娼婦の歴史!名画に描かれた華麗なる娼婦世界。神聖娼婦〜高級娼婦まで

美術史

こんばんは!ビー玉です。

今宵は、【大人の美術館】へようこそ・・・

 

本日は・・・人類最古と言われる職業「娼婦」の世界にあなたをナビゲートします。

古代は神に仕える巫女(神聖娼婦)として・・・駆け上ることができれば貧しい娘が王侯貴族なみの生活が可能だっという職業!

お時間よろしければ最後までゆっくりご観覧ください!

 

こちらの記事は動画でもお楽しみいただけます。

売春が義務化?

今は卑しい商売とされる売春ですが、売春が卑しいとされたのは少なからずキリスト教の影響があります。キリスト教伝来以前は人口=国力という時代があり、神殿で行われる神聖な儀式として売春が行われていたんです。

女性は一生に一度、神聖な神殿で性的行為を行う義務が課せられていたそうです。男性は豊穣の女神に貢物をし、女性たちはその男性に奉仕することで神の加護を願いました。

貧しい娘も王の娘も神の前では平等でしたが、時代が進むとその義務はなくなり、接待専門の巫女が誕生しました。

神聖娼婦の誕生

その巫女たちは、供物を持ってくる男性と交わることで、彼らに霊感を与えていたと言われています。

人類最古と言われる古代メソポタミアの「ギルガメッシュ叙事詩」にも神聖娼婦と交わって動物並みに知能しかなかった主人公の親友が理性的な人格を賜っという記述があります。古代売春婦は神聖なものという見方もあったのです!

豊穣の女神イシュタル (出典:ウィキペディア

私はこの神聖娼婦が売春業の始まりだと思っているんですが、何しろ古い職業なので、もっともっと前に起源があるかもしれません。

西暦79年に火山の噴火によって滅びたポンペイの遺跡からは、娼館に飾られていたであろう、ヤバめな壁画がたくさん残っています!

遠い過去から現代まで、いや、おそらくずっと未来まで、この職業は途切れることなく存在するんだと思います。

雑誌アート

娼婦のヒエラルキー

まぁ、時代によっても違うのですが娼婦の中にもランクというものがあります。

公妾・・身分の高い男性(主に国王)の公式な愛人
高級娼婦・・・お金持ちのための娼婦。料金は激高い!!
公娼・・・政府に認められた娼婦。性病などの検査が義務付けられていた。
私娼・・・街に立つ落ちぶれ感のある “もぐり” の娼婦。

美しき公妾の世界

公妾とは、側室制度が許されていなかったキリスト教系の王族が妻の他に社交界に公表できた愛人です。本当のところは娼婦ではないんですが、高級娼婦から、公妾に成り上がった女性が少なくはなかったのです。

公妾になるのに身分は問われませんが、社交界に顔をだすので、周りを納得させられるほどの美貌、教養、エスプリ(気の利いた会話)が最低限必要でした。

絵画的に有名な公妾の方々は、こちらです・・

アニエス・ソレル (フランス国王・シャルル7世の公妾)

【作 者】ジャン・フーケ(Jean Fouquet)
【作品名】ムランの聖母子像( Madonna Surrounded by Seraphim and Cherubim
【年 代】1452年頃
【種 類】パネル、油彩
【寸 法】113 × 104 cm
【所 蔵】アントワープ王立美術館(Koninklijk Museum voor Schone Kunsten van Antwerpen)/ベルギー

今まで男性だけが見つけていた宝石を初めて身につけた女性と言われています。画家ジャン・フーケが描いたソレルをモデルとして描いた「ムランの聖母子像」が有名です。サイボーグような聖母の体と青と赤の天使の色彩の対比が現代アートじみてかっこいいなぁ・・って思うですけどね(^▽^;) ちょっと気持ち悪いですか?すいませ〜んw

雑誌アート

ディアーヌ・ド・ポワチエ (フランス王・アンリ2世の公妾)

【作 者】フォンテーヌブロー派
【作品名】狩のディアナ(Diane chasseresse)
【年 代】16世紀中頃
【種 類】カンヴァス、油彩
【寸 法】191×132cm
【所 蔵】ルーブル美術館(Musée du Louvre)/フランス

元祖美魔女( ✧Д✧) カッ!! ディアーヌをモデルにこの絵が描かれたのはディアーヌが50歳後半の頃!現在とは違って化粧品が発達していない時代に信じられない美貌を保っていらっしゃるΣ(・□・;)

