マネ「フォリー・ベルジェールのバー」には何が描かれているのか?鏡を使った驚愕のトリック

印象派

こんばんは、大人の美術館ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。

今宵は、【大人の美術館】へようこそ。

19世紀の美術史に革命を起こした時代の寵児「エドゥアール・マネ」

彼の描いた絵画は常に人々の興味を惹きつけましたが、晩年に描いた「フォリー=ベルジェールのバー(Un bar aux Folies Bergère)」は今なお謎多き絵画となっています。

本日はそんな「フォリー=ベルジェールのバー」の絵画ミステリーを紐解いていきたいと思います。

そこには驚愕の鏡のトリックが隠されていました。

アンニュイな表情を浮かべこちらを見ている女性。

彼女はなぜこのような表情しているのか?

絵の謎を紐解いていくと絵の印象がガラリと変わります。

 

\こちらの記事はYoutube動画でもお楽しみいただけます/

 

よろしければ最後までお付き合いください。

フォリー=ベルジェールのバーってなに?

【作 者】エドゥアール・マネ
【作品名】フォリー=ベルジェールのバー(Un bar aux Folies Bergère)
【年 代】1882年
【種 類】カンヴァス、油彩
【寸 法】92 cm × 130 cm
【所 蔵】コートールド美術館 (Courtauld Gallery) /ロンドン

近代絵画の革命児マネの最晩年の傑作です。

 

「フォリー=ベルジェールのバー」はマネが「草上の昼食」を描いて、世間を騒然とさせてから約20年後の作品です。

騒然とした訳は下記の記事へ

意味が分かるとエロスが滲む西洋絵画!
意味がわかると色っぽい!そんなエロスを感じる絵画を集めてみました♪ルイ15世の愛妾デュ・バリー夫人が密かに画家に注文した絵とは?結婚するまで処女でいることがどれほど大切だったか?ただの部屋の絵が色っぽく感じる仕掛けとは?何気なく見ると見落としてしまうようなエロスを拾い、見所をギャラリートークします!

 

19世紀のパリで最もホットなナイトスポットが「フォリー=ベルジェール」でした。

カフェとイベントホールを兼ねたジョーパブで、「遊歩回廊(プロムナード)」と言われる舞台囲むように作られた長い回廊が人気を博していたんです。

当時のポスターです。

マネの描いたバーはこの遊歩回廊に設けられたバーで、背面には一面鏡が取り付けられていました。

もう一度マネの作品を観てみましょう

女性バーテンダーの背後の見受けられる喧騒は全て鏡に映ったものです。

リアルなのは女性バーテンダーとお酒やオレンジのみ。

タバコで煙る鏡の中の風景が幻想的です。

 

気だるい雰囲気の女性バーテンダーの左上には空中ブランコに乗る緑の小さな靴が見受けられます。

観客にとっての主役は女性バーテンダーではなく、サーカスのブランコ乗りなのです。

紳士は彼女に何を語るのか?

女性バーテンダーの前には紳士がなにやら親密に話しかけてる様子・・・

実は、この「フォリー=ベルジェール」は、フォリー「酔う」、ベルジェール「柔らかい椅子」という意味です。

妙齢の紳士淑女のみなさまなら、「性的」な意味を感じ取っていただけるのではないと思います。

実は、そういうお楽しみを探す場所でもありました!遊歩回廊には売春婦が闊歩し、声をかけてくる客を待っています。

モーパッサンの書く小説にはフォリー=ベルジェールについてこのような描写があります。

バーでは厚化粧のくたびれた顔の売り子が「酒」と「春」を売っている

 

当時の現状を知ってる人がこの絵をみると「客と取引している場面なのだな」と思う仕掛けになっているんです。

女性バーテンダーの気だるい顔をみると「不本意だけど仕方がない」という声が聞こえてきそうですが・・・

構図の謎

よく観ると男性の位置が不自然だなと気がつきませんか?

バーテンダーに顔を近づけて話しかけてるハズの男性が鏡に映っている位置がおかしい!!

