こんばんは!ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。
本日は薄幸の美少女として有名なオフィーリアについての特集です。
オフィーリアという名前は知ってる。
ミレイの描くオフィーリアを見たことがある。
そんな方も多いと思います。
だけど、オフィーリアがどういった女性で、なぜ水辺のシーンが多いのかをご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
多くの画家たちを魅了したオフィーリアの世界にあなたをナビゲートします。
よろしければ、最後までお付き合いください。
ハムレットのあらすじ
オフィーリアは聖書に登場する女性でも、神話に登場する神や妖精でもありません。
天才脚本家と名高いシェイクスピアの戯曲「ハムレット」の登場人物です。
戯曲とは演劇の台本のことです
ハムレットと聞くと、なんとなく美味しそうな感じがしますが、主人公の名前です。
ハムレットは元デンマーク王の息子。
父王の突然の急死、そしてその死のわずか2ヶ月後に母が叔父と再婚したことにショックを受け、ハムレットは父王の亡霊を見るようになります。
亡霊に「弟に殺された、復讐するのだ」と言われて実行しようとします。
父を殺したという証拠は亡霊の証言だけです
ハムレットは狂気を偽り叔父を殺す機会を伺いますが、間違って恋人オフィーリアの父親である国の宰相を刺し殺してしまうんです。
狂気を偽った恋人ハムレットに冷たくあしらわれた上に、父親まで殺されたのが悲劇の乙女オフィーリア
彼女はつらい現実に耐えられずに精神を病み、小川で事故死(自殺?)してしまうのが、ハムレットの中で最も悲劇的なオフィーリアの死です。
その後、オフィーリアの兄がハムレットに復讐し、自らもハムレットの剣に倒れて2人とも帰らぬ人とないます。
叔父と母も悲劇的な死をむかえ、主要人物が全員死亡という、さすが4大悲劇と言われるだけあって誰も幸せにならない暗い話しなんですよ。
よくよく読むと、復讐劇でもなく思い込みに取り憑かれたハムレットが引き起こした大迷惑な話しなんですけどね。
悲劇の乙女オフィーリア
そんなハムレットになんの落ち度もなく被害を被ったのがオフィーリア。
そして、今も昔も悲劇の乙女ってものは人気がある題材でして・・
小川で溺れて儚い人となるオフィーリアは画家の創造意欲をかき立てまくり数えきれないほど絵に描かれています。
一番有名なのはエヴァレット・ミレイのオフィーリアでしょう。
なにはともあれ最高峰!ジョン・エヴァレット・ミレイ
ジョン・エヴァレット・ミレイ《オフィーリア》1851-52年
オフィーリアといえば、狂気の表情を浮かべて歌を口づさみながら水の中に消えていく・・というイメージをほとんどの方がお持ちだと思います。
そのイメージはこのミレイのオフィーリアからですからっ( ✧Д✧) カッ!!
ミレイが水に入るオフィーリアを初めて描いた画家だと言われています。
オフィーリアの死はハムレットの母のセリフでしか語られず、劇中でも演じられることはありませんでした。
「(前略)すてきな花輪を、垂れた枝にかけようと、柳によじ登ったとたん、意地の悪い枝が折れ、花輪もろとも、まっさかさまに、涙の川に落ちました。裾が大きく広がって、人魚のようにしばらく体を浮かせて―――そのあいだ、あの子は古い小唄を口ずさみ、自分の不幸が分からぬ様子―――まるで水の中で暮らす妖精のように。でも、それも長くは続かず、服が水を吸って重くなり、哀れ、あの子を美しい歌から、泥まみれの死の底へ引きずり下ろしたのです。」
ウィキペディア「オフィーリア」より
なんとも美しい情景ですがミレイ以前は、狂気に囚われたオフィーリアを描く画家はいても、水の中で死にゆくオフィーリアを描く画家はいませんでした。
それがですね・・ミレイの『オフィーリア』以降はその影響力の強さから量産されます
それらどれよりもミレイのオフィーリアのリアリティは圧倒的ですけどね!
それもそのはず、実際にモデルをバスタブに沈めて描かれており、そのモデルは長く水に浸けられたこともとで肺炎になり訴訟騒ぎにもなりました。
何時間も水の中にいて、文句一つ言わなかった従順すぎるモデルと、恋人に裏切られても怒るでもなく別の誰かを探すわけでもなく、永遠の乙女として死んだオフィーリアのイメージが奇跡のマッチングを果たした奇跡の作品です!
ミレイのオフィーリアに関しては、こちらの記事もよかったらご参照ください
もう1人の「オフィーリア」アーサー・ヒューズ
ミレイの影に隠れて目立ちませんでしたが、実はミレイが『オフィーリア』を出品したアカデミー展に、もう一点同じオフィーリアを描いたものがありました。
偶然にも同じ展覧会で描かれたオフィーリアは2作品、2人いたのです。
アーサー・ヒューズのオフィーリアがそのもう1人の『オフィーリア』です。
ミレイのオフィーリアとは明らかに雰囲気が違います。
ミレイの描くオフィーリアは自分が死にゆくことも気づいていないといった狂気を孕んでいますが、ヒューズの描くオフィーリアは自分の意思で水入ろうとしているように思えます。
表情からは苦しみとか悲しみが色濃く浮かんでいて、見ているだけで心が痛みます。
オフィーリアの心象風景なのでしょう、周りの風景も荒れ果てています。
花に例えられることが多いオフィーリアなので、花が一緒に描かれていないものはとても珍しいです。
ヒューズのオフィーリアに感じるのは狂気ではく、恋人に裏切られた寂寥感。
生身の女性としてヒューズのオフィーリアに共感する人も多いのではないでしょうか?
