルーベンスを観た後だとホッとするか、物足りないと感じるは人それぞれだと思いますが、日本で美術展を開催すると、もっとも集客できる画家の1人です。
そんなフェルメールは職業画家ではありませんでした。
資産家の奥さんの婿養子として迎えられて、絵が売れなくて食べていけた画家なんです。
なので、明暗くっきりで生きるか死ぬかみたいなドラマチックで熱苦しい絵を描く必要なく、高価なラピスラズリを使った「マリンブルー」という絵具をメインの服などだけでなく、壁の陰など他の画家では考えられないような使い方をしていたりします。
バロックっぽくは全然ないんですけどね、だけど「光の魔術師」と呼ばれるだけあって、光の演出に長けていました!
窓のガラスをよく観ると少し欠けてるところがあるんですよ・・
このことで光に表情がでてリアル感が増します。
フェルメールの作り出す光は牛乳を注ぐ女性が聖母のように尊く見せます。
バロックの画家としては地味といえるフェルメールですが、やっぱり光の演出はバロックなんですよね。日常の中にも派手ではないですけけど、小さなドラマ潜んでいるのです。
【バロックの特徴】
・光の演出「明暗対比」
・ドラマチックな「劇場型表現」
・宗教画はわかりやすく「聖書の挿絵効果」
少し歪んだ光を放ちつつ、後世に多大なる影響を残したのがバロック芸術なのです。
メンヘラバロック(ロココ) 愛する人(カトリック信者)を繋ぎ止めるための過剰演出が特徴技 |
本日は以上です。お読みいただきありがとうございます。
しばらく美術形式について書いていく予定です。
次は目に目に見えないものをの表現しよとし象徴主義かな(ちょっと未定です)
またの御来館をお待ちしております。SeeYou(*ˊᵕˋ*)੭
コメント
胸やけ…はしませんでしたが、
メディチのお嬢様の嫁入りはヌードでいいのかと思いました(^▽^;)
多分バロックって最もなじみがある気がします。
学校教材で多く使われてましたよね。
肉感的なおば様たちにドキドキしました(;´∀`)
デブ専だったり殺人するならず者だったりだけど、絵の才能とキリスト教の知識はものすごい画家たちばかりの時代だったのかなー、と思いました。
法悦の表現が分かりやすい。んー、気持ちよくなれるのね、じゃカトリックにしましょ、みたいなのを狙ったんだね。
面白いね。( ゚д゚)ウム バロックは…最初は美味しく頂けそう。胸焼けしそうだが。