名画『ゲルニカ」はいかにして描かれたのか?絵画界のゲス野郎パブロフ・ピカソが愛した女神(ミューズ)たち

20世紀美術

こんばんは!ナビゲーターのビー玉です。

ピカソの代表作のひとつである『ケルニカ』はスペインのゲルニカという地域が、ナチスドイツに都市無差別爆撃を受けた様子を主題に描かれた壁画です。

反戦がテーマとなっているこの壁画ですが、反戦とは真逆の状況で描かれたものだとしたら...

本日はピカソとピカソの愛人たちを巡る物語です。

 

ゲルニカ=ルモ・ムニシピオ(基礎自治体)にある実物大のセラミック製壁画レプリカ

 

よろしければ最後までお付き合いください。

 

天才ピカソ

ピカソとその弟

ピカソの本名はパブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ

めちゃめちゃ長いことで有名です。これは様々な聖人や親戚の名前を組み合わせた結果です。

ピカソは1881年スペイン南部アンダルシア地方のマラガ市に美術教師の父の元、6人兄弟の長男として生まれました。

幼少期から非凡な芸術的才能を発揮し、青年期にはさまざまな理論や技法、思想を試しながら、その作風を変化させ、その革新的な芸術的業績によって世界的な名声と莫大な財産を獲得。20世紀美術の最もよく知られた人物のひとりなりました。

そのピカソの画風の変化には当時の恋人たちの影響がありました。

画風を変えたピカソの女性遍歴

ピカソといえば、抽象画、キュビズム。

キュビスムとは、日本語で「立体派」。複数の視点から視たモノを平面上に再構築する、といった形式で描かれた絵のことです。この革命ともいえる画法キュビスムの旗手として20世紀の美術界を牽引したのがパブロフ・ピカソ。

あの下手ウマの絵?って思える絵も、実は計算し尽くされて描かれたものなんですが、ここではそんな難しいことには触れません。

そんなキュビズムのイメージが強いピカソですが、その画風は走馬燈のようにクルクルと目紛しく移ろいでゆきます。

ちなみに私が最も好きなのは・・

友人の死によって全て青く染めれれた悲壮感のある「青の時代」と、温かい色合に拘っていた「バラ色の時代」の中間ぐらい。全然ピカソのイメージではないでしょ?

バラ色の時代へ導いた フェルナンド・オリヴィエ

オリヴィエとオリヴィエの肖像

青の時代からバラ色の時代へと導いたのは、ピカソの最初の恋人と言われている、フェルナンド・オリヴィエ。

画像出典:Wikipedia 青の時代の代表作『ラ・ヴィ(人生)』1903年

オリヴィエはピカソに温かい愛を注ぎ、鳴かず飛ばずだったピカソを成功に導いたミューズだったのです。

画像出典:art-Picasso.com バラ色の時代の代表作『パイプを持つ少年』

少年の鬱屈とした表情とは裏腹に暖かい空気が少年を包んでいるかのようです。

真っ青だったピカソの絵に暖かい息吹と幸福感を吹き込んだオリヴィエですが、そんな愛も変化を好むピカソの前では永遠ではありませんでした。

キュビズムのミューズ エヴァ・グエル

こともあろうにゲス野郎ピカソは、オリヴィエの親友だったエヴァ・グエルに手を出し、エヴァもピカソを受け入れて、キュビズムの時代が始まります。

エヴァと「マ・ジョリ(私のかわいい人)」

エヴァをモデルに描かれた「マ・ジョリ(私のかわいい人)」という絵画なんですが・・・もう素人には何が何だか( ̄▽ ̄;)

しかし、病弱だったエヴァは、ほどなくして病死。

キュビズムについてはYoutubeで1分のショート動画を作ってみたので、気になる方はよかったら観てください。

【Youtubuの原稿より】
ピカソの絵で有名なキュビズムにいて1分で紹介します。キュビズムは日本語で立方主義と訳します。人間は本来一方向から物体を見てるわけではく、多方面からものを認識して物体の全体像を把握しています。あらゆる角度の物体を一度分解して2次元に書きなおすというのがキュビズムの画法です。サイコロの展開図や設計図などを想像してみるとわかりやすいかもしれません。一番身近なキュビズムっぽいものはメルカルト法で描かれた世界地図だと思うんですが、どうでしょう。

ロシア貴族の血を引くオルガ・コクローヴァ

その後、最初の妻となるオルガ・コクローヴァと出会い、恋に落ちます。
「私を描くときは、私とわかる絵を描くこと」というオルガの一言で、ピカソはあっけなくキュビズムを捨てます。

オルガと『肘掛け椅子に座るオルガ』

ピカソ新古典主義の時代です。もう振り幅が大きすぎてついていけません。

でもこの振り幅を観ると、ピカソの凄みを帯びた圧倒的な画力を実感するのではないでしょうか?彼は、どんな画風で描いても天才的に上手かったんです。

ロシア貴族の血を引くオルガには、この古典的な画風がぴったりだとピカソは思ったんでしょうね。

オルガとは結婚して、子どもを授かりますが、子どもが生まれた頃からピカソの心は徐々にオルガから離れていきます。

 