乙女じゃないよね?アレクサンドル・カバネル
アレクサンドル・カバネル《オフィーリア》1884年
カバネルのオフィーリアも綺麗なんだけど、狂気というよりは酔っ払いって感じがしなくもないw
見られているのを意識していて綺麗に見せようとするあざとさがあります。
ミレイのどこか別の世界が見えちゃってるようなオフィーリアに比べると俗さが否めない(^▽^;)
ただね、色っぽいですよ。あきらかに誘うようなオフィーリア。
絶対的 “乙女” じゃない感w
最終的に愛するハムレットも亡くなりますが、カバネルのオフィーリアは死を招くファム・ファタール(破滅へみつびく運命の女)なのかもしれませんね。
主役は誰?コンスタン・モンタルド
コンスタン・モンタルド《オフィーリア》1893年
うん、描きたかったのは白鳥だよね( ᐛ )?
死と生の乙女。レオポルド・バルト
レオポルド・バルト《オフィーリア》1852年
死出へ向かうオフィーリアではなく、もうすでにお亡くなりになってますね(ノД`)シクシク
だけど・・しっかり枝を握っての死後硬直?
めっちゃ「生」に未練あるじゃ〜んって思ってしまう。
気持ちはあの世なのに、本能的に生に執着を見せるオフィーリアは凌辱感が半端なく官能的であります。
聖女を描いたオディロン・ルドン
ルドン《オフィーリア》1900-05年
逆に全く生への執着がまったく感じられないのがルドンのオフィーリア。
おそらく死ぬ間際、すでに現世ではない世界を漂っているようなオフィーリアではあります。
狂気とは無縁。
静かに死を受け入れているというか、死を「救い」として身を委ねているようなオフィーリアです。
そして、私にはルドンのオフィーリアに性的な要素がまったく感じられない( •ὢ•)
こうやってみると、 生きること=性なんだなと思います。
穏やかさとは裏腹に裏切りを意味する黄色い花が切ない!
深く深く・・ポール・アルバート・スティック
ポール・アルバート・スティック《オフィーリア》1894年
小川にしては深いんだわ・・オフィーリアが溺れた小川での場面ではなく、オフィーリアの心象風景なのでしょう。
悲しみがあまりにも深く、正気を保つことができなかったオフィーリア。
このオフィーリアは深く心のそこに潜ってしまった彼女の「正気」の部分を表したものなのかなぁと思ったりもします。
水底で悲しみが浄化されるといんですけどね。
まとめ
エドウィン・オースティン・アビー《オフィーリアにもたれるハムレット》1897年
オースティン・アビーの描くハムレットの一場面は赤が禍々しくてですね・・・描かれている人物の表情もどこかうつろです。
悲劇の死者たちが集うあの世のように思えて恐怖感を煽られる1枚!
今では考えられないけど、シェイクスピアが活躍した16世紀は公開処刑などで人が血を流し死ぬことことが一大エンターテイメントだったんです。
なので、「ハムレット」のように劇中で派手に人が死ぬほど人気になっていたようです。
民衆が理不尽に殺されることが多かった時代に、「無惨に殺されるのが自分じゃなくてよかった」という安心感を覚えていたのかもしれませんね。
水に身を委ねたオフィーリアの静かな死は中世の人々の印象に残るものではありませんでしが、19世紀にミレイによって再発掘され、ハムレットが引き起こした悲劇のちょっとした味付けでしかなかったオフィーリアが「悲劇のヒロイン」として主役のハムレットよりも有名になってしまいました。
2020年に公開されたオフィーリアを主役とした映画「オフィーリア 狙われた王国」では強く美しいまったく新しいオフィーリアが描かれています。
興味のある方はご覧になってみるといいかも♪
時代によって少しずつ変化するオフィーリア
まさに永遠の乙女です。
さて、あなたはどのオフィーリアが心に残りましたか?
本日は以上です。最後までお読みいただきありがとうございます。
またのご来館、お待ちしております。
コメント
(゚д゚)(。_。)ウン 何回観ても、ミレイのオフィーリアは怖いのだ。
はあ、、、
ビー玉さんの解説を読んで、すっかり劇中に入ったみたいな気分になりました!
ミレイ以外のオフィーリアも見たことがなく、劇中の母親のセリフも聞いたことがなかったんですが、あらためてセリフを読むと、その場面を一番よく表しているのはミレイだ、と確信してしまいました^^
あぁ、これこれ、ミレイの「オフィーリア」見ましたよ。たびたび来日してた?渋谷か六本木のどちらかでした。「ラファエル前派」ですよね。この世界は好きかって言われるとちょっと迷いますが、この「オフィーリア」だけは大好きです(´ー`)
来た~、オフィーリア!!
ミレイのオフィーリアがやっぱり断トツで好きかな。違う世界を漂っているような顔、水を含んだ細かいレース、花を持つ手、、、好きだけど、確かに怖いかも。
英文科だったのでハムレットは読みました(訳本でね、もちろん)。そしてあまり内容は覚えてない。ははは