ヨハネス・フェルメールの人気の秘密!半径500mの小さな世界を描いた光の画家

神話、聖書、歴史

こんばんは、ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。

チューリップバブルで沸くオランダのデルフトで生まれ、結婚後もデルフトで暮らし、生まれてから死ぬまでの46年間を半径500mの小さな世界で暮らした画家フェルメール。

オランダの小さな町の小さな世界を描いたにも関わらず、現在の日本で最も集客力ある画家となっています。

なぜ人々はフェルメールに惹かれるのか?

本日はそんなフェルメールの世界にあなたをナビゲートします。

よろしければ最後までお付き合いください。

フェルメールってどんな人?

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)は17世紀のオランダを代表する画家と言われています。

とはいえフェルメールの死後、19世紀に印象派の画家たちが発見するまで、その存在が忘れられていた画家でした。

いまでこそオランダを代表する画家ですが、生前は決して人気画家だったわけではございません。

その人生も謎の部分が多いのです。

フェルメール自身がモデルなのではと言われている絵がありますが、自画像として残っているものは一枚もありません。

画家はモデルを雇えない場合に自分自身を練習台として描くことが多いですが、フェルメールは裕福だったため、モデルに困ることはなかったのでしょう。

プロテスタントからカトリックに改宗

プロテスタント(キリスト教の一派)だったフェルメールは裕福な1つ年上のカタリーナと結婚します。

カタリーナはカトリック(キリスト教の一派)だったので、フェルメールはカトリックに改宗して宗教画を描き始めました。

当時、プロの画家として認められるには宗教画を描く必要があったんです。

ただ、現存する宗教画だとはっきりわかるフェルメールの絵は1枚だけ

フェルメール《アルタとマリアの家のキリスト》1654〜55年ごろ

フェルメールの初期の作品。フェルメールの代名詞ともいえるラピスラズリを使ったウルトラマリンブルーはまだ使われておらず、知らないでみるとフェルメールだとは気づきません。

テーブルクロスに当たった光に、フェルメールらしさが若干感じられるかなぁって感じですよね。

そして、日本にもおそらくフェルメールの作品ではないかといわれている宗教画が1点あります。

ヨハネス・フェルメールに帰属「聖プラクセディス」

帰属というのは、フェルメールの作品かな?そうかな?そうだったらいいなぁ・・という意味です。

国立西洋美術館で常設展示されているこの作品、

本当にフェルメール作品だとするとフェルメールが描いた現存する2枚目の宗教画といういことになり、美術史上の価値は計り知れません。

聖プラクセディスは殉教者の遺体を集めて埋葬した聖女です。なぜ血を集めているのは分かりませんが、キリストの流した血と殉教者の血をリンクさせているのかなと思います。

貴重な1枚なので、お近くの方は見に行ってみてはいかがでしょうか?

 

フェルメールが日常を描くまで

その後、フェルメールは絵が売れることなく裕福な妻の実家に転がり込み、気楽なマスオさんライフを送ることになります。

フェルメールはお金を得るために絵画を描く必要がなくなったんです。

もともと偶像崇拝を禁じていたプロテスタント出身のフェルメールは宗教画を描くことに抵抗があったのかもしれません。

以降、フェルメールが宗教画を描くことはなくなりました。

妻の実家の2階、北向きの部屋がフェルメールのアトリエになります。

午後になると柔らかい光が入るアトリエでたくさんの名画が生まれました。

フェルメール《窓辺で手紙を読む女》1657年

フェルメール《窓辺で手紙を読む女》1657年

2022年、修復を終えて来日予定です。

 

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フェルメールが好んで描いたのは、室内で繰り広げられる女性たちの静かなドラマです。

フェルメール《青衣の女》1633年

その中でも手紙を題材にしたものが多いのは、17世紀のオランダで郵便制度が急速に発達し、女性の識字率も上がり恋を伝える通信主題として大流行したからです。

手紙を読む女性たちの表情に興味があったんでしょうね。

フェルメールのもう一つの特徴である。絵の中に飾られた絵に意味を持たせること!

この青衣の女性の背後には世界地図が描かれています。

それは、手紙を送ってきたのは遠く異国いる恋人か夫からの手紙なのだと見てるものに想像させます。

無限とも思える広い世界から、一室でたたずむ女性が手にする手紙にズームインするような、上手い演出だなと思います。

 

フェルメール《手紙を書く女》1665年

フェルメールは手紙を題材にした作品を多く残していますが、それらのほとんとは手紙に集中している女性たちです。

ここに描かれている女性は覗きにしていた画家に気づいて、少し照れたように微笑みを向けてきています。

そのことから、フェルメールの妻カタリーナではないかと言われています。

ちなみに背後に描かれる絵は劣化で判別が難しのですが、愛を意味する楽器「ビオラ・ダ・ガンバ」

彼女との間には14人もの子どもに恵まれました。

フェルメールブルー

奥さんの実家が裕福だったおかげで、高額な絵の具が使える金銭的余裕もあり、高価なラピスラズリを使った鮮やかで深い青はフェルメールの代名詞となりました。

そんなフェルメールブルーが印象的な作品!

