ギュスターヴ・モロー、ひきこもり画家の底力で美術界を変えた男

象徴主義

こんばんは!ビー玉です。

今宵は、【大人の美術館】へようこそ・・・

本館、【大人の美術館】は、素人の素人による素人のための妄想美術館です。いわゆる “常識” とされている見解と違う箇所もあるかとは思いますが、ゆる~い気持ちでリラックスしながらご観覧ください。「知ると絵画は色っぽい」をコンセプトに、今宵も大人の美術館は開館します・・・

さて、本日の題材は・・・

孤高の画家ギュスターヴ・モロー

ギュスターヴ・モロー『『自画像』(1850年)

私は、印象派と同時期に活躍した「象徴主義(象徴派)」と呼ばれる画家達が好きで、中でも心酔しているのが「オディロン・ルドン」と「ギュスターヴ・モロー」です。

ルドンについては過去に紹介しているので、興味のある人は読んでみてね♪

 

見つめる愛・・オディロン・ルドン作 「キュクロプス」
こんばんは! ビー玉です。 2018年初の【大人の美術館】は、私の大好きな画家、オディロン・ルドンから始めたいと思います。 本日は趣向を変えて、お付き合いただける方は音楽と共に・・2曲用意しました。どちらもエリック・サティの名曲...

 

ちなみに「象徴主義」とは、簡単に説明すると・・・「目に見える世界だけが全部とちゃうねんっ!」みたいな感じで印象派や写実主義への反発から生まれた派閥です。

ちょっとカッコよく言うと、あらゆる象徴を媒体にして、人間の内面を目に見える形に再構築する、そんな表現を目指した派閥です。

目の前の絵画を何も考えずに眺めても感覚的に本質を感じとることができる印象派の絵画は、宗教や環境の違う日本でも分かりやすく老若男女から人気を集めていますが、印象派に比べると象徴主義は難しくジャンルかもしれません。

まぁ・・難しいことを言っててもアレなんで、絵を観ていきましょうか(・∀・)ウン!!

モロー『鎖につながれたプロメテウス』1868年

さて、これは何を伝えたい絵画なのかといいますと

ハゲタカと半裸の男性が仲良く開放感をエンジョイしてる絵とちゃいますよ(; ・`д・´)

元ネタはギリシャ神話のエピソードで、人間に「火」を与えてしまったプロメテウスさんが、全能の神ゼウスの怒りを買い、生きたままハゲタカに身体を啄ばまれるという罰を与えられているシーン・・・

つまり上の絵は、ハゲタカにお腹を啄ばまれているプロメテウスさんの図(((;꒪ꈊ꒪;))):

しかも!神の血を引いているから不死なんですよ!

なので、ハゲタカに啄ばまれて引きずり出された臓器は一晩で再生し、終わることのない永遠の責め苦を強いられているんです。

だけど、この苦しみの中でも、プロメテウスの顔に浮かぶ表情は顔に悲壮感はなく、口元は微笑んでいるようにも見えます。

つまり、「不屈の精神」を象徴した絵画なんですよ。なかなかカッコイイ!!

ただね、時は印象派に沸いていた時代。

「神話とかダサいやん?」といった感じで時代遅れの印象が強くて、モローの精神的な内情は社会に理解されず、ただ「古臭い神話の絵」と酷評を浴びちゃうんですよね。

これを機に、モローは長い引きこもり生活に入ります。

※厳密にいえば、その前から引きこもっていて、復帰しようとした矢先だったんだけど・・・

まったく新しい神話解釈

パリのブルジョワ階級に生まれたモローは、高等遊民よろしく金銭には困らず、売る必要のない絵を心ゆくまで描き続けることができました。

そんな状況が功を奏します。

ひたすら自分の世界にだけ没頭し、納期も決められず、ただただ細密に描き込まれたモロー独自の特殊な世界観が生まれるんですよ。

モローの代表作『出現』1876年

この絵に関しては、「運命の女(ファム・ファタール)」という題材で、後日詳しく書こうと思っているので、詳細については省きますが、もう誰が見たってひと目でモローの絵だと分かる独特の画風が誕生しました。

 

あなたのすべてが欲しい・・・「サロメ」の恋
こんばんは!ビー玉です。 今宵は、【大人の美術館】へようこそ・・・ 本館、【大人の美術館】は、素人の素人による素人のための妄想美術館です。いわゆる “常識” とされている見解と違う箇所もあるかとは思いますが、ゆる~い気持ちでリラ...