だけど、マネが女性バーテンダーを真ん中に配置したいが為に不自然な構図を取ったと思われていました。

そして、私たち絵を観る観客は、この売春を持ちかけている紳士の視点で絵を観ているのだと・・

若い女性に嫌がられてもお金で春を買う男性という立ち位置。

マネらしい皮肉を込めた構図だなと、だれもが納得していたんです(((uдu*)ゥンゥン

 

だけど2000年、マルコム・パーク博士の実験により実はこの構図が正しいかもしれないという仮説が提唱されました。

(画像出典:http://www.getty.edu/art/exhibitions/manet_bar/looking_glass.html)

2000年のオフセットの視点から見たバー配置の再構成を示す写真。
グレッグ・カランによる写真
Malcolm Park提供

 

私も再現してみました

 

館長
館長

なぜ、金剛力士像なんですか?

ビー玉
ビー玉

人形がそれしかなかったんですw
ちなみに紳士役はゼウスのフィギアです

モデルさんがちょっとアレですが

わかりますでしょうか・・・

実は鏡に映る男性は、女性をバーテンダーに話しかけていなければ、見もしていないのです。

角度から言って、おそらく鏡越しにサーカスのブランコ乗りを見てるんじゃないかと思います。

女性バーテンダーは誰の目にも主役になれてはいません・・・

 

女性バーテンダーの不機嫌な理由は、不本意な客に声をかけられたからではなく、客にすらそっぽをむかれていること

主役にはなれない孤独感と虚しさ・・・

田舎では美人と評判だった女の子が女優やダンサーを夢見て上京し、まったく目が出ず水商売に踏み出すも、そこでも誰も振り向かない・・そんな感じの物語が見えてきそうです。

マネ晩年の大仕掛け

この絵はマネの最晩年の作品です。

左端の酒瓶にはマネの名前と1881年の文字が見えます。マネが亡くなったのは1883年4月。

マネがフォリー=ベルジェールに通った最後の年なのかもしれません。

マネは40代後半に骨が腐っていく病気になり、「フォリー=ベルジェールのバー」の制作の後半はマネの自宅のスタジオに実際のバーテンダーを招いてモデルをしてもらいつつ描かれました。

この絵は、実際にマネがバーに行って描いた下書きだと言われています。客とバーテンダーの位置はおかしくない!実際の風景はこれでしょう・・・

マネはスタジオにセットを組んでモデルまで使って描き上げました。しかも女性の角度は何度も描き直されているんです!

「女性を中央に描きたい」というパッションだけで描くなら、こんな作業は必要ないでしょう・・

マネは「フォリー=ベルジェールのバー」を描き上げたすぐ後に左足を切断する大手術をうけ、その11日後に亡くなりました。享年51歳。

「フォリー=ベルジェール」は観客のスケベ心を利用したマネ最後のとんでもないイリュージョンだったという訳です。

私たちは長らくマネの鏡を使った巧妙なトリックに騙されて続けていたんです。

鳥肌が立ちました!

やっぱマネは最後まで尖っててカッコいいなぁ・・・そう、思います!!

虚しさや、孤独感。この女性の不機嫌で悲しげな表情がすんなり理解できる気がしませんか?

※この絵に関してはいろんな説があります。自分にとっての正解を探してみてくださいね。

 

この名画は2020年6月21日までは日本で見られます

お見逃しなく( ✧Д✧) カッ!!

私が実際に観た感想です。よかったらお立ち寄りください。

名古屋「コートールド美術館展」感想と完全ガイド。謎多き2人の美女が奇跡の来日!
ども、ビー玉です。 本日は出張美術館です。 名古屋市・愛知県立美術館で開催中の「コートールド美術館展 魅惑の印象派展」へ行ってきました! 大阪から名古屋まで、高速バスで片道3時間で1500円! 前回、豊田美術館にクリムト展を見に行っ...