衰えることがないと賞された美貌で、20歳も年下の国王を生涯魅了し続けた女性です。

ちなみに狩の女神ディアナはギリシャ神話にでてくる月と狩猟の処女神です。

アトリビュートは三日月の髪飾りと弓矢、矢筒、狩猟犬。

中性的な肢体で描かれるのが特徴です。

実際のディアナはアンリ2世が自慢して寵臣たちに見せびらかしていた言われるほどの美乳だったそうです(*/▽\*)

ポンパドゥール夫人 (フランス王・ルイ15世の公妾)

【作 者】フランソワ・ブーシェ(François Boucher)
【作品名】ポンパドール夫人(Madame de Pompadour)
【年 代】1756年
【種 類】カンヴァス、油彩
【寸 法】212×164cm
【所 蔵】アルテ・ピナコテーク美術館(Alte Pinakothek)/ドイツ

優雅なロココ文化の礎となった女性です。裕福な平民出身。幼少の頃に「王妃になる」という占いを受け、戦略的に国王に近づき公妾の地位を手に入れたやり手の女性です。

公妾になってからはその知性でもって「ベッドの中から国を動かした」と言われるほどの手腕を発揮しました。

ブージェの描く夫人の肖像画も知性を表す「本」がさりげなく配置され、少々計算高さを感じますw

そんな彼女の得意技は・・・”ア・ラ・ポンパドゥール”

ざっくり言うと、豊満な胸をお持ちの方しか発揮できない男性を喜ばすための秘儀。彼女の名前は、そんなフランスの隠語にもなっています(ノ∀`)タハー

 

館長
館長

新年早々に下品ですよっ!!

すませんm(_ _)m 女性の前髪を膨らませる “ポンパドール” という髪型も彼女の名前が由来です。

あかん・・胸よりになってきたので、項目を変更します_| ̄|○

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敷居が高い高級娼婦

高級娼婦とは、ざっくばらんにいうと、お金持ちのための娼婦です。

娼婦の世界には、政府から許可を受けている公娼と、そうでない私娼がいるのですが、「公娼」「私娼」を経験した者は決して高級娼婦にはなれません。いわゆる「汚れ」がつくとスタート地点にも立てない職業だったのです。

高級娼婦は政府から許可を得るわけでもない “モグリ” の娼婦ですが、同じ “モグリ” でも街に立つ私娼とは一線を画す存在で、必要なのは “美貌” と “エスプリ” です。

中流か下流出身で向上心が強く容姿と恵まれた女性は、下手な男性と結婚するよりも高級娼婦を目指したいと思っていたようです。

彼女たちがいかにして知性を磨いていくのかといえば、まずはお針子などの職業夫人になり、それからダンサーや女優に挑戦し、パトロンになる男性を探します。

そのパトロンから上流社会の作法を学び、どんどんハイスペックなパトロンに鞍替えしていくというのがセオリーです!

【作 者】エドゥアール・マネ(Édouard Manet)
【作品名】ナナ(Nana)
【年 代】1877年
【種 類】カンヴァス、油彩
【寸 法】154×115cm
【所 蔵】ハンブルク市立美術館(Hamburger Kunsthalle)/ドイツ

マネ作 「ナナ」

一見可愛らしい絵に見えますが、彼女は下着姿です。下着姿の女性と同じ部屋にいることを許されている紳士は彼女のパトロンなのです。刺繍の入ったストッキング、豪華な調度品、高価な下着・・全ては彼女が高級娼婦であることを物語っています。

ちなみに背後に飾られた鶴の絵は、当時の隠語で娼婦を示しています。

雑誌アート

女性が自由になれた職業

高級娼婦になれば、女性は男性を選ぶこともできましたし、貴族さながらの豪奢な生活も思いのままでした。今で言うと売れっ子の芸能人のような立場だったんでしょうね!

パトロンとの出会いの場は、女優やダンサーは舞台上で見初めてもらうのを待ちますが、そうでない場合は観客席も出会いの場となりました!

【作 者】ピエール・オービュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)
【作品名】桟敷席にて
【年 代】1877年
【種 類】カンヴァス、油彩
【寸 法】80 cm × 63.5 cm
【所 蔵】コートールド・ギャラリー (Courtauld Gallery) /イギリス

こちらに微笑みかているのは白い胸が眩しい素敵な女性ですが、背後の男性はどこを見ているんでしょうね・・明らかに舞台ではないですね(^▽^;)