フェルメール《真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)》1665年

 

フェルメールの代表作《真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)》

北のモナリザなんて呼ばれたりして、世界で最も有名な少女ですよね。

日本でも大人気の作品。

彼女が日本に来日したのは私が知る限りでは3度です。

1984年、2000年、2012年

とくに2000年に来日したときの熱狂はすごかった!!

それまでは同じオランダの画家レンブラントのおまけ程度の知名度だったフェルメールが、彼女を広告塔として日本で最も人気の画家に躍り出たんです。

 

館長
館長

レンブラントのバーターで一緒に展示されることが多かったですね

 

宗教色が少ないフェルメールですが、じつは彼の描く絵の中にはたくさんの記号が隠されています。

絵を見るより意味を考えてしまって「難しい」と感じる人もいたかもしれません。

だけど、彼女はただただ美しく魅惑的!

西洋文化や宗教に馴染みのない日本人にも受け入れやすかったんですね。

日本中が彼女に熱狂しました。

今では美術展を開催すると最もお客さんを呼べる画家になりました。

日本のフェルメール人気は真珠の耳飾りをつけた魅惑的な彼女の来日からなんです。

 

このように、女性を描くことに情熱を傾けていたフェルメールです。

現存するフェルメールの絵だと言われる37作品のうちほとんどが室内を描いたもの、風景を描いたもんはたった2枚です。

その2枚の舞台は生まれ育ち生涯を過ごしたデルフトの風景。

 

故郷への想いデルフトの展望

フェルメール《デルフトの展望》1660-61年

空には重い雲がかかっていますが、そんな雲の上には青い空が顔をのぞかせています。

じつはデルフトは、1654年10月に街の大半が壊滅するほど大事故に見舞われいるんです。

死者1000人以上!火薬庫が爆発したことが原因です。

フェルメールの描くデルフトの風景は、そんなデルフトがやっと平和な日常を取り戻しつつある姿。

西洋絵画は左から右に時間が流れます。

フェルメールの《デルフトの展望》は右にいくにしたがって夜が明けるように明るくなってきます。

火薬庫の爆発という嵐(災害)のあとの街の復興を願って描かれたものなんでしょうね。

感情を抑えたフェルメールの絵の中で、もっとも感情的だなと思えるのが、この風景画です。

フェルメールの絵が世界中の人々を魅了するわけ

フェルメールが生きたのは宗教画の全盛期であったバロック時代

ただ、オランダは商業が盛んで教会よりも裕福な商売人が画家のパトロンでした。

彼らは教会ではなく、自宅の壁を飾る絵を好みました。

なので、オランダではフェルメールだけなく日常を描いた画家は多かったし、フェルメールよりも人気のある画家はたくさんいました。

なぜフェルメールだけが歴史に大きな名を残し。これほど日本でウケたんだろう?って思うんですよね。

 

フェルメールの晩年、オランダの経済はバブルが弾けて、フェルメールの死後には生活ために絵は売られて各地に拡散します。

ドイツに6点、アメリカに12点、その他フランス、スコットランド、マウリッツハイスなど、7カ国13都市に分散され、オランダにはわずか7点が残るのみです。

文化も生活様式も違うのに世界中がフェルメールに熱狂するのは、フェルメールの絵が感情が控えめだからなんだろうなって思うんですよ。

人々はフェルメールの描く女性たちの感情を読もうと想像にふけったり、自分の感情を反映させたりして、描かれた女性たちをより身近に感じるよになるんじゃないかなと(((uдu*)ゥンゥン

それはもう、時代や文化を超えた「普遍」です。

フェルメールの生きる時代には物足りなかったであろう絵も、時代を超えて普遍性を手に入れたっていうのは、少し皮肉な話しですけどね。

本日は以上です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

館長
館長

またのご来館をおまちしております

 

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誰も語らなかった フェルメールと日本

フェルメールの光とラ・トゥールの焔: 「闇」の西洋絵画史 (小学館101ビジュアル新書)

 

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コメント

  1. 好きな事だけで生きていける人生かぁ…。というか、裕福なのに500m四方で満足なんですな。(* ̄- ̄)ふ~ん

  2. ヨウコの川歩き より:

    フェルメール、私も好きです。「真珠の耳飾りの少女」が来た時は美術館に通いました。何故かな?多分「詩」を感じるからじゃないかな。

  3. marimo より:

    500m圏内で過ごして、これだけの幸せを得る、ってほかの画家には無い生き方ですね。
    それが絵の静かさ(穏やかさ)にも表れているのかも~^^

  4. Nick Ollie より:

    裕福で好きな絵に没頭できて、、、 だからなのか、穏やかな絵が多いですよね。
    西洋美術館にフェルメール帰属の絵があるのは知りませんでした。最近しばらく行ってないしなー。コロナが落ち着いたら、また上野の美術館に行きたい!

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