こんばんは!ビー玉です。
大好きな映画監督「大林宣彦」監督がお亡くなりになりました。
私が日本映画を大好きになったきっかけとなった監督さんでした。本当に寂しい・・・
本日は気持ちが追悼ムードですので、愛する人との永遠の別れ「死」について絵画を通して考えてみたいと思います。
そんなにしんみりした感じにはならないと思うので、よろしければ最後までお付き合いください。
亡くなった妻を冥府まで追いかけた男の最後
ギュスターヴ・モロー作『オルフェウスの首を運ぶトレキアの娘』1865年
毒蛇に噛まれて死んだ妻を取り戻すために、夫であるオルフェウスは死者の世界である冥府へと赴きます。
妻を思って演奏される竪琴の音色にステュクス(三途の川のようなもの)の渡し守カローンも、冥界の番犬ケルベロスも魅了されて道を開けます。
ついにオルフェウスは冥府の王であるハデスの心を動かし、「地上に戻るまで決して振り向かない」という条件でオルフェウスの妻を地上に戻す約束をするのですが・・・まぁこういう約束は破られるためにあるんですけどね(;´д`)トホホ…
例に漏れず、オルフェウスは地上ギリギリのところで、妻が本当に一緒についてきているのか不安になり、後ろを振り返ってしまいます。
その瞬間、愛する妻は闇の中に引き戻されていったのでした。
というのは有名なお話。
日本の古事記にもこれによく似たイザナキ・イザナミの話があります。
古今東西関係なく愛する2人を永遠に引き離すのは死ではなく「疑心暗鬼」!!
疑う心には闇と鬼が巣食う・・・すごい熟語だなと(゚∇゚ ; )
ギュスターヴ・モローが描く『オルフェウスの首を運ぶトレキアの娘』は、妻を永遠に失ってしまった後のオルフェウスの姿です。
1人地上に戻ったオルフェウスは後悔のあまり自暴自棄となり、妻以外の全ての女性を疎んじて暮らします。
その態度に腹を立てたのは、オルフェウスに恋する女性たち。
可愛さ余ってなんとやら・・なんと!オルフェウスを八つ裂きにして惨殺しちゃうんですよ(((( ;゚д゚)))アワワワワ
バラバラになったオルフェイスの体は川に流されレスボス島に漂着。そこで身体を集め埋葬されます。(琴座の由来)
モローの描くオルフェイスは首だけになってしまったオルフェイスですが、惨殺されたにしては表情はとても穏やかです。
おそらく自身の死によって、やっと妻に逢えるという安堵の表情かなと(((uдu*)ゥンゥン
オルフェイスを見つめるトレキアの娘の慈愛に満ちた表情・・・もしかして迎え来た妻の化身なんじゃないかなと思ったり・・・
描かれているのは生首なんですけどね、ロマンチックな絵だなぁ・・って思うのですよ(((uдu*)ゥンゥン
「死が2人を分かつまで」ではなく、死が2人を再会させたんですね。
愛する人の死を受け入れられない
フランシスコ作『彷徨う狂女フアナ』1877年
カスティーナ国の王女ファナ16歳のときにハプスブルク家のフィリップと結婚します。
フィリップは美公フィリップと言われる超イケメン。
そして、フアナはエキゾチック美人
2人は出会った瞬間に恋に落ち、正式な結婚を待てずにその場で結婚式を挙げ情熱的に愛し合います。
ただ、急激に燃え上がった愛というのは燃え尽きるのも早く・・フィリップはすぐに他に愛人を作ってしまいます。
フアナの侍女はほぼほぼお手付きw
近場すぎませんか?
ファナは嫉妬に囚われて夫の浮気相手の髪を切ったり、ハサミで顔を切りつけたりという行き過ぎた行動が目立つようになります。
すべてバレバレの浮気です。精神が不安定になってしまうのも分からないでもない( •ὢ•)
そんなフアナをフィリップは避けるようになり、ますます疎遠になっちゃうんですけどね!