そう、彼が見ているのは観客席です!女性を品定めしているのです。

だけど女性も舞台は見ていません。パトロンになりそな男性に向けて優雅に微笑みかけているのかもしれません(ノ∀`)タハー

ドラマ性を感じる庶民的(?)な娼婦たち

貴族出身でありながら、娼館を愛し、娼婦と一緒に生活することで自然な娼婦の姿を描き出したのがロートレックです。

【作 者】アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec)
【作品名】ムーラン街 検診(Rue De Moulins: The Medical Inspection)
【年 代】1894年
【種 類】カンヴァス、油絵
【寸 法】82 x 60 cm
【所 蔵】ワシントン・ナショナル・ギャラリー(National Gallery of Art)/アメリカ

当時公娼たちが義務付けられていた医師による検査。

窓の外は世間。赤いカーテンはこちらが虚構の世界だと物語っているよううです。

正直美しくはない娼婦たちの体と顔。虚構の世界のリアルな一面です。

【作 者】アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec)
【作品名】2人の女友達
【年 代】1894年
【種 類】カンヴァス、油彩
【寸 法】48 x 34.5 cm
【所 蔵】トゥールーズ=ロートレック美術館(Musée Toulouse-Lautrec)

ロートレック作 「二人の女友達」 1894年

微笑みあって、しばしの休息でしょうか・・どんなドラマがあって二人はここにいるのか・・ものすごく気になってしまう作品です。女性の太ももの白さが叙情的です。

こんな飾らない娼婦の姿を見ると、ついつい彼女たちの人生に思いを馳せてしまします。

身体的に大きなコンプレックス抱いていたロートレックは、社会のマイノリティーである娼婦に共感を持ち、愛を持って娼婦たちを描きました。ロートレックの描く娼婦たちはシニカルですが深い愛情と人間性を感じます。

 

えっと、ドラマチックなのは春を売る女性ただけはありません・・・・

買う方にもドラマは生まれます。

 

性と死が交錯する・・

【作 者】アンリ・ジェルヴェックス
【作品名】ローラ(Rolla)
【年 代】1878年
【種 類】カンヴァス、油彩
【寸 法】173 x 220 cm
【所 蔵】ボルドー美術館(Musée des beaux-arts de Bordeaux)/フランス

ローラというのは窓辺に佇む男性の名前です。

シーツの乱れをみると事後であることがわかり、非常にエロティックな情景を作り上げています。

ローラは昨夜床を共にした娼婦を満足げに眺めているのでしょうか?昨夜のことを思い出してほくそ笑んでいるのでしょうか?表情はよみとれません。

この女性の部屋から見える風景は高い位置にあり、屋根裏に部屋(職場?)を持つ女性は決して高級な娼婦でないことを物語っています。それでもローラには精一杯だったのです。

ローラは借金で首が回らなくなり、お気に入りの娼婦と一晩過ごすために、全財産を投げ打ちました!!そして、このあと窓から飛び降りるんです。

無防備に横たわる女性の、強烈な官能性と最後の営みを名残遅しそうに眺めるローラ、この性と死の対比は、これから訪れる悲劇をドラマチックに演出しています・・・

娼婦を語ると、どうしても暗い一面も見えてきちゃいますね・・

本日は以上です。

本当に幅広い娼婦という職業はいかがだったでしょうか?人類最古にして、おそらくなくなることはない職業なんだと思います(。-`ω´-)

少し駆け足ではございましたが、娼婦を通じて美術史を見てまりました。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

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コメント

  1. aiai より:

    衝撃のポンパドール!!
    昔よくやった!
    もちろん、髪型のほうね(〃ω〃)
    そうじゃないほうはできないし…とかいらない?w
    今でも時々家で前髪邪魔だとポンパドールするけど、もうなんかいろいろ考えちゃってやりづらいよね。
    evaしか見てないけど(*;´□`)ゞ

    • ビー玉 より:

      aiaiちゃん、コメントありがとう♪
      セキララな告白ありがとう(^人^)
      いや〜私もしたことないけどねw あ!髪型の方は私もよくやった!!なかんかふんわりできずに朝からイラっとしたりした+.d(・∀・*)♪゚+.゚
      evaちゃんは可愛いから、そりゃぁ釘付けになるわ+.d(・∀・*)♪゚+.゚ 私は今朝はちゃとら猫がベットごと頭の上に落ちてきてめが冷めた(; ・`д・´)
      すごい目ざまし機能w

  2. ash より:

    昔の女性の成り上がりに娼婦はまさに「これしかない」って職業。
    日本の花魁や夜鷹は知ってましたが(それもマンガで)、海の向こうもでしたか…。いや、世界中きっとそうなんでしょう。
    裏切ったり裏切られたり嫉妬がからんで喧嘩したり病気になったり、さぞ大変だったでしょうね。
    キレイでいて、会話もできてでもつつましやかでいながらエロくて、そっちの技術も磨いて…。短くても濃い人生✨。

