愛に生きた美貌の画家「ヴァラドン」と母の愛を求め続けた息子ユトリロの物語

印象派

こんばんは!ビー玉です。

あなたはシュザンヌ・ヴァラドンという画家をご存知でしょうか?

本名はマリー=クレマンチーヌ・ヴァラドン。

19世紀のフランスで著名な芸術家たちのミューズとしてパリ、モンパルナスを闊歩し、のちに女流画家の道を歩み、白の画家「ユトリロ」の母でもあります。

本日はそんなヴァラドンの波乱の人生にあなたをナビゲートします。

よろしければ、最後までお付き合いくださいm(_ _)m

シュザンヌ・ヴァラドン(1865~1938)

ヴァラドンは、1865年9月23日にフランス北東部の小さな町ベシーヌで ホテルで清掃や洗濯などをして生計を立てていた女性のもと、私生児として生まれました。

ヴァラドンは5歳の頃に母とともにパリに移り住み、11歳で家計を支えて働きました。

 

【作 者】シュザンヌ・ヴァラドン
【作品名】忘れられた人形
【年 代】1921年
【種 類】カンヴァスに油彩
【寸 法】129cm × 81cm
【所 蔵】国立女性美術館(National Museum of Women in the Arts; NMWA) /ワシントン

画家となったヴァラドンが描いた母と幼き日の自分です。

母に体を拭かれるヴァラドン。最初は母親に “あらぬ仕事” させられていたの?と凍りつきそうになった絵なんですが・・・・

そうではなくて、少女が女性に変容する様を描いています。

人形と同じ髪飾りをした幼い少女の興味は人形から鏡に移っています。

まだ母の庇護が必要とする幼い少女の体が、すでに成熟していることに違和感を覚えますが、このアンバラスンな違和感は女性ならだれでも経験したことがある変生期の感情です!

現代では、体と心の違和感がなくなるまで親の庇護のもとで過ごせますが、貧しかったヴァラドンはアンバランスな体と心を抱えたまま、たった15歳で画家たちのモデルを務めることになります。

ちなみに当時のモデルは売春婦と変わらない卑しい職業だとされていたんです。

そんな過酷な状況の中、ヴァラドンは類稀な美貌で画家を虜にしていきました。

ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ
ピエール=オーギュスト・ルノワール
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
エドガー・ドガ

などなど・・・・

ヴァラドンはその早熟な裸体を惜しげもなく晒し、画家たちに求められるまま男女の関係を結んでいきます。

ヴァラドンの若き日のポートレート

 

ルノワール作 「髪を編む娘」

エドガー・ドガ作「湯浴みする女 The Tub (with Suzanne Valadon)」

そして、18歳で父親不明のままモーリス・ユトリロを産みます。

ユトリロは生まれてすぐに祖母に預けられて、孤独な幼少時代を過ごしました。

この孤独な幼少時代が、のちに「孤独な白の画家ユトリロ」の所以になっていくのですから皮肉です。


ユトリロ作「コタンの小路」
(孤独感がじわ〜と滲むユトリロ白の時代)

ヴァラドンは子どもを見捨てて自由奔放な愛に生きた女性だと言われますが、その頃のヴァラドン肩には息子と年老いた母の生活費がずっしりのしかかっていました。

性的に奔放だったことは別として、「自由」とは言えなかったと思います。

当時女性が働いて生計を立てるのは、今では考えられれないくらい大変な時代だったんです!

なりふり構わず働かないと・・・というのが正直なところだったのではないでしょうか(((uдu*)ゥンゥン

まぁ、父のいなかったヴァランドンにとって父親ほど歳の離れてた画家たちは憧れの対象だったっていうのもあったのかもしれませんが・・

 

館長
館長

自分の体を武器としないとやっていけないこともあったんでしょうね

 

ロートレック作「二日酔い」 モデルはヴァラドン

ロートレック作 「洗濯女」 モデルはヴァラドン

 

ビー玉
ビー玉

疲れたぁ・・・という声が聞こえてきそう

ルノワールの描いた華やかなヴァラドンとの落差が(^▽^;)

ロートレックとヴァラドンは同棲するほどの仲だったので、ロートレックには本当の姿を見せていたんでしょうねぇ((uдu*)ゥンゥン

もしくはロートレックの画家としての目が女性の一瞬の隙を見逃さなかったのか(。-`ω´-)

そしてヴァラドンは、著名な画家のモデルを忙しく勤め、いつしか見よう見まねで自分でも絵を描くようになっていきます。

 

画家としてのヴァラドン

ヴァラドンの本名はマリー=クレマンチーヌ・ヴァラドン。

シュザンヌと呼ぶようになったのはロートレックです。

恋人の関係になったあとも、自分以外の画家のモデルをやめないヴァラドンを皮肉って旧約聖書に出てくる二人の老人に裸を覗かれる「シュザンヌ」という名前で呼んだのです。

皮肉屋ロートレックらしいあだ名ですね。

だけど、ロートレックは独学で描き始めたヴァラドンのデッサンを見て大絶賛!

