分からないけど面白い。10分でわかった気になれる20世紀芸術

20世紀美術

こんばんは!ナビゲーターのビー玉(@beedama_lab)です。

美術スタイル擬人化シリーズも最後♪

本日は「個性的にしか生きられない!藝大系女子の20世紀芸術」

西洋絵画の縛りがなくなり自由に描ける分、より個性的に、より新しい表現をと、キュビスム、フォーヴィスム、シュルレアリスムなどなど、たくさんの新しい芸術スタイルが生まれては消え、なかなかややこしい(^▽^;)

ややこしいけど、よくわからないけど・・たまらなく魅力的。

この記事を読み終わったころには、なんとなくわかった気になるはず・・・きっと。

西洋美術の常識が根底から覆った激動の時代にあなたをナビゲートします。

よろしければ最後までお付き合いください。

12〜15世紀ガチガチのお堅い優等生タイプのゴシック
14〜16世紀明るくエロを叫ぶオープンエロのルネサンス
16世紀私に近づくことは許さない!ドS女王様のマニエリスム
16〜18世紀過剰な愛情であなたを繋ぎ止めたいメンヘラバロック
18世紀楽しければいい♪盛り盛りギャルのロココ
18〜19世紀上下関係にやたらと厳しいモラハラ女子の新古典主義
19〜20世紀いつもで流行の最先端、意識高い系女子の印象派
19世紀いつもなにもないところを凝視している不思議女子の象徴派
20世紀個性的にしか生きられない!藝大系女子の20世紀芸術

 

過去に学校などで「先入観を持たずに絵画をみる」ことを推奨されていた時代もありましたが、私はそれが感受性豊かな人しか美術を楽しめないって言われているようで苦手な考えでした。

だけど、20世紀芸術においては一理あります。

20世紀美術は過去の先入観を打ち破ることから始まりますから(((uдu*)ゥンゥン

そんな怒涛の20世紀芸術の口火をきったのがフォーヴィスム。

まずはフォーヴィスムから始めましょう♪

色彩からの開放 フォーヴィスム

自然な色彩ではなく、画家が感じた色彩を自由に表現をしたのがフォーヴィスム。

日本語の直訳だと「野獣派」

とくに荒々しくワイルドだと言う訳ではないんですが、1905年に行われたマティスやドランらフォーヴィスムの画家たちが参加した展覧会で、大胆な色使いの絵画や彫刻に囲まれた美術評論家が「まるで野獣(フォーヴ)の檻にいるよだ」と言ったことから「野獣」呼ばれるようになった蔑称です。

アンリ・マティス《ダンス》

アンリ・マティス《ダンス》1910年

今の感覚で見ると、絵画なんだし人間が赤色でも「ありえない」って驚くことはありません。現代の私たちがそう思えるきっかけを作ったのがフォーヴィスムです。

ルネサンス以降、見たままの色彩をいかにキャンバスに写しとるかと画家たちは尽力してきました。

それまでの見たままの色を描くという常識の垣根を少し低くしたのがゴッホやゴーガンなどのポスト印象派。

そして、その垣根を完全に取り払い自由になったのがフォーヴィスムです。

現実を描く手段だった色彩が、感情を揺さぶる表現の手段として用いられるようになったんです。

フォーヴィスムの色彩は引き立て役ではなく主役なのです。

色が主役ゆえ、色に影を落とすことを極力なくし、平面的な表現が好まれました。

フォーヴィスムの特徴

・色彩が主役
・心象風景を色で表現
・平面的
・ゴッホやゴーガンから影響を受ける

フォーヴィスムが後世に残した功績

自由な色彩表現

フォーヴィスムの代表画家 アンリ・マティス(1869〜1954年)

アンリ・マティス《赤い調和、赤い室内(赤のハーモニー)》

アンリ・マティス《赤い調和、赤い室内(赤のハーモニー)》1908年

マティスは私でも描けるんじゃない?と思ってしまう20世紀芸術あるあるの第一人者ですが、まぁ絶対に描けませんw

この絵のモデルとなった実際の壁は白。そして最初に描いた時は緑色だったのですが、当時不幸に見舞われてたマティスのパトロンでロシア人コレクターのシチューキンを励ますために元気の出る赤に塗り替えたんだとか・・