    • ビー玉 より:

      ashさん、コメントありがとう♪
      私、どっちかっていると日本の花魁とか吉原とかのが詳しいんですよ(^▽^;) いや〜知識の元は漫画とか映画ですけどね〜(^▽^;) 人間って海を越えると文化や考え方って激変するけど、本質的なものってどこへ行っても変わらないんでしょうねぇ(((uдu*)ゥンゥン キレイで会話も上手くてエロくて床上手・・・私には何一つない(ノД`)シクシク どこで間違えた〜〜〜〜_| ̄|○

  3. ヨウコの川歩き より:

    ふ~凄いね、流石ビー玉さん!読ませますね(*´ー`*)
    男の歴史の裏に女あり。娼婦…と切り捨てるにはドラマありすぎ。思えば彼女たちは様々な姿で文学や絵画に登場し存在感を放ちますね。人間のどうにもあらがえない性を時に切なく、時に手玉にとって泳ぎきる姿には惹かれますね。

    • ビー玉 より:

      ヨウコさん、コメントありがとうございます٩( ᐛ )و
      お褒めのお言葉ありがとうございます。励みになります!!娼婦関連は昔に調べていたことがあったので、実はけっこう詳しいんですよ( ̄∇ ̄)v エッヘン
      芸術の陰に娼婦ありってことで、モデルと娼婦の境目があやふやだった時代もありましたし、いろんなドラマがあります(((uдu*)ゥンゥン 、時代をしたたかに乗り切った女性にかっこいいなぁって思います+.d(・∀・*)♪゚+.゚ やっぱり生き物として性は切り離せませんもんね!!

  4. Nick Ollie より:

    いやー、こういうお話、大好き~。そうか、娼婦にもこんなにランクがあるのね。

    そして、因みに私もア・ラ・ポンパなんちゃら、はできませーん。とここで暴露することではないけど、暴露してみた。

    • ビー玉 より:

      Nickちゃん、コメントありがとう♪
      なぜみんなここで暴露していくだ〜〜〜!!私もしないといけなくなるやん(ノД`)シクシク ええ!できませんとも_| ̄|○ 大人しく普通に主婦をやっております(^▽^;)

  5. pope より:

    さすが姉さん、よう知ってまんなぁ・・・それしてもアニエス・ソレル、サイボーグww怖いわ!
    地位と権力、そして名誉を手にした後はいい女!ということなのかも・・・その手に入れた女が
    ベッドで政治とか行事に口を出したり、あるいはそれに耳を貸すようなことがあったであろうと考えると
    恐ろしいww
    まあ批判する気はないですがこういうところにもキリスト教というのがちらちら顔を出すというのもアレなんですがねぇ・・・
    光と影、の影の部分ですが、その中にもいろいろがある、と教えてくれる絵画ですよねー。
    そんなことを考えながらいろんな絵を見るのは楽しいと思うし、それなりの時間がかかりますなぁ。
    美術館、というと敷居が高い!というイメージでしたが、姉さんのおかげで今まで以上に興味を持てるようになってきましたよ!

    • ビー玉 より:

      pope兄さん、コメントありがとう♪
      (ΦωΦ)フフフ…よう知ってるでしょうw この手の知識は深いんよ( ̄∇ ̄)v ドヤッ! トロフィー女房っていうんでしたっけ?芸能人とかいい女を連れて歩くことに喜びを感じる人が権力者には多いんですよねぇ(((uдu*)ゥンゥン たぶん、腕時計とか車とかと同じ感覚だと思うけど、鬼も蛇もたくさんいる世界でしたたかに生き抜いてステップアップしていく女性はかっこいいなと(^▽^;) 自分ではできない分ね、そんなことを思ったり・・・そりゃぁサイボーグにもなりますって(^▽^;) キリスト教の光と陰・・いいですね( *• ̀ω•́ )b グッかっこいい!! 美術好きな人に今まで以上といってもらえると嬉しいですよ♪どんどん奥さんとデートしちゃってください(≧∇≦)

  6. はちこ より:

    イシュタルだ~!
    はちこったら、何気なくFGOってゲームをやってたんだけど
    そこにイシュタルが登場するから、何となく親近感。

    ローラ…そこまで入れ込んでしまったとは

    • ビー玉 より:

      はちこちゃん、コメントありがとう♪
      ははは・・ゲームのキャラクターって神話からとったものって多いですよね〜♪
      イシュタル、なかなか好色なキャラクターみたいですよぉ〜(≧∇≦) 親近感(ΦωΦ)フフフ… ←セクハラです
      ローラももうちょっと考えないとね(^▽^;)

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