こんばんは!大人の美術館ナビゲーターのビー玉です。
なにやら神様が7日で世界を作ったらしい。
イエス・キリストはいつ出てくるの?
キリスト教や聖書に馴染みがないし、ぼんやりとしか知らない旧約聖書。
だけど海外の方と接する機会が多い方は当たり前のように聖書の話しが出てきて、なんとなく知ってるフリをしたことがあるんじゃないでしょうか?
旧約聖書はキリスト教だけでなく、ユダヤやイスラム教とも共通する世界観であり歴史なんです。
本日はそんな旧約聖書について名画を交えつつ、たった10分で超早送り解説します。
おとぎ話のようにばらばらに散らばった旧約聖書のお話を線で結んでみたいと思います。
よかったら最後までお付き合いください。
ちなみに旧約聖書にイエス・キリストは登場しません(*´﹀`*)
旧約聖書ってなに?
旧約聖書はイスラエルの民の歴史を描いたものです。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の元となった聖典で、これらの3大宗教の信者数をたすと世界人口の50%を超えると言われています。
その世界の50%以上の人が共通の知識として持っているのがハヤウェ(神)と人間の約束の書『旧約聖書』なのです。
旧約聖書と呼ぶのはキリスト教だけですけどね。
旧約聖書 | ||||
モーゼ五書(5巻) | 歴史の書(12巻) | 予言の書(17巻) | 詩書 | 外伝・続編 |
ユダヤ教では最重視される書。天地創造からモーセの死までが記される | イスラエル建国からエルサレム帰還までの歴史が記されている | 神の意思を預言者たちの行動や言葉が語られる | 人生訓や詩歌とよばれるイスラエルの宗教詩 | その他諸々 |
創世記 出エジプト期 レビ記 民数記 申命記 | ヨシュア記 士師記 ルツ記 サムエル記上・下 列王記上・下 歴代誌上・下 エズラ記 ネヘミヤ記 エステル記 | 【大予言書】 イザヤ書 エレミヤ書 哀歌 エゼキエル書 ダニエル書 【小予言書】 ホセア書 ヨエル書 アモス書 オバデア書 ヨナ書 ミカ書 ナホム書 ハバクク書 ゼファニヤ書 ハガイ書 ゼカリヤ書 マラキ書 | ヨブ記 詩篇 箴言 コヘレトの言葉 雅歌 | トビト記 ユディト記 マカバイ記1・2 知恵の書 ダニエル書補遺 その他 |
正典だけでも全39巻と、とにかく長いから本気で読もうと思ったら大変なのだわ(^▽^;)
死海文書は秘密文書?
死海文書(写本)
まだ文字が一般的でなかった時代から語り継がれてきた神様関連の物語を数千年かけて写本としてまとめられたのが旧約聖書。
現存する最も古い写本は1947年に発見されて大騒ぎになった『死海文書』
紀元前2世紀ごろに書かれたものだと言われています。
伝言ゲームじゃないですが、語り継がれるうちに少しずつニュアンスが変わってきているとおもうんですよね。
なので、古いということはそれだけ原始の神の言葉に近いということで話題になったんです。
『死海文書』は人類にとって恐ろしいことが書いてる秘密文書というわけではなく、古い聖書の写本なのです。
旧約聖書に記された歴史物語
では、神様と人間が交わした約束とはどいうものなのかを見ていきましょう。
というか、ユダヤ的な信仰がない私にしたら約束を破っては滅ぼされそうになる人類と神様との死闘物語にみえるんですけどね(^▽^;)
天地創造
ミケランジェロ 『アダムの創造』1508〜12年
旧約聖書は神様が世界を創るところから始まります。
まず1日目に神は「光あれ」と混沌とした世界を光と闇に分けます。
1日目:天と地、闇と光、夜と昼
2日目:空(天)
3日目:海、大地、植物
4日目:太陽と月と星
5日目:魚と鳥
6日目:動物、人
こんな感じで次々に世界を創りだし、7日目に疲れて休みます。これが安息日です。
クリスチャンではない日本人も、これに習い1週間を7日としているんです。
いまは安息日は週に1日じゃなくて2日休んでますけどねw
初めて約束破ったアダムとイブ
ラファエロ・サンチェ作 「アダムとイブ」
神が作った人間アダムとイブは楽園エデンで何不自由ない生活を送っていました。
だけど神様から「絶対に食べるな」と言われていた知恵の実を好奇心に負けて食べてしまいます。
約束を破ったアダムとイブは楽園を終われ、永遠の命も奪われます。
現代、私たちが不死ではないことに加え、出産の苦しみと労働義務を課せられたのはアダムとイブが約束を破ったからだったんですね(;´д`)トホホ…
動物にも生みの苦しみがあるのはなぜなんでしょうね。
以降人類は「約束を破ったアダムとイブ」の遺伝子を引き継いて生まれ増えることになります。
聖書の世界では人類は生まれながらに悪の遺伝子を持っている(性悪説)。
これが人類の原罪です。
人類最初の殺人カインとアベル
ウィリアム・ブレイク作『発見されたアベルの遺体』1825年
人類の最初の殺人はアダムとイブの長男が次男を殺す。
兄弟殺人です。
原因は嫉妬
神に愛される弟アベルに嫉妬した兄カインは弟を撲殺!