色の持つパワーを信じ、色を駆使して人の気持ちを動かそうとしたマティスは「色彩の魔術師」と呼ばれています。

その他、フォーヴィスムの画家

ルオー、ドラン、ヴラマンク、デュフィ

形状の革命キュビスム

人は一方向から物を見ているわけではなく、あらゆる方向から物を見て立体を認識しています。

ルネサンス以降、一方向から見て最も美しく見える角度を探し、それを遠近法を用いて描くのが常識でした。

印象派のセザンヌが多視点から描く絵画を描き、キュビスムで物の形は完全に解体されます。

キュビスムは日本語にすると「立方主義」

四角い箱のキューブと同じです。

サイコロの展開図を例にあげるとわかりやすいと思います。

サイコロはどんなに頑張っても最高3面しかみることはできません。

だけど実際のサイコロは6面です。

サイコロ

 

この6面が見えている展開図がキュビスムの基本。

実際には見ることができない部分も多視点を用いることで見えるように描く!

キュビズム

これに人の顔を当てはめるとこんな感じまぁ、よくは分からないんですけどね、テキトーに無茶苦茶描いているのではないんです。計算の元に描かれています。

身近なところだと世界地図も実際の形では見えない地球の裏側を平面に起こして見える化してますので、キュビスムっちゃぁキュビスム(((uдu*)ゥンゥン

世界地図

実際の地球はこんな風には見えないですからね。

日頃から設計図などの展開図を目にすることが多い方は、キュビスムをすんなり理解できるんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか?

キュビスムの特徴

・形状の表現の当たり前を崩した
・多視点
・セザンヌやアフリカの原始美術から影響を受ける

キュビスムが後世に残した功績

形状の固定概念から自由になった

キュビスムの代表画家 パブロフ・ピカソ(1869〜1954年)

ピカソ《アヴィニョンの娘たち》

ピカソ《アヴィニョンの娘たち》 1907年

「アヴィニョンの娘たち」はピカソの故郷スペインのアヴィニョン通りの娼婦を描いた作品で、キュビスムの原点です。

発表した直後はピカソがとうとう狂ってしまったと噂されるくらい異質な作品でした。

だけど、現代の私たちはわかるわからないは置いといて、「こういう芸術もあり」だと自然に思えてしまいます。そのことこそ、キュビスムの革命が成立した証拠なのです。

19世紀の終わりに植民地をアフリカに拡大していった時代なので、そこからもたらされる美術品にピカソは新しさを感じて影響を受けたようです。

「アヴィニョンの娘たち」では右側の2人の女性はアフリカっぽいですよね。

その他、キュビスムの画家たち

ブラック、レジェ、グリス、ドローネ

画家が主役のドイツ表現主義

4種類のムンク《叫び》

ムンク《叫び》

ポスト印象派のゴッホやゴーガンの流れを汲み、画家の心の内を描くのが表現主義(英:Expressionism)です。

いうなれば「私的小説のような絵画」です。

キラキラ眩しい光を放ち、学生生活で例えるならクラスでカースト上位の印象派が闊歩していた世界に、突然負のオーラー全開のムンクが現れ、自分たちと同じような不安や嫉妬と言った鬱屈とした感情をはっきり描き出し話題になったのですから、当時の陰キャラ(陰気なキャラクター)たちはさぞや色めき立ったことだろうと思います。

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東京都美術館で開催中のムンク展を楽しみつくしましょう!ムンクの「叫び」に影響を与えた3人の運命の女(ファム・ファタル)とは?何がムンクに「叫び」を描かせたのか?絵画の観覧ポイントを詳しく、そしてちょっびりエロティックに展示作品を徹底解説!

