サルバドール・ダリが愛したガラは悪女だったのか、それとも聖女?

20世紀美術

こんばんは!大人の美術館ナビゲータのビー玉です。

サルバドール・ダリと聞いて、あなたはどんなイメージを思い描きますか?

変な髭の変な人?

年上女房の尻に敷かれ続けた人?

“曲がった時計”の人とか、絵に詳しい人なら20世紀最大のシュルレアリスムの画家って答える人もいるかもしれません。

本日は、生を受けてから死ぬまで 、生涯 “サルバドール・ダリ” を演じ続けた男の人生にナビゲートします。彼が愛したガラはいったいどんな女性だったのか?

日本で見られるダリの作品もまとめています♪

よろしければ、最後までお付き合いくださいm(_ _)m

画家「サルバドール・ダリ」ができるまで

 

亡き兄とお同じ名前

本名はサルバドール・フェリペ・ハシント・ダリ。

1904年、スペインのカタルーニャ地方の小都市「フィゲラス」に生まれました。

父は弁護士でフィゲラスの交渉人を担っていたエリート。

ダリには彼が生まれる9ヶ月前に胃腸炎で亡くなった兄がいて、兄の人生を背負わされるように、兄と同じ「サルバドール」という名前を付けられたんです。

そのことを聞かされたダリは自分は兄の身代わりだという意識に囚われていたようで、自分がすでに死んでいて、朽ち果てていくという幻影に恐怖していたんです。

雑誌アート

幼少時のトラウマ

教育の一貫だと思うのですが、教育熱心だった父から梅毒に罹患した患者の写真を見せられて以来、繊細だったダリ少年の心に性的恐怖が強烈に焼き付きます( •ὢ•)

 

ビー玉
ビー玉

行き過ぎた性教育_| ̄|○

「兄の死」と「性的恐怖」はダリの人生に大きく関わってくることになります。

母を追い求める心

情緒が少々不安定だったダリを徹底的に甘やかしたのはダリの母です。

ダリが望むものはなんでも与え、ダリを無条件に可愛がりました。

そんな母もダリが17歳の時にガンで亡くなり、以降ダリは無条件に愛してくれた母の面影を求め続けることになります。

ダリ作『小さな遺骸』1928年

ダリ21歳のときの作品です。ダリの心象風景・・・溶けていく体、バラバラに解体された鳥や魚、父や女性へのコンプレックスや恐怖が色濃く現れています。

性的恐怖から、ほとんど女性と関わらずに生きてきたダリは25歳の時に、運命の女神と出会います。

友人で詩人のエリュアールとその妻ガラ。

ダリはガラと一緒にいると、緊張のあまりしゃっくりと謎の爆笑という発作に襲われます。

館長
館長

爆笑?

ガラは奇妙な発作に襲われれるダリの手をとり、優しく微笑むのです。

ビー玉
ビー玉

恋の予感・・

 

「何をして欲しい?」「私を殺して」

ガラはダリよりも10歳も年上だけど!

それよりなにより、友達の奥さんだけど!

盲信的に夢中になります。

散歩中、ダリはガラに「僕に何をして欲しい」と尋ねます。

ガラは「私を殺して」と答えるんですよ∑( ̄□ ̄;)ナント!!

この瞬間にダリを恐怖で支配してた「死」と「性」が甘美なものへと “一変”したんです!

なんとも色っぽい逸話だ(;//́Д/̀/)カーッ

ダリ作『大自慰者』1929年

下を向く巨大な顔はダリの精神的な自画像です。ダリが嫌悪していたイナゴと向き合っています。

だけど、頬に高揚がみられます。

その斜め上では男性の股間に口を近づけているガラ・・・

性への嫌悪と憧れ、その葛藤がテーマだと言われていますが、個人的には欲望が勝ってる気がします。

精神的な自画像が、嫌悪するイナゴと対峙していながら、なんとなく幸福そうではないですか(゚∇゚ ; )

現実から目を閉ざし、ガラとの幸福な妄想に身を委ねているように見えます。

 

 