 

この斬新な解釈で描かれた絵画を前にしたら、もう神話が古臭いなんて言う人はいません。

この時すでにモローは50歳。超遅咲き!

ギュスターヴ・モロー「ユピテル(ゼウス)とセメレ」1895年

西洋の神話なのに、まるで曼荼羅。

人間の娘であるセメレを口説くために人間の姿へと化けていたゼウスがセメレに請われ、真実の姿を現した途端!!

雷鳴が轟き、セメレは雷に打たれて絶命します。その閃光に照らされ、冥府までもが露になる・・・という壮大な絵画。

もはや病的なほど精密に描き込まれた細部!!まさに混沌!!

この細部にまで凝った描き込みが、現実では視認できない世界にリアリティと迫力を吹き込むんですよね。

あっ!せっかくなんで【大人の美術館】らしい絵画もいっときましょうか。

ギュスターヴ・モロー『テスピオスの娘たち』1853-83年

これも題材はギリシャ神話で、なかなか色っぽい話です。

ゼウスの子で伝説的な英雄とされていたヘラクレスがライオンを退治する、という話がありまして、ライオンに領土を荒されて困っていたテスピオス王は感激し、褒美としてヘラクレスに自分の娘を差し出します。

その数・・な、なんと!!50人Σ(・ω・ノ)ノ!

しかも!その全員もれなく孕ますという快挙。

いやぁヘラクレスさんスゴいわ。

1晩に50人全員と関係を持ったとも言われているし、1晩に1人の計算で50日とも言われていますが、まぁ普通に考えたら50日でしょうね。

ハーレム的な図として描かれるパターンが普通なんですが、このヘラクレスの様子が少しおかしい

苦悩?・・・まぁ、50人はちと多いわな( ̄▽ ̄;)

ヘラクレスの奥に描かれている台座の主柱には、「太陽・牡牛」と「月・スフィンクス」が確認できます。これは、それぞれ男性と女性を象徴していて、創造と誕生を意味しています。ヘラクレスは創造主としての責任を一手に引き受け、その責任感に苦悩してるのでしょうか?

画家が苦悩の末に生み出した絵画の行く末を案じるように・・・

いや、本当に50人がキツかったのかもしれないけどw

モローさんは育ちが良いので、下品になりがちな題材を扱っても、どこか上品なんだわ。それはね、本当にスゴいこと!

ギュスターヴ・モローの晩年

その後、モローは描き溜めた作品群が自分の死後にバラバラにされ世界観が崩れてしまうことを恐れて自宅を作品を展示するための美術館にしようと決めました。

作品の展示位置はすべてモローの遺言によって決められており、その自宅美術館はモローの死後は膨大な作品群と共に国へと寄贈されました。西洋絵画史上初の自作品群による国立個人美術館「ギュスターヴ・モロー美術館」の誕生です。


国立ギュスターヴ モロー美術館の上層階

長らく引きこもり生活を続けていたモローですが、晩年は美術学校の教授を務め、今までになかった色彩を教える教師として活躍します。

モローの自由な教育方針はマティスやルオーといった後に新しい芸術の旗手となる画家を育てました。

後に色彩の魔術師と呼ばれた画家マティスはモローの教育を「生徒たちを道の中に置くのではなく、道の外に置く」と語っています。モローは誰かの作った道ではなく自分自身の道を往けと生徒たちに伝えたかったのでしょうね。

今では考えられないほど過去にがんじがためになっていた保守的な美術界の鎖を解き放った瞬間だったんじゃないかなぁ

モローかっこよっ♡

本日は以上です。最後までお読みいただきありがとうございます。

また次の開館日にお会いいたしましょう。

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