 

本日は以上です。

当美術館は毎週土曜日か日曜の深夜に開館します。

また来週お会いいたしましょう(*ˊᵕˋ*)੭

\こちらの記事はYoutube動画でもお楽しみいただけます/

コメント

  1. 酒場は色んなドラマがありますが、迎える側もそれは例外ではないってことですな(((uдu*)

    神戸だけいつも神戸になる・・・w
    確かに( *´艸`)

    コレはもしかしたら、兵庫がヘンにデカいんで兵庫って表記すると、行く側が場所特定しづらいからかも( *´艸`)

    • ビー玉 より:

      えたさん、コメントありがとうです♪
      もう神戸は独立県ではないのかと思います(^▽^;)
      確かに城崎も「兵庫」ではなく「城崎」ですもねん!他は・・・えっと・・・(; ̄Д ̄)
      人間観察がすきなので、お酒が飲めたら酒場に入り浸ってしまいそうwww

  2. 何気に最後が気になるぞ。((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル 
    左足って…。あと、神戸は特別視され過ぎやんな。(((uдu*)ゥンゥン

    • ビー玉 より:

      ましゅーさん、コメントありがとうです。
      最後は手術で切断したんですが、書いてなかったですねw 追記しておきました(; ̄Д ̄)
      怖がらせてゴメンなさいっっ!!
      神戸は兵庫から独立したんだと思いますwww

  3. Nick Ollie より:

    この絵は見たことはあったけど、なんか無愛想な女性だなーくらいしか思ってなかったの。今回のお話を読んで、すごいいろいろ知ることができた。彼女の表情の意味や、オレンジの意味、構図の不思議など、とても興味深かった!

    • ビー玉 より:

      Nickちゃん、コメントありがとうです♪
      私もずっとなんで無愛想なんだろう?って思っていたんですが、この説を聞いて納得しました!!
      空中ブランコに夢中になってる男性に「あなたもなのね」という顔だったんだなと(((uдu*)ゥンゥン
      やっぱマネは一癖も二癖もあるなと( *• ̀ω•́ )b グッ

  4. marimo より:

    読んでてゾクッとしました!
    誰も見ていない女性がど真ん中いて、なんともいえない表情をしている。
    リアルなバーの雰囲気が伝わってきました~~~!!

    確かに神戸(笑)
    芸術っぽさがクローズアップされるんですかねえ^^;

    • ビー玉 より:

      marimoちゃん、コメントありがとうです♪
      私もずっと彼女の不機嫌わけがなんなのか不思議に思っていたんだけど、この実験を見た時はストーンと納得しました!!
      神戸はたぶん、兵庫から独立したんだと思います(^▽^;)

  5. aiai より:

    女性バーテンダーの絵、不自然すぎて鏡に映っているのではなく、うしろにもう一人女性がいて男性はその女性に話しかけてるのかと思った(;´Д`)
    正面の女性はこっち見てるのに、話しかけられてるわけないもん!って思ったけど、そもそも話しかけられてないしΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン
    実験したら一目瞭然なんだろうけど、あたまで考えてもよくわからない。
    鏡って怖い。。。

    • ビー玉 より:

      aiaiちゃん、コメントありがとうです♪
      私も初めて見た時はそう思った!!鏡があるとか思わなかったし・・・構図が変だし(((uдu*)ゥンゥン
      鏡があるって知ってからも「変な絵」だと思って好きじゃなかったけど、この実験を見た時は目から鱗でした!!
      彼女の気持ちがストンと入ってきました(((uдu*)ゥンゥン こんなの見ただけじゃわからないよねwww

  6. ヨウコの川歩き より:

    はぁ~そうだったのか、マネ!マネは大好きな画家です。大胆さと確かな技術と恐れを知らないタッチ。格好いい!
    「フォリー=ベルジェールのバー」をみるだけでも美術館へ行く価値がありますね。行きます!

    • ビー玉 より:

      ヨウコさん、コメントありがとうです♪
      マネいいですよね〜♪私も好きです(((uдu*)ゥンゥン
      死ぬまでこんな尖った絵を書けるなんてかっこいいなぁ・・って思います。
      是非是非見に行ってくださ〜い!私も兵庫か愛知に行きます( ✧Д✧) カッ!!

タイトルとURLをコピーしました