ガラとの結婚

その後、ガラは夫と離婚して、ダリと結婚します。

可哀想なのは元夫のエリュアールだと思うんですが・・・・

もともと、ガラは別の恋人と夫と共同生活をしていたような性に奔放すぎる女性。

そんなガラと結婚していた夫エリュアールも性に関しては自由な発想の持ち主だったようで、そこにはすでに新しい恋人がいて、ダリとの友情はなにも変わらなかったらしい・・

それどころか、エリュアールは別れた元妻ガラに大量のラブレターを送っていたようです。

 

ビー玉
ビー玉

カオス過ぎてwww

館長
館長

初めての女性としては、ハードルが高過ぎませんか?

実は、そんなガラは典型的な「才能を愛する女」

前の結婚中も、ダリとの結婚中に付き合った男性も、みんな芸術家です。

若い芸術家を育てあげるのが好きだったみたいですよ。

ガラは若き天才ダリの半身として、恋人であり母であり名プロデューサーでもあったのです。

ガラの手腕により「奇才サルバドール・ダリ」が作りあげられていきます。

「サルバドール・ダリ」という人気画家は二人で一人だったのです。少なくともダリはそう思っていました。

雑誌アート

 

↓もう1人の才能を愛する女

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シュルレアリスムってなに?

ガラと結婚してからのダリは代表作を次々に発表します。

ダリ作『記憶の固執』1931年

グニャリと曲がる時計は「溶けるカマンベールチーズ」を見てインスピレーションを得たんだとか!

この曲がった時計のモチーフはダリの代名詞となり、シュルレアリスムの寵児だともてはやされていきます。

シュルレアリスムとは
1924年に詩人アンドレ・ブルトンが起こした芸術運動です。
日本語で「超現実主義」
夢や幻想に着目し、目に見える現実と見えない現実との矛盾をつきつめることを目的としました。
要するに、フロイト的に深層心理を露出させていくぞー(๑•̀ㅂ•́)و✧ という芸術運動。幻想的で不思議な作品多し( ✧Д✧) カッ!!そんなわけで、ダリの作品はダリの深層心理を描いているのです。

ダリの深層心理

ダリは異性恐怖症でした。

完全に不能だったかどうかはわかりませんが、異性との性交は精神的な苦痛を伴なうものだったのではないかと思います。まぁざっくりいえば、ガラと出会う前のダリはEDだったと(。-`ω´-)

硬いはずのものが柔らかいというのは、まぁそういう状態です。

そんな過去の自分を夢想しているのかな・・その時の不安な記憶がガラと結婚したあとも支配していたのかも・・って思うんですよね。

のちのちガラに浮気されまくっても、ダリはガラを盲信的に愛し続けます。

まるで、世界にガラしかいないように・・・

ガラに捨てられたら生きてく術を失う幼児のように・・

 

ダリという仮面

ダリは、繊細な自分を守るようにガラが作った「奇才サルバドール・ダリ」の仮面を被っていました。ガラを失うということは、自分を失うことと同義語です。

だけど、別れはやってきます・・・

奇行の目立つ変わった画家としてメディアで人気者になっていくんですが、それと反比例するようにガラの気持ちがダリから離れていきます。

ガラよりも40歳も若い画家に入れあげて、ダリとは完全別居。

ダリはガラの許可なく逢いに行くことさえ禁じられていました。

ダリ作『ポルト・リガトの聖母』1950年 福岡市美術館で観られます

 

母親とは別れられない

ダリの描くガラが神格化しはじめるのがこの頃から・・・

自分から離れていくガラを人間の手の届かない女性として描いて、寂しさを紛らわせていたんでしょうか・・・

恋人や妻だったら別れればいいと思うんですが、ガラはダリにとって母親でもあったので、ガラに恋人ができようと、別れることはできません。

そんな母親役にガラも疲れてしまったのかもしれませんけどね・・恋愛体質っぽいし

 

ダリ作『背後からガラを描く背後からみたダリ』1972ー1973年

もう自分の方を見ようともしない妻を恐怖の面持ちで描く画家の表情が切ないんだわ(´-ω-`)