そんな中、フィリップは呆気なく水中毒で亡くなります(暗殺説あり)。
フィリプの死を受け入れなかったフアナは「必ず生き返る」と埋葬することを拒否し、フィリップの棺と共に国内を彷徨い歩きます。その期間は約2年!!
そんなフアナの常軌を逸しいた姿を描いたのが『彷徨う狂女フアナ』です。
付き添っている侍女たちはすっかり疲れ果て、呆れている者、フアナに同情を向ける者など、フアナを中心として様々な人間模様が垣間見られる作品となっています。
フアナは放浪の果て、その後46年も塔に幽閉されて75歳で亡くなります。
2年の放浪は、夫の死を受け入れる時間だったのと共に、自分を裏切り続けた夫への復讐なのかもしれないなと思ったり・・・
私だったら、自分を裏切った人を簡単に許したり(埋葬)はしませんよ(ΦωΦ)フフフ…
実際のところ狂女フアナの奇行によって、フィリップの不貞は全世界の知るところになってますし。
2人は同じ場所に埋葬されていますが、なぜかそっぽをむいてるんですよね・・・
かつて、情熱的に愛しあった2人なのに死んでも心を通わせることができないっていうのも切ないですけどねぇ(´-ω-`)
裏切ってしまった妻への追悼
ロセッティ作『ベアタ・ベアトリクス』1870年
『ベアタ・ベアトリクス』に描かれている女性はエリザベス・エレナー・シダル。
通称リジー。画家ロセッティーの妻だった女性です。
リジーは恍惚の表情でケシを花を受け取っています。
ケシの花を運ぶ赤い鳥の頭上に光輪があります。この小鳥は神の使者なんです。
ケシの花というのはアヘン(麻薬の一種)の原料です。リジーの死因はアヘン中毒・・・自殺に近い死だったといいます。リジーは恍惚の表情で死を受けているんです。
画面中央右の日時計はリジーが亡くなった時刻9:00を示しています。
リジーがアヘンに溺れていった原因は、夫ロセッティの度重なる女性関係への心労です。
リジーが悲運の死を遂げ、さすがに反省したロセッティは自分で書いた詩集の原稿と共にリジーを埋葬し、追悼の気持ちを込めて『ベアタ・ベアトリクス』を描きました。
絵を観る限り、この時点では確かに追悼の気持ちはあったと思います。
だけど・・・
ロセッティは、しばらくすると墓を掘り起こし、埋葬した詩集を刊行してしまいます。
せっかく書いた詩集がもったいなくなったんでしょうねぇ・・
なんだかんだ言っても自分しか愛せない人だったんだろうなと思います。
こんな男性を愛してしまったリジーは本当に苦労続きだったと思うのですが、こういう男性に引かれる女性っているんですよ(´-ω-`)
いつかは自分に振り向いてくれるって信じて尽くすんですけどね、その想いはほぼほぼ実りません(ノД`)シクシク
過度な期待はしない。尽くすことにこそ喜びを見出せる人以外は手を出さないほうがよろしい!!
ロセッティの自分好きがよくわかる肖像画を貼っておきましょう。
悪意を感じるセレクトですね
女性の敵ですのでw
リジーが亡くなったあとのロセッティーはと言えば、浮気相手だった女性との関係が泥沼化して心労のあまり精神を病み亡くなります・・・自分好きな男性というのは支えてくれる人がいないと意外と脆いんだなと(´-ω-`) ←私がいなくちゃと思ってしまう性癖w
人の理想の死とは
アルノルト・ベックリン作バーゼル版の『死の島』1880年
こちらは、夫を亡くした未亡人からの依頼で描かれた『死の島』
亡くなった人を想い祈る為の絵です
水辺に浮かぶ小さなの島へと棺を乗せた船が進みます。
この絵に19世紀のドイツに暮らす人々は魅了されました。当時はこの絵の複製を飾っていない家がないほどの大ブームとなったんです・・・かのヒットラーも執務室にこの絵を飾っていたらしい
ちょっと意味不明ですよね?
