共鳴する魂。名画で感じる音楽鑑賞「展覧会の絵」から「第九」まで

豆知識

こんばんは、大人の美術館ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。

2022年最初の大人の美術館です。

本日は少し趣向をかえて、音楽鑑賞をいたしましょう。

絵画は目から脳を喜ばせる芸術

音楽は耳から脳を喜ばせる芸術ってことで、同じ君主に仕える同志のようなもの。

音楽を聴いて触発されて描かれた名画もありますし、逆に絵画からインスピレーションを得て生まれた音楽もあります。

本日はそんな相乗効果で生まれた音楽をいつくか紹介します。

よろしければ、耳と目で楽しんでもらえると嬉しいです。

ムソルグスキー『展覧会の絵』

 

オペラルスランとリュドミラの舞台デザイン
展覧会の絵 第2楽章 『プラムナード』+『古城』

ロシアの作曲家ムソルグスキーの「展覧会の絵」

ムソルグスキーの友人で建築家で画家でもあったアレクサンドロヴィチ・ハルトマンが39歳という若さで亡くなり、彼の遺作展が開催されたんです。

約400点にものぼるハルトマンの絵に刺激を受けて作曲されたのが「展覧会の絵」なんです。

ムソルグスキーが刺激を受けたという絵を見てみましょう。

バレエ《トリブィ》のための衣裳デザイン
展覧会の絵 第四楽章『プラムナード』+『卵の殻をつけた雛の踊り』

 

館長
館長

踊りにくそうな衣装ですね

キエフ市の門の設計図
展覧会の絵 第10楽章『キエフの大門』

貧しきユダヤ人
展覧会の絵 第6楽章「サムエル・ゴリジェンベルクとシュムィレ」(シュムィレ)

 

富めるユダヤ人
展覧会の絵 第6楽章「サムエル・ゴリジェンベルクとシュムィレ」(サムエル・ゴリジェンベルク)

 

ムソルグスキーさんはこの絵のどこにそれほど惹かれたんだろう?

と、不届き者の私は思ってしまうんですけどね(  ˙-˙  )

ハルトマンの描く絵はロシア人の “郷愁” を強烈に呼び覚ますような作風だったようですよ。

たしかにノスタルジックな感じがひしひし伝わります。

ハルトマンは伝統的なロシアを描いた最初の画家だと言われています。

10楽章からなるピアノ曲、楽章が絵を表現していて、それをつなぐ間奏曲プロムナードは展覧会で絵から絵を歩くムソルグスキー自身の姿を表現しているんだとか

プロムナードの部分を書いてみました。楽譜が読める人はピンとくるかな。(間違ってるかもだけどw)

このプロムナードのモチーフはCMに多用されているので、聴いたことがある人がほどんどだと思います。

繰り返されるこのフレーズはムソルグスキーの歩調です。早くなったり遅くなってり感情を絵を見て回る様子が表現さています。

「展覧会の絵」は元々はピアノだけの曲で地味で目立たない作品でしたが、後世の作曲家ラヴェルによって管弦楽に編曲されてブームとなりました。

世の中で知られているのは管弦楽の「展覧会の絵」です。

私はムソルグスキーがトコトコと歩く感じのピアノ曲も可愛らしくて好きですけどね(*´꒳`*)

原曲はWikipedia「展覧会の絵」の項目に収納されているので、興味がある方は聴いてみてはいかがでしょうか?

第1章でトボトボと元気なく歩いていたムソルグスキーが第10章になると小走りになり最後は友の死を悼みながらも大手を振って元気よく歩いて展覧会を去る感じがしてジーンときます。

ちなみに最終楽章(管弦楽のほう)は「ナニコレ珍百景」に使われていたので、うっかり珍百景を思い浮かべちゃう人も多いと思いますけどね(≧∇≦)

 

 

ドビュッシー作曲「喜びの島」

ジャン・アントワーヌ・ヴァトー 『シテール島の巡礼』 1717年

シテール島とはギリシャのエーゲ海に浮かぶキティラ島のことです。

シテール島は海で生まれたヴィーナスが流れ着いた島だと言われており、ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」でも描かれています。

 

ヴァトーの「シテール島の巡礼」には恋人たちがたくさん描かれています。

なぜなら、このシテール島はヴィーナスを信仰しており、カップルで訪れると幸せになり、一人身で訪れると伴侶が見つかるという、いわゆる縁結びの島だから!

全員カップルになっているところを見ると、巡礼帰りかもしれません。

絵の右端には愛の女神ビーナスが恋人たちを見守ります

この絵に影響を受けて作られたのがドビュッシーの「喜びの島」

光り輝く丸い球がコロコロと転がっていくような美しい曲です。

ドビュッシーは2人の前妻が自殺未遂という泥沼離婚劇の最中、新しい愛人エンマ・バルダックと逃避行した島をヴァトーの描く「シテール島」に重ねて、この美しい曲を作ったんです。

ほんと、芸術家って人格と作品って反比例するんじゃないだろうか

ゲスい野郎ほど良いものを後世に残すってねぇ( ๑º言º)

 

館長
館長

言葉使いが荒くなってますよ!