ドイツ表現主義の特徴

・初めて画家の感情が主役となったスタイル
・基本的には自分語り
・とにかく内に籠る陰キャラ絵画

ドイツ表現主義が後世に残した功績

陰キャラだって主役になるという希望

ドイツ表現主義の代表画家 エドヴァルト・ムンク(1864〜1944年)

エドヴァルド・ムンク作《嫉妬》

エドヴァルド・ムンク作《嫉妬》1895年

『嫉妬』に描かれ正面を睨み付けている男性はムンクの友人のスタニスラフ・プシビジェフスキ

そして、赤いガウンの女性はプシビジェフスキの妻ダウニー!

アダムとイヴになぞられて、イブであるダウニーが男性を誘惑します。

ダウニーは性に奔放な女性で、ムンクもダウニーの恋人の1人でした。

なので、絵の中でダウニーに誘惑されている男性はムンクであり、嫉妬している友人もまたムンクというかなりややこしいシチュエーション(^▽^;)

だけど、今嫉妬に苦しんでいる人には刺さる作品です。

ムンクの絵は売れ行きは芳しくなかったようですが、個展をすると人が入ったというのも肯けます。

その他の表現主義の画家たち

キルヒナー、ノルデ、マルク、クレー、シーレココシュカ

 

物の形が完全に消えた!抽象絵画

 

モンドリアン《赤、青、黄のコンポジション》

モンドリアン《赤、青、黄のコンポジション》1930年

具体的な物の形態は消え、色と極端に単純化された抽象的な形のみで構成される抽象主義には「冷たい抽象主義」と「熱い抽象主義」の2つの流れがあります。

抽象主義の特徴

・写実と正反対の美術スタイル
・対象物を極限までシンプルに単純化させる

抽象主義が後世に残した功績

表現の可能性を極限まで自由にした

抽象主義の代表画家 モンドリアンとカンデンスキー

【冷たい抽象主義】 ピート・モンドリアン(1872ー1944年)

『赤、青、黄のコンポジション』を描いたモンドリアンは「冷たい抽象主義」でと呼ばれ、キュビスムの流れを汲み、感情や思想を取り除き記号化された静かな表現が特徴です。

私たちが目にするほとんど全てものは極限まで単純化すると垂直と平行線で構成できると考えており、「コンポジション」はそれを具現化したもの。

意味を見出すものではなく、モンドリアンの世界観を楽しむ絵画。

意味が分からなくても見ていると、気持ちが整理されていくような気持ち良さがあります。

【熱い抽象主義】 ワイリー・カンディンスキー(1866ー1944年)

カンデンスキー《印象Ⅲ(コンサート)》

カンデンスキー《印象Ⅲ(コンサート)》

もう一つの「熱い抽象主義」はドイツの表現主義からの流れを汲み、画家の思想や思考を主に色で表現します。

感情が入っている分、比較的わかりやすくもあります。

カンデンスキーの『印象Ⅲ(コンサート)』は感銘を受けたシューベルトのピアノコンサートを描いたもの。

描かれているのは、コンサートの様子ではなく人々の「熱狂」なのです

その他、抽象主義の画家たち

クレー、マレーヴィチ

視覚で見ることを否定したダダイズム

マルセル・デュシャン《泉》

マルセル・デュシャン《泉》1917年

これは男性用便器をただ倒しただけの作品。

作品という言い方も間違っているかもしれません。

この便器自体には何の意味もないんです。

この倒されたトイレを見て「これは芸術なのだろうか」と問うことこそが芸術だという考え・・・

固定概念をこわすことこそが大切だと考えたのがダダイズムです。

シュルレアリスム

サルバトール・ダリ《記憶の固執》

サルバトール・ダリ《記憶の固執》

ダダイズムが現れて、もうこれ以上個性的なものは出てこないだろうと思われたのですが、ありました。

考えることすら拒絶する無意識世界です。

館長
館長

いつのまにか芸術が個性競争になっていますよね💦

もう人間個性を突き詰めて行き着く先は無意識だったというね(´-ω-`)

ただ・・無意識を描くと言っても難しくて、何を描くかと言うよりも、どうやって無意識状態を作り出すかって感じになります。

無意識を作り出すため、「寝ない」という方法を見い出し、数日間眠らずに絵を描いたのがアンドレ・マッソン

アンドレ・マッソン《オートマティック・ドローイング》

アンドレ・マッソン《オートマティック・ドローイング》(1924年)