なぜこのような寂しげな絵に人々は熱狂したのか・・・
それは時代!
この頃のドイツは第二次大戦の足跡に怯えていました。
戦争が始まってしまったら、人は人の尊厳を与えられず、名も無き大量の死体となるかもしれない。
そんな時代に人々は、静かに埋葬されようとしている「死の島」に憧れずにはいられなかったんでしょう。
いや、少し前の私には「憧れる」という感覚がピンときませんでした。
あなたがこの記事を読む頃には、すでに鎮圧されているかもしれませんが、現在は新型ウイルスのCOVID-19(コロナ)が猛威を奮っている世界です。
自分や親しい人が明日どうなるか誰にもわかりません。
あなたの大切な人が、急に病院に隔離されて、お見舞いも許されず、亡くなってしまうかもしれないんです!感染の危険があるために遺体にすがって泣くこともできません。
ニュースでは埋葬しきれないたくさんの遺体が家族に見送られることなく教会に並べられてる画像が流れてきます。
火葬もされずに大量の棺が土に埋められる・・
その棺の山を見た時にベックリンのこの『死の島』を思い出しました。
人として1人1人尊厳のある死を・・親しい人に見送られて死出の旅へ出るという当たり前だと思っていたことが、叶わないかもしれない。
そう思うと、この静かな死に「憧れ」のような気持ちを抱かずにはいられなかったんです・・・
いや・・私はコロナなんかに負けませんけどね( •ὢ•)
まだまだやりたいことがたくさんありますし!!会いたい人もいますし!!
みなさまもどうか無事で!!数年後「あの時は大変だったね」って言えるように!
「大人の美術館」は動画でもお楽しみにいただけます
当「大人の美術館」は毎週土曜か日曜の深夜にオープンする仮想美術館です。
また来週、元気でお会いいたしましょう!しーゆー( *• ̀ω•́ )b グッ
コメント
今回も登場人物たち、皆さん濃いですよねぇ~。
濃いからこそ「絵」になる、もしくは画家が描きたがるのでしょうね~。
動物の番組で、赤ちゃんが死んでしまってもその死を受け入れられない母動物が、赤ちゃんの死骸をずっと抱っこしている…というのを見ますが、狂女ファナはそれとは全然違う~。
時々棺桶開けて腐っていくフィリップを見て、いい気味だ…とか想っていそう。。。女は怖い!!
もう一つ気になったのが、ロセッティの自画像。
見た瞬間「おい!」とツッコんじゃいましたよ~。
私もね、自分ちの鏡で見る顔と、電車とかの窓に映った顔が違う~~!とは思ってますが、ロセッティほどではない…(;´Д`)
ラファエロ前派って、なんか、仲間内で恋愛問題に倫理が無くてぐちゃぐちゃじゃなかったっけ?(笑)
『死の島』はなんかずっしりきました。コロナとの闘いは第3次世界大戦なのかも。勝たなければなりませんね✊
疑う心には闇と鬼が巣食う…すごく簡単に使っていましたが、
かみ砕くとすごい言葉ですね(^_^;)
ロセッティーさんは…特殊メイク?
死んじゃったあとはどうなってもわからないからいいけど、近しい人を悲しませたり怒らせたりするような死に方は避けたいなぁ〜
「やっと死んでくれた( ་ ⍸ ་ )」って思われる最期が一番いやだけど、わたし独り身だし、誰よりも長生きしそうだから、見送ってくれる人はいなさそう(/ω\)
だから、きっとみんなが待っててくれる♪って思いながら逝くんだ〜♪(え?w)
オルフェイス、奥さんは連れ戻せず、戻れば八つ裂きにされ、散々な人生だねぇ。それでも愛する奥さんの元に行けたからいいのかー。
ロセッティもかなりのナルシストにして下衆野郎だ。でも下衆な画家の方がすごく良い絵を描けるような気もしたりするんだよなー。