 

2009年にドラマ化され、空前のクラシックブームを巻き起こしたマンガ「のだめカンタービレ」8巻154Pにも「喜びの島」は登場します。

 

「恋しちゃってルンルンな曲」

ルンルンな時は相手の欠点なんて見えなくなって、どんなゲス野郎だってかっこよく見える。

まぁ、そんな感じの曲

なにを隠そう、超絶ゲスい野郎だとわかっていながらも私は作曲家の中でドビュッシーが一番好きです。

そう、恋は盲目なんですよ(((uдu*)ゥンゥン

 

ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」

ディエゴ・ベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画ディエゴ・ベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画

ディエゴ・ベラスケス『マルガリータ王女の肖像画』1653年

『亡き王女のためのパヴァーヌ』はラヴェルがルーブル美術館でマルガリータ王女の肖像画を目にしたときにインスピレーションを受けて作った曲だと言われています。

ラヴェル自身は誰か実在の人物がモデルというわけではないと言っているにもかかわらず、多く人が「亡き王女」と聞いてこのマルガリータを連想せずにはいられないほど、彼女にぴったりの曲なのです。

ディエゴ・ベラスケス「ラス・メニーナス」1656年

マルガリータ王女は同じくベラスケスによる「ラス・メニーナス」でも描かれているスペインハプスブルク家の最後の王女です。

神聖なるハプスブルクの血を守るために近親婚を繰り返した弊害により、17世紀になると生まれてくるくる子どもは皆短命でした。

マルガリータ王女も15歳の時に神聖ローマ皇帝レオポルト1世のもとに嫁いだものの、6年で6人もの子どもを出産した疲労が原因で21歳の短い生涯を終えました。

しかも生まれた子どもも一人を残し成人することはありませんでした。

結婚生活もけっして幸せとは言えず、マルガリータが病気で倒れた際は早々に次のお妃候補探しが始まったと言います。

子ども時代の華やかなマルガリータ王女の姿を思うのと切ないですよね。

そんな彼女に寄り添うようにラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」はどこか懐かしく物悲しいのです。

晩年に事故で記憶を失ったラヴェルが、自身が作曲した曲だとは気が付かずに「亡き王女」に感動して作曲者を尋ねたという逸話が有名です。

 

ちょっとしんみりしちゃったので、最後はおめでたい感じの曲

 

ベートヴェン 「第九(交響曲第9番「歓喜の歌」)』

ウィーン分離派会館の地下にある圧巻の壁画クリムトの『ベートヴェン・フリーズ』

高さ約2メートル、幅は約34メートル、3面からなる総重量4トンという巨大な壁画で、2019年東京と名古屋で開催された「クリムト展」では、等身大のレプリカが作られたのは記憶に新しいです。

この「ベートヴェン・フリーズ」とは、ベートヴェンの交響曲第9番、通称「第九」をテーマに描かれました。

第九といえば、日本では年末年始の定番曲となっているので、聴いたことがある方も多いでしょう。

じつは演奏時間1時間以上という長い曲なんですよ(^▽^;)

クリムトの壁画はベートヴェンの第九の第一楽章とともに黄金の騎士が旅にでるシーンから物語が始まります。

苦悩を象徴する男女から助けを乞われた騎士は “同情”と “功名心”(騎士上の女性の姿)を連れて旅立ちます。

そんな騎士を待ち受けているのは恐ろしい怪物と苦難の数々・・・

見るものを石に変えるゴルゴン姉妹、彼女たちの上部からは「病」が取り憑く機会を狙っています。中央には悪の化身巨人テュフォン、右には淫欲・不貞・不節制といた誘惑者も待ち構えています。

これらの危機や誘惑を無事にくぐり抜けて、ベートヴェンの第九(歓喜の歌)が響き渡る中、騎士は真の幸福に到達するという壮大なお話

館長
館長

めでたし、めでたし

というわけにはいかず、

この絵の中には男性器だったり、女性器だっり、精子だったり、性的な要素が存分に散りばめられており、エロティシズムに汚染された作品だと炎上しちゃうんですよね(゚∇゚ ; )

クリムトはせっかく立ち上げたウィーン分離派を離脱することになっちゃいます。

でもまぁ、何事も新しいことは受け入れ難いものなんですよ。

本物であれば後世に評価されるってもんんです(((uдu*)ゥンゥン

 

超絶かっこいいカラヤンが指揮するベートヴェン「交響曲第9番(合唱あり)」を聴きながら・・

ちなみに誰もが知っている合唱「歓喜の歌」は第四楽章、終盤49分あたりから♪

 

本日は以上です。最後までお付き合いいただきありがとうございます。

2022年も「大人の美術館」をよろしくお願いいたします。

 

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当「大人の美術館」は、大人のためのWEB上の仮想美術館です。

またのご来館を心よりお待ちしております

コメント

  1. Nick Ollie より:

    芸術家の人格と作品は反比例するってとこにすごく納得してしまったりする、、、
    めもドビュッシーもそうだったのか、、、 知らなかった。あんな美しい曲をいくつも作ってるのに、

    • ビー玉 より:

      Nickちゃん、コメントありがとう♪
      人格と反比例するってどうなんだろうなぇ( ˙-˙ )
      ドビュッシーは世界でもっとも美しい音楽をつくる作曲家だとは思うけど、奥さん2人が自殺未遂とか人格は破綻してるよね(;´д`)トホホ…
      聞かなかったことにしてくださいw

  2. めっちゃおもろかったです。( ゚д゚)ウム めっちゃです。

    • ビー玉 より:

      風のましゅーさん、コメントありがとー。
      そう言ってもらえると嬉しいな♪
      これはましゅーさんのブログを読んで思いついたネタだからねw

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