ビー玉
ビー玉

私も授業中に似たようなの描きましたけどねw

数日間、何も食べず極限の空腹時に見た幻覚を描いたのはジョアン・ミロ

ジョアン・ミロ《アルルカンのカーニヴァル》

ジョアン・ミロ《アルルカンのカーニヴァル》

ビー玉
ビー玉

心なしか全部食べ物に見える💦

そして行き着く先はお酒だったり麻薬だったりといつ死人が出てもおかしくない状況下で、無意識に描くのではなく、無意識を描くことを理論的に考えたのがマグリット とダリです。

 

館長
館長

いやぁ、すでに無名の画家が何人か死んでるんじゃないですか?

ダリについてはこちらの記事を参照ください。

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シュールレアリスムの特徴

・ダダイスムからの枝分かれ
・フロイトの精神分析に影響を受けた
・見れば見るほど不思議な絵

シュールレアリスムが後世に残した功績

個性の限界w

抽象主義の代表画家 ルネ・マグリット 

ルネ・マグリット《イメージの裏切り》

ルネ・マグリット《イメージの裏切り》(1929年)

この絵のには「これはパイプではない」と描かれています。

で、この絵を見た人が「これはパイプにしか見えない」と言うとマグリット は「これはパイプではなく、パイプの絵」だと答えることで作品が完成するんです。

私たち鑑賞者はパイプの絵を見てパイプだとイメージする。なのに「これがパイプでない」と言う文字が描かれていることで、私たちの頭の中は思考が駆け巡りやがて頭に?が飛ぶ状態。

これこそがマグリットが作り上げたかった無意識なのかな?って思うんですけどね。

正直よくわかりません。

そんな私の脳はただ今無意識状態なのであります(  ˙-˙  )

まとめ

どうだったでしょう、少しはわかった気になれましたでしょうか?

20世紀の絵画界はパリを中心に本当にいろいろな絵画スタイルが現れ、さながら美術の実験場のように新しい表現方法が生み出されては消え、西洋絵画史千年の歴史を根底から塗り替えていきました。

フォーヴィスムが色彩、キュビスムが形態を崩し、表現主義が自分語りを始め、ダダイズムが全てを否定し、抽象主義がそれらの個性溢れる美術運動を無に返します。

もうわけがわかりませんが、それもまた自由でよし♪

そんな猫の目のように変化する美術の流れに引き寄せられるようにパリに芸術家たちが集まり外国人画家たちはエコール・ド・パリと呼ばれ、芸術の息吹を吸収して世界中に自由な芸術の種をまいていくことになります。

人間が滅びない限りはこれからも新しい美術スタイルは生み出されていきますからね、自由になった美術がどこへいくのが、できるだけ長く見ていたいものです。

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他の人と同じなんて絶対に大嫌い!ファッショも趣味も気分次第でコロコロ変わる

 

本日は以上です。お読みいただき、ありがとうございます。

またの御来館をお待ちしております。SeeYou(*ˊᵕˋ*)੭

コメント

  1. ”キュビズム”までならわかる。(設計図の話は分かり易かった。)しかし…、それ以後はワカラン。(∀`*ゞ)エヘヘ

  2. marimo より:

    >「先入観を持たずに絵画をみる」ことを推奨されていた時代もありましたが…
    あ、私はこれに悩まされた一人です。全く理解できなくて、表面だけを観る結果に。

    ビー玉さんの解説を読んでから観る絵画の方がよほど楽しくて興味深いです。

    今回の20世紀の絵画界に、確かに変わった絵だなとは思いましたが「ありえない!」は無かった。それだけ浸透していて「こういうのも、あるよね」と言えるところまでになった自由さ、昔の人々にも教えてあげたいです♪

  3. Nick Ollie より:

    世界地図もキュビズム、に納得しました。そう思えばピカソの歪んだ顔も理解できる気がしてきた。

    カンジンスキーは何かいてるかよく分からないけど、なんか好きな画家の一人です。

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