それが嬉しかったのか、ヴァラドンは画家として生涯「シュザンヌ・ヴァラドン」を名乗ります。

ヴァラドンが描いた息子ユトリロのデッサン

幼い息子を見捨てたように言われるヴァラドンですが、息子のデッサンをたくさん残しており、その目はとても暖かです。

当時の貧しい女性たちは子供を産んでもすぐに里子に出してしまうことが多かったので、母親に預けたとはいえ、息子を手元に置いていたのはヴァラドンなりの愛情だったんでしょう。

 

ものすごく不器用ですけどね!

愛があっても「母」に不向きな人っているんですよ(;´д`)トホホ…

その後、ロートレックの紹介でドガに師事し、本格的に画家の道を歩み、少しずつ名声を得ていくヴァラドンですが・・・

ドガやロートレックの後ろ盾があったとしても女性が絵で食べていくのは容易ではありませんでした。

31歳のヴァラドンは、おそらく自由に絵を描くために裕福な実業家と打算的な結婚をします。

この結婚でヴァラドンは初めて安定した生活を手に入れ、お金にことを考えずに自由に絵を描いていきます。

ヴァラドンはメイドや労働階級の女性をモデルにヌードをたくさん描きました。

ヴァラドンのヌードって新鮮なんですよ!

男性の描いたヌードって、理想像とかがどうしても入りこむじゃないですか(^▽^;)?

観て美しいのは男性の描くヌードだと思いますが・・

女性からみると、それがどこが現実ばなれした “白昼夢” のように見える時があるんです。

ヴァラドンの描くヌードのテーマは美しさではないんです!

生活のために絵を描く必要もないので、顧客への媚びもありません。

描かれているのは “強さ”とか “したたかさ”とか “生きるための手段” です。

これがなんともリアル!

好き嫌いは別れそうですが、ヴァラドンの生き方も垣間みえて非凡さを感じます。

息子の友人と恋に落ちる

絵だけを描いて過ごす結婚生活は10年以上続いたんですが・・・・

息子であるユトリロの連れてきた友人ユッテルと恋に落ち資産家の夫と離婚します。

ヴァラドン44歳、ユッテル23歳。20以上歳の離れた歳の差カップです。

 

ビー玉
ビー玉

ユトリロもびっくり!!

左からヴァラドン、ユッテル、ユトリロ

ユッテルとの恋はヴァラドンにとって、打算のない初めての恋だったのかもしれません。

ユッテルとの結婚生活の中でヴァラドンは次々に代表作を描きあげ絵の力強さは増していき、絵が国に買い上げらえるほどの名声を手にします(((uдu*)ゥンゥン

ヴァラドン作 「投網」

 

ヴァラドン親子

息子ユトリロに対する愛情はあったとは思うんですが、ヴァラドンは若い頃から男性に求められるまま性的関係を結んできましたから、それ以外の愛情を求められても答えるすべを知らなかったんじゃないかなと思います。

ユトリロは愛情不足からアルコール中毒となりその治療の一貫として絵を描き始めます。

特にユトリロの友人ユッテルと母が結婚したあたりから酒量が増え、アルコール依存は悪化するのですが、皮肉なことに絵は彼の孤独と比例するように黄金期を迎えます。

白にこだわった彼の描く絵は孤独感が立ち込めて、見ていると辛くもなりますが、その孤独感に共感し救われる人も少なくはないんです!