神はなぜ平等に愛せなかったのか
神から問い詰められても弟殺しのシラを切ろうとしたカインはエデンの東の地ノドに追放
エデンという単語は映画やアニメ、漫画などでも使われるのでよく耳にしますよね。
人類が生まれ育ち、でも戻ることのでない楽園のことなんです。
とりあえずリセットボタンを押しちゃったノアの方舟
アダムとイヴの息子が兄弟殺人を犯し、ハードコアな家族崩壊のあと、イヴは三男セツを授かります。
そのセツの直系の子孫が『ノアの方舟』のノアです。
ノアの時代になると地上は人で溢れ、残念ながら悪人もたくさん現れてくるわけですよ・・・
そんな地上の様子を嘆いたのは、創造主である神です。
リセットしたい
って感じでリセットボタン “大洪水” を起こして世界を滅ぼします。
ドメニコ・モレッリ『箱舟を出た後のノアによる感謝の祈り』1901年
ノア一家と一対の動物たちだけは事前に巨大な方舟を作らせて助かる・・
これが有名なノアの方舟。
やっぱり簡単にリセットしたらダメだよね
さすがに反省した神は「もう人類を絶滅(リセット)させるのはやめる」と約束します。
団結防止で言語を変えた!バベルの塔
ピューテル・ブリューゲル『バベルの塔』1568年
大洪水のあと、2度と人類を滅ぼさないという神様の言葉通り人類は滅ぼされることなく、順調に数を増やしていきました。
その頃、人類の言語は一つ。
神様への畏怖も薄らぎ、人類は一致団結して神様に近づく高い塔を建てようとするんです。
それに怒った神は人類を滅せないなら意思の疎通ができないように言語をバラバラにして団結することを阻止します。
神様も考えましたね
人類は塔の建設を諦めて言葉の通じるものだけで小さなコミュニティーを作って暮らすようになります。
ノアの息子たちはそれぞれの民族の始祖となります。
ノア | 長男 セム | セム語族の始祖 (ユダヤや中近東の諸民族の) |
次男 ヤペテ | インド・ヨーロッパ語族の始祖 (ラテン・ペルシア人など) | |
三男 ハム | ハム語族始祖 (パレスチナ・エジプトなど) |
その後、神は小さな街を滅ぼしたり、人間の信仰を試たり、ノアの子孫たちは神からのトラップをなんとかかい潜り生き残るのです。
天使が根負けしたヤコブがイスラエルを名乗る
ノアの長男セムの子孫であるヤコブは旅の途中である男から喧嘩を吹っかけられます。
ポール・ゴーガン作「説教のあとの幻影、あるいは天使と闘うヤコブ」
一晩中繰り広げられる死闘。ヤコブは関節を外されながらも諦めません。
じつは、突然襲いかかってきた男は神の使い天使でした。
足の関節をハズされても怯まないヤコブに根負けして天使はこう言います。
「イスラエル(神と戦う者)と名乗りなさい」と・・・
こうしてヤコブと12人の息子はイスラエル十二部族の始祖となったのです。
エジプトに住み着くイスラエルの民
旧約聖書で兄弟はいがみあうことがと〜っても多いっ(^▽^;)
ヤコブの息子たちも例外ではありません。
ヤコブの最愛の息子ヨセフは他の兄弟の嫉妬をかい、兄弟たちの策略によりヤコブはエジプトに奴隷として売られていきます。
オーファーベック『兄に売られるヨセフ』1816〜17年
頭のよかったヨセフは機転をきかせてエジプトを飢饉から救い。ファラオ(王)の腹心にまで出世し成功を果たしました。
エジプトで成功し、子孫(イスラエルの民)を増やすヨセフでしたが、ファラオの代替わりとともに迫害を受けるようになります。
イスラエルと約束の地に導くモーセ!