肉感的な少女 マリー・テレーズ

46歳になっていたピカソは、街で17歳の肉感的な美少女をナンパします。

口説き文句は

「君の絵が描きたい。私はピカソだ」

こんな言葉で17歳の美少女を口説き落とせるほど、その頃のピカソは成功していました。

「素晴らしく彫刻的で、ボリュームのある完璧な身体と顔」そうピカソを虜にしたのは、マリー・テレーズ。

マリー・テレーズと彼女をモデルに描いた『夢』

 

『庭の裸婦』1934年

たしかに肉体の柔らかさを存分に感じる色っぽい絵だけど

どうよ?女性としては嬉しい?

テレーズとの間にも子どもを授かりますが、またしてもデジャヴ。子どもが生まれたあたりで、ピカソの心は別の女性へと向けられます。

もう女性としては腹立たしさしか感じないんですが、自分が一番でないと我慢できないピカソの性格が伺えますよね。自己顕示欲の強い画家らしいっちゃぁ、画家らしい。

野性味あふれる肉食女子 ドラ・マール

ドラ・マールと彼女をモデルに描かれた『泣く女』

次にピカソが愛したのは、女性カメラマンであり画家でもあった芸術肌のドラ・マール。

『泣く女』1937年(画像出典:Wikipedia)

『泣く女』は彼女の激しさが全面に押し出された大傑作です。

子どもの落書きみたいに見えるかもしれませんが、パーツパーツで見ていくと非常に緻密だと思います。各パーツから不安、悲しみ、怒りなどの感情が絶妙なバランスで描かれています。総体的に見て現れるのは、嫉妬でしょうか?見ているだけで苦しくなります。

カメラマンでもあったドラ・マールの撮った写真によって『ゲルニカ』の制作風景が今の世に残されています。

草食系女子 フランソワーズ・ジロー

フランソワ・ジローと彼女をモデルにした『花の女』

ドラ・マールの後に付き合っていたのは、21歳の画学生だったフランソワーズ・ジロー。

「人間は誰でも動物に似ているものだが、君は他の人とは違う。植物だ」と、可憐な一輪の花として描かれた女性です。

彼女をモデルに描かれた『花の女』はすぐに折れてしまいそうなほど細い茎なのに、真っ直ぐと立ち、前を見据える姿は神々しくもあります。意志の強さを感じますね。

肉体派女子 VS. 肉食系女子

さて、話を冒頭の「ゲルニカ」に戻します。

「ゲルニカ」を制作中のアトリエで、完璧な肉体でピカソを虜にしていたマリー・テレーズと肉食系女子のドラ・マールが鉢合わせます。

そこでピカソが言い放った言葉が

「2人で争って決めて!僕は勝った方と付き合う」

そして2人は言葉の通り、取っ組み合いのケンカを始めたんです。

その様子や表情を描きとめて完成したのが「ゲルニカ」だともいわれています。

のちにピカソは、「最高に楽しい思い出」と語っていたそうですよ(((;꒪ꈊ꒪;))):

反戦がテーマではなかったのか?ケンカを煽ってどうする。真実は恐ろしいっ!

ゲルニカに描かれた人々の鬼気迫る表情はこんな裏話があったんですね。

この取っ組み合いのケンカの末、ピカソの元から去ったのはドラ・マールでした。

肉体派マリー・テレーズに軍配が上がったもののピカソの心はマリー・テレーズからも離れてゆきます。

その後に出会ったのが、花のような女性であるフランソワーズでした。フランソワーズはピカソとの間に2人の子どもを授かった後に・・ピカソの元から自らの意志で去ります

ピカソを自ら捨てた唯一の女として、フランソワーズは皮肉にもピカソにとって生涯忘れられない女性となるんですよね(いろいろとすったもんだあってのことですが)

ピカソの死後、次のピカソの恋人であったジャクリーヌ・ロックとマリー・テレーズは自殺します。

自分の他にたくさんの女性がいるピカソから離れられなくなっていた女性たちを縛り続けていたのは、こんな言葉なかったんじゃないかと想像しちゃうんですよね。

「君は、そんな平凡な女じゃないだろう?僕が選んだ特別な女性だ」

こんな言葉に女性は弱いのですよ。私が言われたわけじゃないですけどねw

試しに浮気がバレたときに言ってみてください。おそらく罵倒されて終わりだと思います。

天才ピカソが言うから強力な呪縛になるのですよ。

ピカソの死後、後を追った女性たちは「天才ピカソに愛される女」ということだけが自らのアイデンティティになってしまったんじゃないでしょうか。

自分自身の価値や輝きが天才すぎるピカソの前にいつしか飲み込まれて霞んでしまったのかもしれません。

天才に愛されるのも命懸けですね。切ないですね。

本日は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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