ひな鳥が初めてみたものを親鳥と思うという「刷り込み」のごとくガラに依存し、ガラが88歳で亡くなったときに、78歳だったダリは棺にすがって号泣したといいます。

「母親よりも、父親よりも、ピカソより、それどころかお金よりもガラを愛している」

遺言では「自分が死んだらガラの隣に埋葬して欲しい」なんて、言っていたんですが・・・・

なぜ埋葬場所を変更したのか

実際はダリの死の数ヶ月前に「ダリ劇場美術館の下に埋葬してほしい」と埋葬場所を変更しました。

ダリ劇場美術館とは、ガラの心が離れたあと、ガラとの共通の夢であった「ダリの美術館」をダリが一人で建設したものです。

そこにはダリが愛したガラをモデルにした作品がたくさん収蔵されているわけですよ!

ダリにとって「本当に愛するガラ」は心が離れてしまったガラではなく、理想の存在として絵の中にいたんです。

ダリは、けっして変わることのないダリにとっての理想の聖女ガラと一緒に、故郷スペインのダリ劇場美術館で永遠の眠りについています。

ダリは望み通り永遠にガラに抱かれて眠っているのです。

雑誌アート

日本で見られるダリ作品

岡崎市美術館

主な所蔵作品:ダリの太陽、パリスの審判

鹿児島市美術館

主な所蔵作品:三角形の時間

豊田市美術館

主な所蔵作品:皿のない二つの目玉焼きを背に乗せ、ポルトガルパンのかけらを犯そうとしている平凡なフランスパン

長崎県美術館

主な所蔵作品:海の皮膚を引きあげるヘラクレスがクピドをめざめさせようとするヴィーナスにもう少し待って欲しいと頼む、ガラのニュートン

広島県立美術館

主な所蔵作品:ヴィーナスの夢

福岡市美術館

主な所蔵作品:ポルトリガトの聖母

ポーラ美術館

主な所蔵作品:姿の見えない眠る人・馬・獅子、哲学者の錬金術

横浜美術館

主な所蔵作品:ガラの測地学的肖像、幻想的風景、バラの頭の女性

 

\\ ✨ 動く大人の美術館です ✨ //


 

本日は以上です。お読みいただき、ありがとうございます。

大人の美術館は週末の夜中にオープンする大人の為の仮想美術館です。

また来週お会いいたしましょう(*ˊᵕˋ*)੭

 

コメント

  1. marimo より:

    ダリに一時期ハマったmarimoです^^
    硬いはずのものが柔らかいあの絵に惹かれて…
    もちろん、意味など知る由もなかったですが^^;

    やっぱり「無名を育てたい」欲求は、有名になっちゃうとダメなんですね。
    有名になることは名誉なはずなのに悲しい、、、

  2. aiai より:

    数年前、バルセロナに旅行に行った際、フィゲラス行ってきましたよ!
    ダリが好きだったわけではないけれど、芸術に超うといわたしでも知ってる人ですからね~
    芸術家の恋愛って、いつもとってもドラマティックだけど、どこから情報が漏れてるんだろう?って思う( *´艸`)
    書き残しちゃってるのかな。
    恋愛体質ではないわたしは、「人生=恋愛ではないよ」と言いたいのに、芸術にはいつも恋愛がついてまわりますよね。
    ガラがダリに「わたしを殺して」と言ったとき、ホントに殺してしまうようなサイコパス野郎だったらどうするんだろう。
    それならそれでいいと、ガラはその瞬間思っていたんだろうか。
    恋愛って怖い。。。

  3. 画家を知ると、また、絵の見方が変わってきますなぁ…。( ゚д゚)ウム

  4. Nick Ollie より:

    それで固い時計が柔らかいのか。そんな背景があったのね。盲目的な愛というか、盲信というか。

    画家にくっつく女性はなんだか奔放な人が多い気がする。

    昔、横浜でダリ展があって、この柔らかい時計、見てきましたよ。っても15年か20年くらい前の話だけど。そのときにダリのこんな背景をもっと知ってれば見方も変わってきてただろうな。

    それにしてもハンサム。

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