イスラエルの民が迫害をうけるなか、誕生したのがのちに神から十戒をいただくモーセです。
エジプトはイスラエルの民がこれ以上増えないように、生まれた男の子を1人残らず殺害する命令を下します。
モーセはセーヌ川に流されそうなところをファラオ(王)の娘に救い出されます。
アルマ・デルマ『モーセの発見』1904年
王女はモーセを哀れに思い、自分の子どもとして育てます。
立派に育ったモーセは60万とも100万人とも言われるのイスラエルの民を先導してエジブトを脱出!
約束の地カナンへ旅立つのです。
神様からの十戒(約束)をいただく
レンブラント・ファン・レイン 『モーセの十戒 』1659年
モーセに導かれたイスラエルの民はエジプトを脱出して3ヶ月後にシナイ山の麓に到着し、しばらくこの地に止まります。
シナイ山の山頂で神がヤコブに言った言葉
「イスラエルの民が神に忠実で、私との約束を守るならば選ばれた特別な民族としよう」
これが神と人類との約束『十戒』でした。
1、他の神を拝んではならない
2、偶像禁止
3、神の名をむやみに唱えない
4、安息日を守ること
5、父母を敬う
6、殺人を犯さない
7、姦淫しない
8、盗みをしない
9、嘘をついてはいけない
10、隣人の持ち物を欲しがらない
ただねレンブラントの描くモーセは十戒を掲げていますが、どこか悲しそうですよね。
実はモーセが十戒を賜ったあと、人々はこの約束を破ります。
レンブランドのモーセは十戒が記された石板を掲げているのではなく、約束を破った民たちに腹をたてて石板を割ろうとしているんです。
一度割られてしまった石板ですが、人類が悔い改めたことで神から許されて、再び十戒を賜ることができました。
旧約聖書で一番成長してるのは神様な気がするw
やっと人類(イスラエルの民)は神と契約を結ぶことができました。
めでたし、めでたし♪
・・・ではないんですけどね(^▽^;)
その後もすったもんだ困った人類の話しは続きますが、ここで一旦旧約聖書のあらすじは終了です。
かなり駆け足でしたけど、なんとなくわかった気になってもらえると嬉しいです♪
旧約聖書と新約聖書の違いを一言でいうと・・・
旧約聖書はイスラエルの民の歴史
新約聖書はイエスを慕う使徒たちの布教の記録
本日は以上です。
最後までおよみいただき、ありがとうございます。
大人の美術館は不定期で開館するweb上の仮想美術館です。
また次のご来館をお待ちしております。
宗教画を読むために、持っていると嬉しい書籍紹介
鑑賞者のための キリスト教美術事典
何かおすすめの書籍はある?と聞かれたら、必ず紹介する1冊です。
宗教画を読むためにあると便利は一冊です。
表紙だけみると、お堅めの本に見えますが・・・・
イラスト満載。オールカラーでイラスト満載でわかりやすいっっ!!
絵のタイトルや説明書きで、わからない単語が出てきた時に、辞書のように “あいうえお” 順に単語から検索できるようになっています。たくさんいる聖人の特徴やアトリビュートも網羅されていて、絵画を読む上で、とても実用的に使える事典です。
聖書に書かれた専門用語を覚えるのが苦手な人
カタカナ名がとにかく苦手という人
これから絵画を勉強したいという人はとりあえず1冊買って損はなしです♪
コメント
( ゚д゚)ウム いがみ合う時もあるけど、根幹の教義はいっしょだったりするもんね。宗教って。
やっとゆっくり読めました~^^
そして、実はこの記事、密かに待ってました( ´艸`)
ビー玉さん、旧約聖書に詳しいですし、読むにつけ気になってて。
全容を簡単に知りたいって思ってたんです☆
「神様と人間が交わした約束」であることすら知らなかった私にも、めちゃくちゃ分かりやすかったです♪
神とはいえ、感情が人間らしくて。いつの時代にも嫉妬や不安が行動を起こす大きな要素なんだと思いました^^;
旧約聖書について、よく分かった~。簡単に分かりやすく書いてくれていて、ありがたかったです。そして、人間って昔から約束を守れないのねー、と思った。