ユトリロの白へのこだわりは子供時代に寂しさを紛らわした漆喰のカケラが由来だとユトリロは言いますが、彼の中で渦巻く寂しさを「浄化したい」「真っ白い壁に塗り込めたい」・・そんな気持ちだったのかもしれませんね。

ユトリロ作「雪のラ・フェルテ=ミロン

やがて、ユッテルと別れたヴァラドンは絵を描いてる最中に脳溢血で倒れ、帰らぬ人となりました。

ユトリロはショックのあまり卒倒し、葬儀に参列すらできなかったそうです。

晩年のユトリロは亡き母のためにただひたすら祈りを捧げる日々を送り、生涯母を求めてやまない人生でした。

早熟し、早くから大人にならざるをえなかったヴァラドン。

大人になっても母の愛情を追い求め大人になりきれなかったユトリロ。

2人の描く絵画のように対極な親子でした。

「母は、私が女神のように感謝し、崇拝する聖女であった」

ユトリロの言葉です。

どう考えても幸せとは程遠いユトリロの人生ですが、他人には見えない母と子の絆というものがきっとあったんだと思います。誰もが求めてやまなかった憧れの聖女を最後は自分一人のものになったという満足感もあったのかもしれません。

うん、なかなか複雑な親子関係だわ・・・

本日は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

「大人の美術館」は動画でもお楽しみにいただけます

\\ ✨ 動く大人の美術館です ✨ //


 

「大人の美術館」は毎週土曜か日曜の深夜に開館するweb上の仮想美術館です。

またのご来館をお待ちしております

 

コメント

  1. ご本人はどう思われてたかわかりませんが、こういった壮絶な人生を見ると自分は現代の日本に生まれて幸せモンだなと思います(*´ω`*)
    生きるために何かをしなければいけないのは同じですが、ビーさん言いはる通り、四の五の言えない状況だったんでしょうね(*´ω`*)

    • ビー玉 より:

      えたさん、コメントありがとうです。
      本当に、なんだかんだで私たちは恵まれてるんですよね(((uдu*)ゥンゥン
      私もなんだかんだでユルく生きちゃってます。
      そろそろ本気出さないと( ✧Д✧) カッ!! ←ウン十年言い続けてるw

  2. 面白いなぁ…。( ゚д゚)ウム 

    白に焦がれる人って…いろいろ考えちゃいますよね。ユトリロも大変な人生を送ってたんでしょうなぁ。(((uдu*)ゥンゥン

    • ビー玉 より:

      ましゅーさん、コメントありがとです♪
      面白くてよかったε-(´∀`*)ホッ 人生いろいろですな♪

  3. ヨウコの川歩き より:

     ヴァラドンの存在は知っていましたがこんなに力強い絵を描いた人だとは知りませんでした。男性の間を泳ぎ続けた人生。それでも名だたる画家の代表作に登場し、自らの作品を残したんだから、非凡なエネルギーを持った人だったんですね。
     そして、私の大好きな哀しい風景画を描くユトリロを生んでくれたんだ。ありがとう!(@_@)
     ビー玉さん、いつも素敵な「大人の美術館」、ありがとうございます

    • ビー玉 より:

      ヨウコさん、コメントありがとうです。
      こちらこそ、いつも素敵なコメントありがとうでございますm(_ _)m
      ヴァラドンに関しては昔はひどい女だなぁ・・・って思ったけど、今は違う感情を感じです。年をとるのも悪くないですね╭( ・ㅂ・)و グッ !

  4. marimo より:

    今はモデルといえば羨ましい存在かもしれませんが、それでも人に見せる、見られるお仕事ですもんね、覚悟を持って選んだんだと思います。
    多くの人に愛されたこと、父親がわからない子どもであることに対して暗いイメージが伴わないことが絵にも表れているな~と思いました^^

    • ビー玉 より:

      marimoちゃん、コメントありがとうです♪
      そうそう、モデルさんは今はステータスなのにね!女一人で生きていくには時代が厳しかったんだろうね!その時代に子どもを手放さなかったっていうのは、すごいことだと思うのです(((uдu*)ゥンゥン ほったらかしではあったようだけど・・・息子がアル中になってからは一緒に暮らしてるし(´-ω-`)

  5. Nick Ollie より:

    最初の写真、ヴァラドンの顔は憂いがあって美しいなーと思いました。こりゃ、男達が惹かれるのも無理はない。

    そして私の好きなロートレック! 彼の描く疲れたヴァラドン、きっとそのままなんだろうな。

    ロートレックについても是非、書いてほしいな~♪

    • ビー玉 より:

      Nickちゃん、コメントありがとうです♪
      ヴァラドンの生き方は真似できないけど、すごいなぁとは思う(((uдu*)ゥンゥン
      ロートレックは女性のこういう雰囲気を容赦なく切り取るのがいいんだよね・・・私は書いて欲しくないけどwww
      リクエスト承りました〜٩( ᐛ )و

タイトルとURLをコピーしました